211:激突!ワールドボス『ゲルゲナート』戦 Ⅲ
一月三日に五章クリアしました。
オリオンに惚れるわ。これはアルテミス絶対に惚れるやつやん。ほかにも色々言いたいですけど、一言で。
最高すぎて泣きました。
渓谷の下から凄まじい雄叫びが二つ聞こえる。次の瞬間、僕らの足元を揺らすほどの揺れが押し寄せてきた。
新しい『ワールドシナリオ』が始まったことで、僕らプレイヤーは直ぐに行動を開始。直後、戻ってきたリークさん達から今回の敵の正体を聞いて、直ぐに付近のNPCの避難を開始した。
掲示板にも直ぐに情報を流し、各地のプレイヤーに応援を要請した。
いつもなら一時間以内には完全に戦闘態勢へと移行できるのだけど、今回はもう少し時間がかかりそう。
言わずもがな、『ゼアリード』の存在と、行き詰っていたダンジョンの攻略法を見出したことによりそちらに人員を持って行かれているからだ。
特にダンジョン内では現在、ダンジョンボスとの戦闘が佳境に差し掛かっているらしくもう暫く増援は期待できない。ゼアリードも然りだ。
なんでも、ちょっとやらかしたお馬鹿なプレイヤーの所為で、訪れていたプレイヤー全員がゼアリードの人から反感を買い、現在関係修復やら、事情説明やらで足止めを食らっているそうだ。
何をしでかしたかというと、ちょっとした討論で熱くなりすぎて子供を傷つけてしまったらしい。悪意はなかったから一生懸命説明と謝罪を繰り返しているそうだ。
そのせいで全員が足止めを食らっている。なんでも転移ができない特殊な状況に追いやられているらしい。流石モンスター。そのくらいは造作もないってことか。
いやいや感心している場合じゃないんだけどさ。
なので間に合ったもしくは準備をしていたプレイヤーにはワールドシナリオ初回の悪夢がよぎったんだけど、それを打ち払ってくれたのがやっぱりアールさんだった。
今もたった一人で時間稼ぎをしてくれている。リークさんたちの話では新しいワールドボス『ゲルゲーナート』の体長は少なくとも12m以上。
そんな怪物相手に怖気付くことなく、しかも暗い中たった一人で戦いを挑めるのは流石としか言いようがない。
「集まってくれた皆!! 我々もいち早く迎撃の準備を進めよう!! 彼の努力を無駄にしてはいけない!!! エロロくん!! 迎撃装備の制作はどのくらいだい!!?」
「迫撃砲6騎に迎撃槍5騎ですぅぅ!!!」
「今迫撃砲七騎目完成よ!! エロロ!! 迎撃槍の材料出して頂戴!!」
「ですぅぅ!!!!」
アルメリアさんとエロロさん始めとした『ジョブ:錬金術師』のプレイヤーが魔力で発射する迫撃砲という名の大砲と、モンスターでハンターなゲームで出てきそうな巨大な槍の城塞兵器の小型版を配備してくれている。
「レイエルくん!! 下からの状況は!!?」
「デカブツ地面に叩き落とされてるよ〜。流石アールだわい」
スキルにより暗い所でもはっきりと見えるレイエルが、アールさんの様子を報告してくれる。戦うとめちゃくちゃめんどくさくて強いPKだけど、こうしてワールドシナリオが関わる時は惜しみなく協力してくれるのはありがたい。
「ヴァンレイくん!! 新たに集まってくれた無所属のプレイヤーの数はどうだい!?」
おっと俺か。ひーふーみーよー・・・・・
「49人!!」
「うむ!! ありがとう!! 彼らに説明は任せるよ!!!」
「もう済んでるよ!!!」
「助かる!!!」
僕は集まってきたプレイヤーに状況の説明と役割分担。それと即席パーティーの結成とかを担当してる。忙しいけど僕的にはこれが向いてるんだよね。お? リークさん書き込みしてる。
「ニコニーコさん!!! ミスリアの避難残り六割だってさ!!!」
「わかった!!! クロサカくん!! 少し人員をミスリアへ送ってくれ!! 必要なら書き込みで他のプレイヤーもそちらへ向かわせるぞ!!!」
「任された!!! シロマサ!! こっちは任せた!!!」
「任せな相棒!! ライオット部隊はクロマサと一緒にNPCの避難誘導に向かってくれ!! ソルジャーとレガシードはこのまま待機!!」
「不味いわ!! ミスリア近くに巨人の群れがいるそうよ!!! さっきのボスの咆哮を聞いて活性化した可能性があるんじゃない!!?」
「チィ!! 急ぎマー坊くんたちに連絡を!! 彼らならみんなを守れるはずだ!!! それと『フリー団』のライーダくんにもそちらへ向かってくれるように連絡を頼む!!」
「分かったわ! それからニコニーコ! 私も避難する彼らのもとへ向かいます!!」
「わかった!! NPCを頼むよエールくん!!」
「お兄ちゃん! 私たちも!!」
「おう!! ニコニーコさん!! 俺らも向こうの援護に行くよ!!」
「レイくん弥生くん!! 頼む!!」
「「任せてくれ(ください)!!」」
「ごめんなさい遅くなったわ」
「おぉ根暗マンサーくん!! よく来てくれた!!!」
「前回活躍できなかったからね。今回は頑張るわよ!! 新しい私の力!そして私の可愛い兵士たちの力を存分に見せてあげるわ!!」
合流してくれた根暗マンサーさんは特殊ジョブ『死霊術師』を持つ魔術師ジョブ持ちの中では有名な人だ。
ジョブ『死霊術師』によって生み出される骸骨やゾンビの軍勢は爆弾をくっつけて爆弾にしたり、特攻をさせて相手の隙を生み出す有能な駒にしたりと使い方はいろいろだ。
ただ、彼女がそれを嫌っているため、彼女の兵士たちはそんなことはしないし、彼女もそんなことをさせない。
それもあり、彼女の連れている兵士はかなり強い。レベル的に言えば恐らく70は硬いと思う。それくらい強い兵士をMPが続く限り無尽蔵に生み出せる。心強い味方だ。
「間に合った!!?」
「真之介さん! 全然間に合ってます!!」
「ひとっ走りした甲斐があったよ。状況を教えてもらえるか?」
「はい!!」
やってきたのは腰に携える銀色の刀が目立つ真之介さん。いつも世界のどこかをフラフラしている人で、自由気ままにプラクロライフを楽しんでいる人。
銀色が好きみたいで全身に銀の装飾がしてある装備に身を包んでいる。そしてその目立つ見た目通りかなりの実力者で、斬撃を飛ばすくらいは出来るという人。
アールさんが来てからはイン率が少し減っていたけど、帰ってきてから前よりも強くなっている気がする。絶対何かしてたでしょこの人。
着々と準備が進んでいく。このペースならなんとか間に合うかも知れない。準備さえ整えばあとは大縄跳びの要領でみんなで協力して戦うだけだ。
仕事でもよく言うけど、段取り八分とはよく言うからね。用意することが何よりも大事なことなんだよ。
「ちょぉぉぉ!!? うそやん!!?」
「レイエルくん!!? どうしたんだい!!?」
「巨人が凄まじい勢いで穴掘ってどっか行きやがった!! アールさんも押さえ込もうとしてるけど全然動じてないよ!!? うそやん!!?」
けど、そんな僕たちの準備を台無しにするように、事態は進んでいく。戦いは僕らの思い通り、想像通りにならない。
「クソォ!! レイエルくん!! 追えるかい!!?」
「・・・・いや・・・これ追う必要ねぇわ・・・行く場所わかった・・・」
「っ!!?どこだい!!?」
「デカブツの進行方向真っ直ぐにあるのはミスリアだよ」
「っ!!! 総員聞けぇぇぇぇ!!!!! 巨人が動いた!!!! 地中からミスリアに向かっていると思われる!!! 急ぎミスリアへ向かえぇぇ!!!!!!!! みんなを!! NPCを守るんだァァァ!!!!!!」
ニコニーコさんの号令が周囲に伝わり、驚くよりも先に皆一斉に動き出す。リークさんから伝わっている情報では、巨人『ゲルゲナート』はNPCを餌にしていたという。
そしてその巨人の進行先にはまだ避難が完了していないミスリアがある。もう考えられることはひとつしかない。
巨人は崖を登ることを止めて、地面を堀り、直接NPCを狙いに行ったんだ。




