198:ミスリアでの依頼受注 Ⅰ
腹も満たされ、目的の店にて物資の購入をした後は、ミスリアにてギルドと同じように時代人や現地のエルフなどに依頼を提供している集会所へと足を運んだ。
集会所内は想像以上に賑わっていた。時代人の数はそこまで多くないが、NPCがとても多くいる。亜人種と呼ばれるエルフを始め、魔人族に妖精族、魚人族もいるだけでなく、普通に人間も仲良くしていた。
皆目的は集会所に設置してある足湯のようで皆順番を守り仲良くリラックスしている。
「人数多いな」
「じゃな、この様子じゃと足湯は後日にした方がよさそうじゃ」
「そうですね。天然のお湯だと聞いていたので楽しみだったのですが仕方なさそうです」
そう。この足湯天然温泉なのである。それもあり大人気なのだ。しかも集会所内にはフードコートのように軽食を販売しているエルフの姿も見える。この街のエルフは、単にエルフと言っても、時代に適合しているのだ。
一昔前だと、自然と同化して自然のままに生きるのがエルフの姿というイメージが強いが、この街のエルフは自然を大切にしつつ、時代と共に自分たちの生活を変化させ見事に調和している。
人と自然の柔らかさが絶妙に合わさり、自然と調和しつつ、どんな人にも適合できる環境。素晴らしいと思う。
まぁそのお陰というかそのせいと言うか、少しワクワクしていた足湯を味わうのは後日ということになった。目的はこの集会所にてクエストをいくつか受けることだ。少しは名前と顔を覚えてもらいたいし。
「カウンターはっと・・・あそこか」
丁度空いていたカウンターを見つけたのでそこに行く。受付をしていたのはエルフの美女である。やっぱり受付は美女の方がいいって相場で決まってるんだな。
「こんにちは。初めて見る方ですよね?ミスリア集会場は初めてでしょう?」
「えぇ、今さっき来たばかりでして、ミスリアでの依頼はこちらで?」
「はい。ここにはミスリアで仕事や頼みごとをまとめて、受けてくれる方にお願いしています。人で言うところのギルドですね。何か依頼に関してご希望はありますか?」
「なら長期間解決していない依頼、もしくはこの集会場で困難を極めると思う依頼をいくつか見繕っていただけますか?」
「分かりました。でもよろしいのですか? ちょっと大変な依頼ですよ?」
「大丈夫です。あ、もしかして俺では受けられないでしょうか?」
「いえそんなことはないんですがその・・・いえ、見せたほうが早いですね。少々お待ちください」
受付の美人エルフさんはそう言ってカウンターの下から少し厚い資料を取り出した。その中からいくつか依頼を見繕い、俺たちに見せるように広げてくれた。
――――◇――――
依頼:橋の修理
報酬:150000D
期限:なし
依頼主:ミスリア代表、ファンジック
補足・要点:以前起きた巨人の大量発生により破壊されたミスリアとニルスフェアを結ぶ橋の修理を願う。橋の近くには大量の巨人がいるため巨人の討伐が必須。さらに橋の修理は現状、錬金術師一人では修理は不可能と思われるので複数人の錬金術師が必要だと思われる。
――――◇――――
依頼:行方不明者の捜索
報酬:可能な限り
期限:なし
依頼主:行方不明者の家族知人
補足・要点:最近連絡が取れなくなったエルフが数人いる。探しても探しても見つからず心配である。生きているのか、それとも亡くなっているのか。安否確認をして欲しい。生きているならば必ず連れ戻して欲しい。
――――◇――――
依頼:『鳥巨人の心臓』納品
報酬:20000D
期限:三日以内
依頼主:ミスリア住民
補足・要点:今度街から出ることになった。今までずっとお世話になってきた両親に感謝を込めてこの高級品を送りたい。対価に似合わない報酬であることはわかっているが、お願いしたい。
―――◇――――
「おっしゃった希望に添えるものはこの三つです。個人的なことを言えばどれも解決していただきたいのですが、内容が内容でして・・・」
「うん。とりあえず全部受けるよ」
「そうですよね。こんな依頼流石に初めて来たのに受けてなんて・・・・え?今なんと?」
「全部受けさせてもらえるか?。あと『鳥巨人の心臓』だけどすぐに納品できるから頼めるだろうか?」
「えっ!? いいんですか!? いえ依頼を受けてくれることもそうですがそれって」
「気にしないでくれ。それにこの依頼主だって両親のためなんだろう? それなら譲ってもいいさ」
ちょっと甘いかもしれないけど、実際別にあげてもいいものだし。その味を味わってみたいのは間違いないけど。
「〜〜〜っ!!! ありがとうございます!! 父もきっと喜んでくれます!! 本当にありがとうございます!!!」
依頼主あなたでしたか。けどこの反応的だけみれば信じても良さそうだ。俺”は”心が読めるわけじゃないからそこはどうしようもないけど。
「ま、大丈夫でしょう。この方嘘を言っていませんし」
「そうじゃの。食べたい気持ちはあるが師匠が決めたのじゃ。次の楽しみにするのじゃ」
裏を疑うのはそっちの方面に敏感な二人に任せているからな。そして二人からもセーフと言葉を貰ったのでこれで白である。
「それで納品なんだが、物がものだし別の場所のほうがいいか?」
「あ、はい! こちらにお願いします。ごめん誰か少し受付代わってくれる?」
「はいはいーい」
「ではこちらにお願いします」
受付を他のエルフに任せて俺たちに応対してくれたエルフがカウンターの横にあった個室へと案内してくれた。個室には応接用のソファーがあり、応対などで必要であろう物が一式揃っているようだった。
受付さんは何やら準備をしており、食品を取り扱う専用のボックスを持っていた。なるほど。あれに納品するわけか。
「お待たせしました! これに入れていただけますか?」
「わかったよ。えぇっと・・・あったこれだ」
手にズシッと来る肉の塊。二キロの肉って実際に持つとかなりあるんだぜ?受付さんも流石にこの量は予想外だったようで目を丸くしていた。
「しょ・・・少々お待ちいただけますか!? 流石にこんなにあるとは思っていなくて・・・!?」
「なら切り分けましょうか? 包丁ならあるので」
こんな時のために錬成しておいた調理用の包丁をポーチから取り出す。勿論危なくないようにケースもしっかり付いている。切れ味は保証するぞ。やろうと思えば骨まで切れる優れものだ。その代わりに、その後は使い物にならなくなるけど
「それでしたら私が頂きたい分だけ頂いても構いませんか?」
「どうぞ」
受付さんはそれから肉の約1割を切り分けてそれだけ持っていった。グラムで言えば多分200とかそのくらいだけど、大満足していた。
「本当になんとお礼を言っていいのかわかりません。本当にありがとうございます」
「たまたま持ってただけなんだ。気にしないでくれ。それと報酬なんだが」
「勿論直ぐにご用意いたします」
「頼むよ」
ボックスを持って奥の部屋へと行く受付さん。するとギンが俺の耳元に顔を寄せてきた。
「のう師匠、あの者これから大変なのであろう? ならば」
「ギン。これはあくまでも仕事だ。互いに利があるからこその取引だ。こっちが舐められたらその後いいように使われるんだ。区切りはしっかりとする必要がある」
「そ・・・そういうものなのかのぅ・・・」
「俺としてはお前が今後騙されないか心配なんだが?」
言っている事は理解してくれたようで少ししょんぼりしつつもギンは離れていった。ちょうど受付さんが戻ってきて、その手には依頼金が入っていたであろう袋が握られていた。
「お待たせしました。今回の報酬です。確認してください」
――――◇――――
依頼:『鳥巨人の心臓』の納品完了
入手:20000D
――――◇――――
「確認したよ。確かに金額通りだ」
「他の依頼についてもこちらの方でアールさんが受注した様に手配しておきますのでご安心を。こちらが依頼に関してまとめた物になります。それではよろしくお願いします」
「その前に受付さん。ちょっと聞きたいんだがいいだろうか? プライベートなことだから答えにくいならいいんだが」
「あ、はい大丈夫ですよ。答えられないかもしれないですけど」
一瞬きょとんとしながらも質問には答えてくれるようだ。
「この街を離れて何処に行くんだ?」
「最近エーテリアのギルドに新しく任命されたマスターがいるのはご存知ですか?」
知っているも何も知り合いです。師匠です。首を縦に振ると受付さんは少し嬉しそうに笑っていた。
「そこのマスターが私の恩人なんです。それ以外にも縁があってこの度エーテリアのギルドで一緒に働けることになりまして」
「へー、受付さん意外と行動派だな」
「ですね。みんなにも言われました。実は恩人に会いたい以外にも理由がありまして、私、海が好きなんです。それで今回いい機会だったので」
なるほどな。好きなモノの近くで働きつつ、恩人であるマリアーデに恩返しもできると。それなら今後の”期待を込めた投資”をしておこうか。
「受付さん。貴女の名前を聞いてもいいか?」
「ライヤといいます。ですがどうして名前を?」
「ライヤさんか、ならライヤさん、俺から個人的に依頼したいんだがいいだろうか?」
「い・・・依頼? 私個人にですか?」
「そ、依頼金はそうだな・・・これくらいでいいだろう」
――――◇――――
50000D
――――◇――――
「え・・・エッチぃ依頼はダメですよ!?」
「しないから。あとお前ら怖い。そんな依頼しないからその目やめて? ほんとに怖いから」
特にギン。お前のその顔本気で怖い。瞳孔開いて光が消えるの本気で怖い。コヨミのその笑顔も怖いからやめて。
「実はそこのギルドマスターになったマリアーデなんだがな? 俺の師匠なんだ。それで色々と大変だろうから可能な限りで言いから力を貸してやって欲しいんだ。依頼達成はマリアーデから感謝されるまででどうだろうか?」
「えっ!? ちょっ!? あの!? もしかしてアールさんって”あの”『五代目剣聖アール』なんですかっ!!?」
気づいてなかったのね。
その後サインねだられたり握手せがまれたりしたけど、全部応じて俺の依頼を受けてもらえることになった。間接的に師匠に対する返金である。
ついでに売名。エーテリアは俺のホームでもあるしこれから会う機会も多そうだしな。ギンからは『言っている事とやることが矛盾してるのじゃ』とか言われたけどしゃーない。師匠だし少しくらいは理不尽なことを言う時もある。




