212:激突!ワールドボス『ゲルゲナート』戦 Ⅳ
レイレイ視点です。
特撮で怪獣が現れたとき、街の人々が逃げるシーンは鉄板よね。人間は自分よりも巨大な生命体には勝てないから逃げるしかない。
その時に味わう恐怖はきっと生半可なものじゃない。私たちが生きている世界では勿論そんな非現実的なことなんて起こらないからそんな経験することはない。
でもこの世界ではそれが現実のものとなる。その瞬間がまさに今のミスリアだ。
「早く逃げて!!! こっちに怪物が向かってきてる!!!」
「おいアンタ!! そんなもん捨てて早く逃げろ!!・・・なにっ!? 大事な思い出!!? 仕方ねぇ!! 手伝ってやるから早く逃げろよ!!!」
「大丈夫だから! 絶対にお母さんも無事だから今は早く逃げよう!!」
「先陣切ってる奴らに巨人の掃討急がせろ!!! マジで時間ねぇぞ!!!」
「こっち任せた!! 応援行ってくる!!!」
「頼んだわよ!!!」
巨人『ゲルゲナート』が上からではなく、地中からこちらに向かってき始めた連絡はすぐに来た。避難状況はまだ五割。全員避難が完了するまでまだ時間がかかるのに、更に急がないといけない。
以前までのシナリオボス戦では、時代人の話に信憑性がないと言われて聞いてもらいない人もいたけど、今回は違う。
アールの名前が大陸全土に広がっていたことだ。おとぎ話の英雄。ゴブリンの悪夢を打ち払った蘇りし英雄。姿を隠していた二人の剣聖が最も信頼している時代人。
呼ばれ方は人それぞれだけど、やっぱりこの世界のNPCからしたら今を時めく超有名人。しかも街で何かやったみたいで皆知っていた。
何をやったのかアタシはわからないけど、多分平和そうなことだと思うから大食いとかそんなことだろうとは思うけどね?
ともあれ、今このミスリアにいるNPCは皆すぐに避難し始めてくれたのは正直大きい。でもやっぱり時間はかかる。
「レイレイさん!! マー坊さんたちはどうなんですか!?」
「巨人の数が思った以上に多いから苦戦してる! しかも魔術無効化する『ズ・ガース・オメロ』いるみたいでリークが半分機能してないみたい!」
「ファック!! こんな時にクソモンス出てきやがって!!」
「黒白! アンタ能力無効化出来る『スキルブレイカー』覚えてる!!?」
「いや俺白黒なんですけど・・・一応覚えてますけど!!」
「暴言履ける余裕あるなら行けるわね!! 『ズ・ガース・オメロ』に『スキルブレイカー』叩き込んできなさい!! それでリークが一気に動ける!!」
「ちょっ!!?」
「言い訳も口答えも許さないから行けや!!!」
「ひゃ・・ひゃい!!!」
「武!!! そのアホが臆病風に吹かれて逃げないように連行しろ!!!」
「お・・・おう!! 行くぞ白黒!!」
「び・・・ビビってねぇし!!!」
「早くいけやぁぁ!!!!」
「「イエスマム!!!」」
「そこのやつ!! 糞虫の空いた穴を埋めて!!」
「イエスマム!!!」
時間無いんだから時間かけるんじゃないわよ。暗殺者ジョブだけが持つ『スキルブレイカー』は相手が持つ『AS』もしくはモンスターの能力を一時的に無効化する力を持つ。攻撃力こそ低いけど、スキルを封じられるから重宝している。
丁度避難誘導していた白黒に武を護衛につけて前線に送り込む。そして空いた場所に近くにいたプレイヤーを動かして配置。
武の防御力と白黒の機動力を考えれば到着までは10分弱。それまでこの人数が動けないのは厳しい・・・情報整理・・・確かこの辺の地形と出現モンスターは・・・それならっ!!
「C班!! 避難経路を北に迂回させる道に変えて!!! AB班は現状のまま行きなさい!! D班!! 南にルート変更!! シュート!! マキナ!! 北ルートに向かって安全確保!! そこまで強いモンスターが出る場所じゃないから5分以内に終わらせて!! ハクと武道は南!! 巨人が少しいるから確実に始末しなさい!!!」
はぐれ巨人がいる南側と、モンスターが比較的少ない北ルートを新しく進めばいい。迂回することにはなるけど、一箇所に纏まっているよりは分散して逃がしたほうがまだ逃げやすい。
「レイレイさん!!」
「なにロリコン!!? 問題発生!?」
「ロリコンじゃねぇし!!?」
最近ロリっ娘といることが多いロリ神。一体何よ。くだらないこと聞いてきたら世界中に『黒悪魔ロリに手を出した悪魔』って噂拡散してやる!!
「街の中心部に隠されていた祠があったんです! 村長さんによれば何か力になれるかも知れないと!」
「OKわかった!! 後で確認するから今は逃げるように話してきて!!!」
「それと僕『真化ジョブ』持ちなので特攻入るかと!」
「来たら足止めは任せるからすぐに動けるようにしてなさい!!」
「了解です!!!」
アナウンスでは『EXジョブ』と『真化ジョブ』は特攻が入ると言っていた。これでここに『真化ジョブ』持ちが三人いる訳ね。
これならなんとか足止めは可能かしら。ともあれあのロリ悪魔は後で隠してる情報全部絞り出してやる。
「レイレイ!!!」
「わかってる!! 誰か街の北側に向かって!! 逃げ遅れている一団がいるから急いで!!!」
『UtS:アークメモリー』のおかげで街中の様子は全部わかる。今野生の巨人との戦いの様子も十分に伝わっているし、安全経路の確認に向かった奴らの様子も手に取るようにわかる。
欠点と言えばかなり頭を使うから甘いものがものすごく欲しくなることくらいよね。アールが戦う時によく果物齧ってるのがこういう理由だって身に染みてわかるわ。
けど、この『UtS:アークメモリー』でも『ゲルゲナート』の現在位置と進路がわからない。あの化物も『ズ・ガース・オメロ』と同じでスキル無効化能力でも持ってるの?
「すみません!!遅くなりm「ブックマンは南側の避難誘導!! 七芽は西!! すぐに動け!!」わ、分かりました!! 七芽さん!!」
「オーケイ!! また後で!!」
駆けつけてくれるのはものすごくありがたい。現状人数が少し足りないと思っていた場所に人員確保ができた。ノラ連中も合流してその場で避難誘導してくれているし取りあえずは良い。
ちょっ!? こんな時に・・!!!
「あぁもう!!」
チャット起動から呼び出しはするのは・・・あった!!」
「早く出なさいよ・・・!!!」
『もしもしなんですか!!?』
「雷華!! 避難経路北側に応援行ける!? 豚の群れが出てる!! このルート使えないのは痛いから一掃してきて!!」
『っ!! メンドくさい相手がこんな時に・・!!分かりましたわ!!!』
次はっと・・・!!!
「シュート!!!」
『おぅ!!?』
「アンタから二時の方向約600m先に豚の群れ!! 数は少なくとも52!! クラン呼び出してできるだけ早く一掃して!! 増援も送ってる!!」
『マジかよレイレイさん!!? 了解した!!』
「倒したあとの連絡はいらない!! イレギュラーが起きた時だけ連絡して!!!」
『了解!!!』
これで北は3分あれば確保できるはず。南ルートは・・・よし想定よりも早い!!
『レイレイ!!掃t「良くやった!! すぐに逃がすから先導して避難させて!! アクシア方向に逃がして!! 草原に出ればあとは手配した馬車でアクシアまで一気に逃せるから!!」・・わかった!!!』
「C班の『無名』から後ろの連中を呼称E班に変更するわ!! 班長は無名アンタよ!! D班と同じ南ルートに変えて!!! 先導は緋姫!! 任せるわ!!」
「任せなさい!! 皆さんこっちです!!」
「さぁ皆さん落ち着いて逃げましょう!! 大丈夫です必ず逃げられます!!!」
これで全体の6割が避難出来る。逃げた人たちも三手に別れたから何かあっても対処は可能。それぞれ護衛につけた連中は皆手練ぞろいだからいけるはず。
あとはイレギュラーに対する臨機応変な対応とそれに適応できるプレイヤーの判断力を信じるしかないわね。
あとは怪物が現れるのが少しでも遅くなってくれることを祈るしかな・・・っ!!?
――――◇――――
・『四腕巨人ゲルゲナート』が『災厄咆哮』を発揮。
・『特殊状態異常:災厄』付与者総員の恐怖心が距離に応じて膨れ上がります。
・『特殊状態異常:災厄』の詳細を開放します。
――――◇――――
『特殊状態異常:災厄』の詳細開放
・スキルによる対策不可能。
・それは全ての生命が持つ感情。決して消えることはない本能。故に思い出せ。この感情を。震えよ。怯えよ。飲まれよ。絶望せよ。それだけが生命に許されたただ一つの感情である。膨れ上がる感情が大きければ大きいほど、我らが神が降臨するための贄として相応しい。
・だが、希に現れる絶望しない贄がいる。それこそ我々が真に求める贄なのだ。真の贄を得て、神の降臨は更に速まるであろう。生命よ。あぁ生命よ。贄となり得る喜びで恐怖し震え上がるのだ。
――――◇――――
「あ・・・ああぁぁっ!!?」
か・・・体が震えるっ・・・体のそこから震えが来るっ。わからない。でも本能が何かを恐れているっ。
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
「あぁぁぁああああっ!!!!!!!!!!!!!!! ア゛ァッ!!!!」
思考が支配されていく感覚があるっ。だめ。意識をしっかり持ちなさいアタシっ!!! まだ少し震えるけどなんとか動ける。現状確認・・・するまでもない!! 全員が今の私と同じようにおびえている!
こういう時どうしたらいいか。そんなもんアールの真似する以外に今はないでしょうがっ!!!
「全員きけぇ!!!! 意識をしっかり持ちなさい!!! 逃げることだけ考えて!!! それ以外に考えるな!!! アタシが!! 『剣聖アール』が作り上げたクラン『剣星』に属する者として伝える!! 最後まで諦めるな!! 歩みを止めるな!!! 希望を絶対に捨てるな!! 例え惨めでも逃げろ!!! 今はそれだけ考えて皆で生きるために恐怖と戦いなさいっ!!!!」
「あ・・・あああっ!!!? そうだ・・・!!!逃げるんだ!!!!」
「そう・・・よ・・・!!!! 生きるために!! 今だけは!!!」
「うわぁぁあああ!!!!! 全力で逃げるんだァァァ!!!!」
自分の意識を取り戻した彼らがまた一生懸命逃げ始めてくれた。震える体に鞭打って必死に前に進んでいく。励久の真似をするのは少し恥ずかしいけど効果絶大ね。
でも今のがアナウンスで言っていた『災厄』の効果なら。直接対面していない現状でこれだとしたら・・・もう残されている時間はない。
アールが対峙していた際に感じていた感覚の正体は恐怖心。あの時『ゲルゲナート』はアールに対してのみこの咆哮を行ったため周囲への影響はありませんでしたが、今回は全ての生き物に対して咆哮をどこかからあげたので、一定範囲内のプレイヤー、NPC問わず、全ての生命が行動不能に陥りかけました。
レイレイが今この時に気合で戻れなければ事態はより深刻な物になったいた事間違いなし。




