197:今後の予定と買い食い
タイトル通りの話です。
既に何人かのプレイヤーがゼアリードへ足を踏み入れたという報告が上がっている。モンスターと何かしらの縁があるプレイヤーにとっては棚ぼたであろう。
いくつが上がった報告ではこちらでは手に入らない素材やアイテムが豊富にあるという。そしてなによりも驚いたのがモンスターたち独自の技があり、その技を伝授してもらえるのだという。
簡単ではないらしいが、美味くいけばオーグたち『ゴブリン七将』が使用していた技を覚えることも可能らしい。
「ん? この素材って確かこっちだと高かったよな。物の物価も違うのか」
スレッドには現地入りしたプレイヤーが続々と情報が書き込まれていく。人とモンスターだと感覚が違うからモノの物価がやはり違うようだ。同じ錬金術師仲間のエロロが書き込みで『パラダイスですぅ!早く行きたいですよぉ!!!』って書き込みしてる。
新しい街に早く行きたいと思う気持ちを抑えつつ、今日頼まれている依頼のノルマを終わらせるべくせっせと作業を進めていく。
マー坊とレイレイはそれぞれダンジョン攻略。ギンとコヨミは仲良く毎日の修行中に出かけており、リークとルークは今日、用事があるとのことでログインの予定はなし。
珍しく一人なのだ。なのでクランホームには珍しく俺一人。錬金術で鉄鍋を形成していく音だけが静かに流れている。
『随分と静かではないか』
「まぁな」
正確に言えば俺の他には珍しく工房の中に入ってきている『ギルファー』と、何時も通り首掛けのように体をふにゃっとさせてのんびりしているディアの一人と二匹である。
『よく余所見をしながらやる余裕が有るものだな』
ギルファーが言うように俺の視線は表示している掲示板に向けられている。俺の目線で上下左右に動いてくれるので手で動かす必要がないのがプラクロ公式掲示板の便利なところだ。と言うか。
「馬鹿言うな。ちょっと休憩中なだけだ。まだ余所見しながら作れると思うほど調子に乗ってねぇよ」
実際今作っているのは自分用の鉄鍋だ。鉱物を弄り、なれる訓練もかねてこうして適当に弄っているだけだ。流石に依頼品を余所見しながら作ったりはしない。
『それで? どうするのだこれから?』
「何が?」
『ゼアリードだ。あのアホ妖精から切符はもらっていただろう』
「あぁ、それに関してだがもう決めてるよ。当分は行かねぇ」
『ふっ、そう言うと思ったぞ』
流石相棒。わかってるじゃないの。勿論行ってみたいし行きたいけど、先にいくつか済ませておきたいことと、優先したいことがあるんだよ。それを終えてから胸張ってゼアリードの門を叩くつもりだ。
「ところでよギルファー、お前も持ってんの? 転移タグ」
『持っていない。あの国を出る前に渡されたが置いてきたに決まっているだろう』
だよなぁ。お前そういう厄介そうなもの絶対に持ちたくないだろうし。それはそれとしてやっぱりギルファーも『ゼアリード』にいた時期があったか。カイラが王様やってる時点でそうじゃないかとは思っていたけど。
「なら『ドドドラ』と『ジェクス』も『ゼアリード』にいるのか?」
なんだかんだ会えていないのはあと二人、猿と鳥。ある程度のまとめ役であり、のんびりした穏やかで優しい心を持つ猿型モンスター『豪快猿ドドドラ』。
空を飛ぶことが大好きで、その翼に絶対の自信を持つ怪鳥。ギルファーとほぼ毎日喧嘩していたがその勝率は驚異の五割。舎弟魂が宿る可愛い弟分『鎧翼鳥ジェクス』。
俺と『アフターストーリー』にて旅をした頼れる仲間たち。ギルファーがいたんだしアイツ等もいたんだろう。
『寝ザルとクソ鳥など知らん。我と共に街を出たのは確かだがその後は一度も会っていない』
「なんだ。アイツ等も街を出たのか」
『どうせ寝ザルはどこかで寝ているだろう。クソ鳥のことだ。今も飛んでいるに決まっている』
口調は悪いが、懐かしむように珍しく口元を上げながらそう語るギルファー。なんだかんだ言いつつ会いたそうだ。本人は全力で否定しそうだけど。
「そうだギルファー。お前この後暇か?ミスリアまで行くんだが着いてくるか?」
『む、新しい街か。当然行くぞ。どんな食物があるか楽しみだ』
流石食いしん坊。食物のある所ギルファーありだな。そうと決まれば今日のノルマをクリアしてしまわないとな。
――――◇――――
ギンとコヨミが戻ってきた時間に丁度今日のノルマを終了。仲良く食事をとりつつ少しの間店を開けて商売。数日分の商品の錬成と補充を済ませてから今日は店を閉める。
そうしてエーテリアでやることをすべて終わらせてからやってきたのはミスリアだ。以前ここで購入した『幻蒼石』が『真刀:戯』の修復に使えると思ったので買い足しに来た感じだ。ついでに前回来た時には出来なかった周囲のマッピングと、そこに住むエルフとの交流も兼ねてな。
「おぉ! エルフの街には初めて来たのじゃがなかなか素晴らしい街じゃ!」
人が作る街とは違い、森という地形を最大限活かした街作りだ。初めて来たといってギンはグルグルとあたり一面を楽しそうに見ている。
「んっん〜!! 空気がおいしいですね」
対するコヨミは来たことがあるようでギンほどのリアクションはしていなかったが、ハーフエルフということもあり、やはり自然の中の方が落ち着くのかリラックスした表情を見せていた。
『スンスン・・・・・・肉の匂い・・・これは・・・巨人か。アール早く食いに行くぞ』
早速露店を嗅ぎつけたようでギルファーはそそくさと匂いのする方向へと向かっていく。お前来る前にワームシャーク丸一匹食ったばかりだろうが。一応来る前に激しめに殺りあって腹を減らしては来たけどよ。
「仕方ない。食い逃げされても困るし先にアホ犬の腹を満たしちまおうか」
「むむ・・・師匠・・・その・・・妾も食べたいのじゃ」
「アールくん。実は私も」
「・・・全員の腹を満たそうか」
かという俺もハラが減ってきたのである。久しぶりに露店巡りとシャレこもうか。
――――◇――――
『悪くない』
「むむぅ・・巨人の肉か・・・思っていた以上に美味じゃのう」
「結構柔らかいんですね。肉汁もとっても美味しいです」
「森に行けばワラワラいたし今度丸一匹狩ってパーティーでもするか」
巨人の肉は意外と美味い。これは心臓も高値がつくのも納得である。
――――◇――――
「美味〜!!!」
「美味しいのじゃ!! 妾の好みじゃ!!!」
『まぁ悪くはないが、何度も食いたいとは思わん』
「肉食のお前には木の実の効いた味付け肉は合わないかもな。すみません。これ持ち帰りであるだけ下さい」
『ヨヨヨ!!?』
『貴様は買いすぎだ』
――――◇――――
「ハーブが効いていて優しい味ですね」
「これぞ自然の恵みというものじゃな」
『こんな小さい魚、食った気がせん』
「薬味が効いたサーモンカルパッチョみたいな感じだな。これ米を一緒に食いたいな。すみません持ち帰りで10人前お願いします。持ち帰り用の容器あるのでこれに」
『ヨヨヨヨ〜(特別翻訳:食べ過ぎ〜)』
――――◇――――
『草なのに悪くないではないか』
「あのお客様・・・これ以上食べられると明日の分も無くなってしまいまして・・・」
『む・・・仕方がない。明日また来よう』
「嘘だろ・・・ギルファーがサラダを美味いって言うなんて・・・」
「でもこのサラダすごく美味しいです。女性としては毎日でも食べたくなる気持ちはわかりますよ」
「うーむ・・・妾はもう少し肉感がある方が好みなのじゃ」
『この味がわからんとは、まだまだだな狐』
「グゥッ!! 一番言われとうない奴に言われたのじゃ!!」
「まぁギンは狐だし肉食だからしかたねぇ部分もあるんじゃねーの?」
「師匠!!? 今はその優しさが心をえぐるのじゃが!!?」
――――◇――――
「「幸せ(なのじゃ)〜」」
『甘い・・・が、悪くない』
「すみません。ここからここまで全部下さい」
「ぜ・・全商品買っていただけるんですかっ!!?
『ヨヨヨッ!!?(特別翻訳:嘘でしょ!!?)』
――――◇――――
「「「『満足』」」」
『ヨヨヨ・・・』
露店全店制覇完了。俺たちの食いっぷりに一部民衆が集まっていたけど気にしない。満腹なので大満足である。因みにちょっと売れてなかったケーキ屋は明日大繁盛間違いなしであろう。俺たちが買い終えたあとに明日の購入を希望する声が聞こえたし。
実際とても美味しかったから売れない訳がないとは思うんだけどな。もしかして今日出店したばかりだったりして。それなら納得。
アールは大食漢。




