214:激突!ワールドボス『ゲルゲナート』戦 Ⅵ
役者は揃いました。
怖い。
今現在アタシ含めて皆が感じている感情は恐怖が一番強いと思う。それでも尚足を止めずに動き続けるのは生きるため。死にたくないと言う恐怖が体中をかけるから。それを原動力に戦う意志がない人は逃げる。
恐怖に覆われる中、覚悟を決めて恐怖と真正面から立つのはアタシたち時代人。そうしなければ先に進めない。きっともっと大切な何かを失うと知っているからこそ、恐怖を押し殺してここに立っている。
「レイレイくん!! 大丈夫かっ!!? 顔が真っ青ではないか!!?」
恐怖よりも自分の信念が打ち勝っているニコニーコは暑苦しい顔つきではあるけどアタシの心配をしてくれる。
「大丈夫じゃない・・ハァ・・けど・・・やるわよ・・・この影響モンスターにも・・・・出てるみたいだから避難経路の確保は・・・・ハァ・・・ハァ・・・・想像以上に・・・早かったから・・・」
モンスターにも多大な影響を与えたみたいで、立ち直ったプレイヤーによる一方的な攻撃、もしくはモンスターの逃走により、避難経路は確保できた。
何人かの人は恐怖で森の中に迷い込んでしまったけど、その人たちもなんとか救出して安全な場所に逃げてもらっている。
ミスリアの避難もあらかた済んでる。あとはボスである『ゲルゲナート』をここで迎え撃って撃破するだけなの。泣き言なんて言ってられない。
「ニコニーコ・・・覚悟は決めなさい・・・ハァハァっ・・・私のマップに『ゲルゲナート』の反応が見えたから・・・もう・・・来るよっ・・・!!!」
「レイレイ君!!」
ダメだ。怯えるな。恐怖を押し殺して立ち上がってアタシ!! 対峙してないでしょうが!! まだマップに見えただけ!!!
ゲルゲナート“だけ”がマップに見えただけなんだから!!! きっとアタシの探知外で受けた傷を癒しているに違いないんだ!!!
だから・・・大丈夫・・・!!!
連絡が帰ってこないのはきっと集中してるから気づいてないだけだって。自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
「レイレイ君!! 無理してはいけない!! 君の力は貸してほしいがそれで君が死んでしまえばアール君は喜ばないぞ!!」
「っ!!」
「ニコニーコの言うとおりよレイレイ。アンタ鏡見てきたら?」
「・・・黙れリーク」
「・・・ニコニーコ。レイレイは私が何とかするからみんなの指揮をお願い」
「リーク君・・・わかった!! 頼んだぞ!!!」
――――◇――――
戻ってきてみれば、ほぼ限界にしか見えないレイレイがニコニーコに肩を抱かれて地面に座り込んでいた。
その反応からこれ以上の指揮は無理だって判断したから、レイレイがやっていたことをニコニーコに任せた。コイツの索敵能力が使えないのはかなりの痛手だけど、このままの状態でボス戦に挑む方がこっちとしてはキツイ。
「大丈夫よ・・・アタシは・・・戦えるから・・・!!!」
レイレイの肩を抑えれば、その体は小刻みに震えていた。これのどこが大丈夫なのよ。全然ダメじゃない。
「震えてるくせに何言ってるのよ。無理すれば良いってことじゃないでしょ?」
「でも・・・だって!!! ここで戦えなきゃアタシは・・・!!!」
「・・・レイレイ」
「だから!!! だから・・・!!! 置いてかないでよ・・・がんばるから・・・怖くてもがんばるから・・・おいていかないでよ・・・・・!!!」
「バカ。泣くんじゃないわよ」
今回のボスが増幅されている恐怖っていうのは人によってその種類が違う。
単純に恐ろしいって思うことに恐れる恐怖。これが大多数の人が感じる恐怖の種類。けど、恐怖っていうのはその人によって様々なことがある。
私の場合は身動きがとれなくなった私の前で励久が寝取られるのを延々と見せられることね。恐怖以外の何者でもないわ。アールのこと思い出して吹っ切れたけど。
ほかにも大人数の人の中に混ざるとか、一人になるとか、狭い所にいるように思うとか。恐怖は様々な形で存在している。
レイレイの場合は恐れ的な恐怖と同時に私たちに置いていかれることだったみたい。一時期私と同じくエクストラモードに変更して試していたこの娘だけど、痛みや体の違和感に耐えられずに元に戻した。
エクストラモードなんてキチガイのドエム御用達モード諦めたって誰も何も言わないけど、この娘にとってはそうじゃなかった。
私が適応して今も続けているのが一番効いてるんだとは思うけど。
私たちのパーティーは基本超火力で相手をたたきつぶす事が多い。ゴリラ然り、私然り。そして最近始めたアールとその弟子含めて皆火力が高い。
その中で唯一火力が出ないのがレイレイだから。まぁその分裏方はダントツで強いから居なくてはいけない大切なメンバーなのだけど、本人的にはそれでは満足・・・いや、まだ不安みたい。
いつか自分が追い出されるなんて死んでもありえない事を不安がっているんだから。
アールも私もゴリラも何度も言っている。そんなことは絶対にしないし、無い。アールなんて『そんな馬鹿な選択するくらいならそこのゴリラ追い出すわ』『んだとコラっ!?』みたいなやり取りをするくらいにこの娘が大切だって言ってるのに。
「落ち着きなさいよ。大丈夫だから。置いてかないってば」
「がんばるから・・・おいてかないでよ・・・・!!」
子供をあやすように抱きしめて頭を撫ぜる。全く。いい年して何泣きべそ掻いてるんだか。
「よしよし泣かないの。大丈夫よ。貴女は私の大切な人なんだからそんなことしないってば」
「う・・・うぅ・・・アールに言われたいぃ・・・・」
「内臓引きずり出すぞメス猫」
泣きべそ掻いてるからってなんでも許されると思うなよコラ。でも少し余裕出てきたわね。
「んで? 落ち着いたら冷静になれたの?」
「ぅん・・・少しだけ・・・・でも・・・」
「言い訳無用。今の状況じゃ足手まといは確実だから大人しく下がりなさい」
「・・ぅぅぅ・・・!!」
唸ったってダメに決まってるでしょうが。上目遣いしてもダメなものはダメよ。女の私が『あ、可愛い』とか思うほどの破壊力あるけどダメなものはダメ。
友達がゲームとは言え無残に食われる光景なんて見たくないわよ。
「とにかくダメなものはダメ。わかっt『見つけたぞ小娘共!!』・・・誰が小娘よアホ犬!!」
「ぎるふぁー?」
このアホ犬。大事な時に居なくなってたくせにもう!! なんでこんな時に戻ってくるのよ!!アホか!!
そもそも意外と怖がりなくせに使いもんになるわけないじゃない!!
「アホ犬!!アンタも戦力g『確か小娘貴様モンスターであろうとも居場所が分かるのだったな!!?』・・・声を被せるな!!!」
「・・で・・・できる・・・よ?」
「実際今もゲルゲナートの居場所特定して大活躍したわよ」
その被害も大きいけどね。そう教えるとこのアホ犬、何か唸るように頭をうならせると、意を決したように顔を上げた。
『頼む!! 手を貸せ!!』
「「っ!!?」」
嘘でしょ!? このアホ犬が頭下げた!!? 槍でも降ってくるんじゃないの!!?
『我の何かが訴えてくるのだ!! 奴を探し出せば必ず全てを救えると!!!』
「ちょっ!? 待ちなさいギルファー!? どういうことよ!?」
『我にも知らん!! だがそう思うのだ!! 逆を言えば見つけ出さねば皆死ぬぞ!!』
根拠が無さ過ぎる! でも、ギルファーが、この自分勝手な躾のなっていない犬が頭を下げた。自分の不確かな思いのために。
「レイレイ。アンタに任せるわ」
「・・・リーク?」
「頼られてるのはアンタよ。けど、私がアンタなら絶対に手を貸すわ。理由は言わなくてもわかるでしょ?」
ギルファーを助ける。それはつまりアールを助けることにも繋がるからね。連絡がない。どこにいるのかも表示されなくなったアールの居場所なんてもうひとつしかない。
そこから救い出すためにはどんな可能性にだって縋る。そして今まさに可能性が低いながらも、助ける手段かも知れないことが目の前にある。
「・・・いいよ。アタシ・・・探すの手伝う・・・!!!」
『恩に着るぞ小娘!! では行くぞ!!』
「ふぇ? ちょっとまってぎゃぁぁ!!?!」
答えるや否や咥えられて背中に乗せられてあっという間にどこかへといなくなってしまった。流石に早いわねあの犬。
誰を探しに行ったのかは知らないけど、それが切り札になるのは間違いなさそうね。
「出たぞォォォ!!!!!!」
『オォォォォオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
っ。流石に目の前で吠えられたら心に来るわね。けど、ようやくお出ましよ。こっからが本当の始まり。
「総員聞けぇぇ!!! 我らでこの巨人を倒し!! 平和を守るのだ!!!!」
ニコニーコの雄叫びとともに、ついに『四腕巨人ゲルゲナート』戦は開戦された。
次回からやっと開戦です。よければ感想お願いします。




