186:特異個体『クヴァレイドルクイーン』戦 Ⅲ
新しい仲間(武器)を手に入れました。倒したからこそ手に入る最高クラスの武器であり、仲間です。
真化武器とは違い、これ以上の強さにはなりませんが、この状態でも既に並みの真化を超える力です。
関係ない話ですが、メンテ延長久しぶりですなぁ。侘び石お待ちしてます。全力で周回しよう(迫真)
沖田さんとアルトルフォ(剣)がまさかのQ単体宝具で被るとは・・・私はもちろん沖田さん派。
「と、言う事があったわけでこいつを手に入れたわけだ」
『セワニナル』
「「「「「「納得いかない/のじゃ!!」」」」」」
戻ってくると思ったので海岸で適当に時間を潰しつつ、仮想敵『クヴァレイドルクイーン』との戦いを繰り広げていると、リスポーンしたリークたちと、強制帰還させたギンとコヨミが戻ってきた。
何があったのかと、どうなったのかを簡単に説明し、紹介も兼ねて呼び出せばこんな感じだ。初見殺しのボスがまさかの俺の所有物になっている事と、また女が増えていることに憤慨しているのとで色々と怒られている。
実際のところ、イドルは既に太刀の状態に戻っており、背負う鞘の中に収まっている。気まぐれなのは間違いないようで、姿を数秒見せたあとにはすぐに太刀に戻り、話をするだけになっている。
「って言われてもなぁ・・・」
「女が増えたことに関してはモンスターだしまだ許すけど!! それでもあの異常状態が効かなかったことは納得いかない!!」
「あ、そっちなのね」
「そうだそうだ!! なんでアールは変な思考にならなかったのさ!!? 女のアタシが本気で綺麗だと思うくらい一瞬だったんだよ!!? それくらい綺麗だったのになんでアール平気だったの!!?」
「なんでって言われてもなぁ・・・」
効かなかった訳ではないし、ただ効きが他の人よりも鈍かっただけだし。あ、一つ思い浮かぶことあったな。
「リアルハードモードって痛いし何度も死ぬじゃん? それで鍛えられたんじゃね?」
『正直キカナイヤツガイルトハオモワナカッタ』
「「うぅ・・・それを言われると何も言えない・・・!!!」」
「やっぱお前怪物並みにメンタルオカシイだろ・・・」
「黙れゴリラ。全身の毛を削ぐぞ。もしくは水姫魅了の実験台にすんぞコラ」
『サッソク出番カ?』
刀がピクリと動く。と言うかコイツ意外と漢字二文字ならいきなり流暢に話すんだな。
「「「「それ!!!」」」」
「え?」
出番という言葉に反応したのはマー坊始めとする戦闘狂共だ。声を上げたのはマー坊、レイレイ、チーザー、アルトりすの四人だが、全員の目には力が宿る。
「遭遇直後に死ぬとか悔しい以外にないんだよ!!! 出し方は分かったしもう一回やんぞ!!!」
予想的中。マー坊のことだからもう一戦やるって言い出すのはなんとなくわかっていた。他の面々もやる気満々で、レイレイ始めとする支援系ジョブ持ちはスキルの設定や装備の見直しを始めていた。
10人以上という点と、クリアしていた『『ジョブ:狩人』で従者のレベルが90を超えている』という二つを既にクリアしているのでさっきのメンバーのまま挑めばすぐに再挑戦できるだろう。と言うか『ジョブ:『狩人』で従者レベル90を超えている』って普通に考えるとめちゃくちゃ凄いんじゃね?
「再戦はいいけど、俺は休憩するからな?」
「「「「「「「「「「むしろ休んでろ(休んでて)!!」」」」」」」」」」
どうやら全員俺抜きで勝利することを望んでいるようだ。まぁ俺も来るまでに”対策と立ち回り”は終わっているしあとはイドルとの模擬戦で済ませればいいレベルだしな。
そういう訳で、俺は観戦することにした。
「オリヴァー、貴方はアールさんの下で待機を。私のわがままで貴方が死ぬことはないので。アールさんお願いします」
「おい愚弟。お前も向こう行け。お前じゃ的確定だ」
「・・・言われなくても解ってるよ」
『ワカッタ』
――――◇――――
という訳で俺とルークを除くプレイヤーでの『クヴァレイドルクイーン』再戦。フィールド外に出ることも考えたのだが、もしも一度登場したら倒すまで存在するタイプのモンスターだと他のプレイヤーに迷惑がかかるので同じフィールドで待機。
装備に関しては『天籟刀:ズイカク』と『艶姫刀:クヴァレイドル』という現在の俺が出来る本気装備。『双子星の剣』も勿論強いんだけど、相手が相手なので力不足なんだよなぁ。
「・・・バカ師匠」
若干機嫌が悪そうなのはルーク。生贄にはされるし、倒す予定だったモンスターを取られるし、再戦するチャンスも無くなったわけで流石に機嫌が悪そうだ。
「悪かったな」
「僕が挑むはずだったのに!! 僕が倒すはずだったのにぃ!!!」
ルークの修行の成果を試すはずが、リベンジに燃えるリーク達によってそれも叶わなくなってしまった。そもそもあの人数で挑んだ時にはもう、それが叶わなかったわけなんだが。
「今日じゃなくても出来るから今だけは譲ってやれ。流石に自分らのプライド的にも許せんかったんだろうさ」
ウサギだろうと子猫だろうと敵なら容赦しない連中だ。ちょうどふよふよと降りてきたまだ通常個体である『ローザクヴァレ』に対してガンつけてるし。
「それは気持ちがわかるからいいんだけども!! それにしたって師匠たちが支援掛け過ぎなんだよ!! あれで倒しても僕が倒したって言えないじゃん!!!」
「あ、怒ってたのそっちなのね?」
「それ以外ないじゃん!!!」
『ナイノカ?』
『ナイヨウダ』
正直俺もやりすぎたとは思う。ちょっと過保護過ぎたかもしれない。素直に反省しよう。ついさっきリークに『身内に甘い』って言われたばかりだし気を付けないと。
と言うか何げにオリヴァーとイドルが仲良さそうだ。モンスター同士だから通じるものがあるのだろうか?
「んじゃ、少し落ち着いたら今日中には二人で来ようか。そうしたら条件満たさないし絶対にいけるだろ?」
「今日戦うって決めてたんだから今日がいいんd・・・え? いいの?」
どうせ後日にしようというとでも思っていたんだろう。やる気がある時にやったほうがいいんだよこういうのは。
それと、実は内々思っているんだが、現状あいつらだけで『クヴァレイドルクイーン』の討伐は現状無理だと思っている。難所が触手マシンガンと歌声の同時攻撃と、長時間戦闘による水姫魅了の蓄積と水姫侵食だ。
水姫侵食はマシンガンに少しでも触れるとアウトなのに当たった感覚が全くない。現状対策は当たらないこと以外、多分無理だと思う。魅了は恐らく通常のものとは比べ物にならないものだろう。普通の『AS』で防げるとは思えない。間違いなく『UtS』での対策が必要になってくると思う。
あと何げに動きが早い上に、一撃必殺で『AS:復活』を無効化してくるから数をこなして動きと対策を練った上で戦い方と連携、さらに攻撃のタイミングなどを研究し尽くさないと戦いにすらならないと思うのが俺の見解だ。
「約束だしな。最悪あいつら全員我慢させてお前を優先させるよ。それともクヴァレイドルクイーンに挑むか?」
「ありがとう師匠!! でもクヴァレイドルクイーンは無理!!!」
「そこは強がりでも『頑張る』って言えないのか男の子」
「勇敢と無謀は違うんだよ、って師匠が教えてくれたんじゃん」
『見所ハアルガジツリョクガナイナ』
そういうってことは自分でも実力差は理解しているってことか。倒した張本人が背中で感心するように動いていた。それを聞いて少しムスっとするルークだが、事実なので何も言い返さなかった。
「実力差を理解してるならいいか。ギン。コヨミ。悪いけどお前らも実力不足だからな?」
「ぐぬぬ・・・正論だから言い返せぬ・・・鍛え直すかのぅ」
「井の中の蛙、大海を知らずとはこのことですよね・・・アアリーさんに頼んで稽古をお願いしてみましょうか」
ギンとコヨミも何も出来ずに帰還させられたのが中々ダメージだったようで表情には余裕がない。それでも、すぐに鍛え直すことを思うあたり流石天匠流を修める人間というべきだ。
「それと渡したブレスレット必ず装備しとけよ?」
一度だけ攻撃を無力化する『剣聖のブレスレット』を既に渡してある。俺が出張ることになっても、それさえあれば時間的になんとかなるだろう。
『オレモモラッテヨカッタノカ?』
「構わねぇよ。むしろ大切に持ってろよ? カトレアはお前のことを大切な仲間だって思ってるんだしな」
『カンシャスル。アリガトウ』
「ところでお前さっき殺られてなかった?」
見間違いでなければ間違いなくカトレアと一緒にぐっさり殺られていたはずなのにこうして生きているのがちょっと不思議だ。
『コレノオカゲダ』
――――◇――――
アクセサリー:サクリファイスドール(従者専用)
特殊効果:レベルサクリファイス
・従者が死亡するとき、主であるプレイヤーは即時『瀕死』となり、プレイヤーのレベルが2下がる代わりに、最寄りの泉でプレイヤーと共に復活する。
――――◇――――
「カトレアの奴お前に対してめちゃくちゃスゲェもん渡してんぞこれ」
見せてくれたのはオリヴァーをミニサイズにした人形。完成度が凄まじく高い。まさか自分のレベルまで捧げて守るほどには大事な仲間扱いじゃん。と言うか従者がいるプレイヤーからすればこのアイテム必須じゃないか?
『ファーズトイウオトコノミセデコウニュウシタ。オーダーメイドトイウヤツダ』
ファーズの店か。今度行ってみようかな。コヨミとギンに渡しておけば万が一もないだろうし。従者が複数いる場合も適応されるんだろうか? 其の辺は要確認だな。
そんな感じで、観戦組で話をしていると、ようやく通常個体である『ローザクヴァレ』に変化が現れた。ゆらゆらと動いていた触手の動きが変わり、姿が変わっていく。変化中に攻めようとする者は居らず、皆リベンジに燃えているのがよくわかる。
勝つだけならこのタイミングで攻め込むのが一番なんだけどな。一回だけは影から手助けしてやろう。これで慢心してぶっ殺されるかどうか見てみたいのも正直あるし。
「イドル。能力開放だ。現れた瞬間に『クヴァレイドルクイーン』の魅了を魅了で相殺できるか?」
『ソノ程度チカラヲツカワズトモカノウダ』
さすが元祖。余裕と申すか。鞘から『艶姫刀:クヴァレイドル』を抜く。同じタイミングで二度目の登場となるボス『クヴァレイドルクイーン』が変身を完了し、そして同時にその歌声を響かせた。
「イドル」
『 AAA 』
『 LAAA 』
歌声と歌声がハーモニーを奏でるように広がり相殺する。そのおかげで俺たちを含めた全てのプレイヤーに『水姫魅了』がかかることはなかった。それに気づくこと無く、メタが張れると感じたようでマー坊たちは攻め入る。
「さて、お手なみ拝見と行こうか」
思い込むか、はたまた油断せずに警戒を解くことなく最後までいられるか。ある意味篩にかけるようなことだが、もしこれから先同じ強さの相手と戦うならここで一度敗北を心に刻み込むのも大切なことだし。
逆にこれで折れて立て直せなくなるならこれ以上の相手とは戦えないわけだから現状で頑張ってもらうしかない。戦いに情を持ちすぎるとこちらの敗北。そして、周囲の死に繋がるからな。ルークが今丁度言ったが『勇敢と無謀』は違うのだ。
今現状『無謀』なアイツらが『勇敢』になるかどうか見させてもらおう。
「「「・・・・・・・・・」」」
「ん? どうしたお前ら? まさか魅了にかかったか?」
目に力があるから魅了にはかかっていないと思うんだがどうしたんだろうか?
「ねぇコヨミさん? 師匠ってさ?」
「えぇ。修行において言えば間違いなくマリアーデさんと同じ次元の考えの持ち主です。鍛えると決めたらどんな地獄でも実行しますよ、アール君」
「み・・・身に覚えがあるのじゃ・・・修行と言って全力で殴られた経験があるのじゃ・・・」
失礼な。こうして見ててやるだけじゃなくて一回とは言え援護してやるんだぜ? マリアーデよりも凄まじく優しいだろ。マリアーデなら間違いなく見てるだけだしな。
それとギン。一度死ぬほどの恐怖を味わっておくことは結構重要なんだぞ? 流石に死んで欲しくないからあくまでも臨死体験だけども。恐怖で体が硬直する=死なんだし、硬直しないようになるための訓練は大切だ。
勿論傷ついたら即座に『弥生』『卯月』の二匹に回復させていたから後遺症とかもない。と言うか無いように、出来ないように攻撃してたから出来る訳もないんだけどな?
――――◇――――
数分後。
「意識はあるかルーク?」
「う・・・ううん・・・ぎ・・・ギリギ・・・リ・・・?」
「殆どアウトだな。ギン、コヨミ。お前らは?」
「あ・・・あんま・・・・り・・・・な・・・・・ぃ・・・」
「ご・・・めんな・・・・さぃ・・・・・・」
案の定、『クヴァレイドルクイーン』の歌声がゆっくりと牙を剥き、声を聞いている奴らの動きが鈍り始めてきた。今はまだ触手による物理攻撃しかしていないので、ダメージを負うだけで何とかなっているが、この様子だと触手マシンガンは回避できないだろうな。
「し・・・師匠・・・ょ・・・平気・・・な・・・のか・・・・ぉ・・?」
「二度目だからな、もう同じヘマはしねぇよ。集中力は使うけど、座っている今なら結構余裕あるぞ?」
それでもゆっくりと体の底から何か湧き上がるものがあるけどな。時折手を握ったり開いたりしていればなんてことはない。体力もアイテムを使ってばっちり回復させたし座っているだけなら問題ない。
『モッテアト30ビョウ程度ダナ』
「だなぁ」
イドルの言う通り、脱落者が出た。魅了に対抗していたからだが限界を迎えて地面に膝をつくのは『ミー』だった。それを逃す『クヴァレイドルクイーン』ではない。瞬間的に触手を伸ばし全身を串刺しにしてそのまま捕食せんと動く。
当然、助けに行こうとした近くのプレイヤーだが、その隙を突かれて一撃をもらった。捕食はされなかったがダメージは大きい。それがきっかけで状況が一変。タダですら余裕がなかったのに、動きが鈍ればダメージは大きくなる。
まだ辛うじて動けてはいるが防戦一方に状況が変わってきた。これはもうダメそうだ。
予想通りといえば予想通りだ。その後約3分足らずで、観戦組である俺らを除く全員が瀕死一歩手前まで追い詰められた。相変わらず強いな。さて、戦っていた連中が全員いなくなると、次のターゲットは間違いなくこちらだ。
「さてと、捕食されそうだし助けに行くか。ディア」
『ヨヨヨ』
ディアと思考融合を行い侵食の対策。背負うのはもちろん『天籟刀:ズイカク』。そして新装備『クヴァレイドル』を身につけて立ち上がる。
「し・・・・しぉ?」
意識が朦朧としており、既に顔が惚け始めているルークの頭を撫ぜて笑顔を浮かべる。
「見せてやるよ。俺の全力をな。お前らの師匠の実力見逃すなよ?」
地に伏せる彼らのおかげで今回の個体の動きはある程度理解した。どうやらクヴァレイドルクイーンは戦う相手によって実力をどれだけ出すのか判断して戦うのかもしれない。要は舐めプをデフォでしてくるという訳だ。
自分と対峙する相手が、自分以下の相手ならば適当に戦ってあしらい全て倒す。同格以上ならば全力で戦う。そういう思考回路を持っているみたいだな。
ボスとしての振る舞いではないが、超えるべき壁としての立ち振る舞いと考えれば素晴らしいな。絶対に勝てない相手よりも、勝てる可能性があると思える方が戦意は上がるし、何度も挑もうと考える。
『 LLAAAA 』
ついに自分の勝利を疑わなくなった『クヴァレイドルクイーン』が触手を開き、捕食の態勢に入った。この距離なら問題ない。
「目覚めろ『天籟刀:ズイカク』、月光真流奥義『十六夜天雷』接続『風瓶エリシオン』」
――――◇――――
『天籟刀:ズイカク』特殊能力『天籟刀』発動。
――――◇――――
感覚と体感が再び加速する。前方へ飛ぶように駆け抜け、リーク達の前に跳び、迫る触手を切り裂いて行く。
俺の登場に驚いたようで『クヴァレイドルクイーン』は触手を引っ込めて距離をとった。
「二代目お姫様。こっからは役者交代だ。俺と一曲踊ろうか」
「ァ・・・・ル・・・サァ・・・・?」
ダメージと魅了により朦朧とする中、倒れていたリークが顔を上げていた。妙に色っぽいし艶めいているのは魅了による精神の弱体化と、身につけている装備のはだけ具合によるものだろう。
直後、『クヴァレイドルクイーン』が動いた。“さっきよりは速い”触手攻撃を全て切り落とし、切り落とした肉片も再生しないように八つ裂きにする。その全てがしっかりと光となって消えるまでは、“肉片ひとつであろうとも”見逃さない。
『 LAAAAAAAAAA 』
「超越剣聖流奥義『天津雀:時雨鳴き』」
天津雀の連続使用で迫る触手をひたすらに切り刻む。触手に混じって遂に見せてきた触手肉片マシンガン。俺だけを狙っているように見えて後ろで倒れているリークたちにも向けられている。
勿論”細胞一つたりとも”通すつもりはない。十文字に、アスタリスクを描くように、雪の結晶のように向かてくるすべてを切り裂き消していく。
『 AAA 』
「そっちにも飛ばすよな。けど甘い。超越剣聖流奥義『天津雀:初月』」
ルーク達の方へも向けられた肉片を『初月雀』を『天津雀』で放ちながら二方向全ての攻撃を処理していく。更に『初月雀』を組み込んだことでこちらからの攻撃も可能となり、一撃一撃確実に叩き込んでいく。
発射された肉弾を蹴り砕き、切り裂き、そぎ落とす。それによって出来た間隔を埋めるように一歩、また一歩と肉薄して距離を詰める。伸びていた触手を縦に裂き、その根元である『クヴァレイドルクイーン』の体にダメージを与えていく。
『 LAAAAAA!!!! 』
戦法を精神攻撃へと移行しようとしたんだろう。だがもう遅い。こちらの間合いには入らせてもらった。せめて後一手早ければもう少し長く生きることもできたかもしれないが、数秒違うだけだ。
現れた時点で全力で魅了を狙えていればまだ勝機は高かったかもしれない。けど、さっきのイドル戦も含めて二度目、そして”聴き慣れる時間”をもらったんだ。ある程度慣れてきた。
「さぁ踊ろうか。超越剣聖流派演武『桜姫千年歌』」
認識をずらし、存在感を時に濃く、時に薄くさせて、ワルツを踊るように刃を振るう。クヴァレイドルクイーンの美しい体に刃が走り、桜の花びらが舞い散るように血飛沫が舞う。切り落とした肉がひらりひらりと地面へ散っていく。
この奥義の大元となった『超越桜華戦流:参の型『千年桜姫』』は相手を中心にくるりくるりと回りながら、刃を振るい続ける踊り。そこに俺がいるのに、実体を捉えることができない。捉えたとしてもそれは花びらの幻影の様に散り、散った幻影は相手を切り裂く刃に変えるというもの。
そこへ『月恋翔サジタリオ』を組み合わせることで射程が伸び、さらに『天籟刀:ズイカク』と『艶姫刀:クヴァレイドル』の二刀流で繰り出すことで刃はさらに増える。太刀二刀流は俺だけでは不可能だが、『ディア融合状態』であれば不可能はない。
――――桜よ桜、千年の時を超えて花ひらけ
――――私が去ったその地にて、その花びらを咲かせてください
――――私が残した大切な人を、千の時を超えて何時までも見守ってください。
――――あの人たちが生まれ変わったその時も、あなたが私の代わりにそばにいてください。
――――その花びらで、皆に優しさを届けてください。笑顔を届けてください。
――――桜よ桜、千年の時を超えて、私の思いを彼らに届けてください。
――――あなたたちに出会えて、私は幸せでした。
『 LLAAA !!!? 』
「き・・・・・れぃ・・・・・」
舞う度に白い飛沫が巻き上がり、綺麗な体に傷が増えていく。触手を斬られる痛みは相当なものらしく、痛みに耐えながら攻撃しようと必死に戦うが、俺を捉えることはできない。
空振りした触手を一刀両断し、肉片を飛ばす触手マシンガンをズタズタに切り裂く。痛みを感じた一瞬、怯みを見せた『クヴァレイドルクイーン』に対して距離を詰め、喉を抉り、穴を開ける。
口の中へ衝撃の刃を突っ込んで、後頭部から血の花びらが舞う。即座に再生する『クヴァレイドル』は、俺を殺すためにがむしゃらでめちゃくちゃに攻撃をしようとするが、攻撃する前に、触手再生直後のを削ぎ落とし、攻撃を中止させる。
イドル曰く、再生直後の触手が一番敏感らしい。なので最も痛みを感じるのはその瞬間とのことだ。あと再生するのだが、自分の意志ではなく、そういう体質でしかも痛いらしい。再生したくなくてもしてしまうので結構我慢しているらしい。
そしてもう一つ。『クヴァレイドルクイーン』を殺すためにはある程度のダメージを与えた上で心臓を突き刺す以外に方法はないらしい。
それ以外では再生できると『イドル』が言っていた確かな情報だ。
『 LaaaLLAAA―AA 』
「――――私の心は何時までもこの地に残ります。私がここにいた証は桜の花びらと共に」
腕を切り落とし、頭の傘を十字に割る。美しい歌声が、傷付いても未だ美しく聞こえる悲鳴へと変わるのを聞きながら、『クヴァレイドルクイーン』の身体に傷をつけていく。
白い血に染まっていない部分はもう存在しない。微かに見えた顔も血だらけで、眼球も横一文字に切り傷が残り、涙を流すように血を滴らせている。
再生を止めようと自分の触手を抑えるが、無情にも身体は傷を癒そうと彼女の意思とは無関係に、切り落とし、抉られ、削ぎ落とされた身体を再生してしまう。
激痛なんだろう。美しい顔は痛みを堪えるように歪み、血の涙は、本当の涙を交えて白く濁り流れていく。
『モウ楽ニシテヤレ』
美しい歌声は既に悲鳴へ変わり、舞踏会の主役のように美しかった姿は、魔法の解けたシンデレラのようにズタボロの姿へと変わり果てていた。
「イドル、お前を使う。せめて最後は痛み無く終わらせてやろう」
『最後ノナサケトイウヤツダナ』
『艶姫刀:クヴァレイドル』の特殊能力は相手を魅了し、それ以外のすべての思考を放棄させること。それは痛みすら消し去り、ただ一つの感情と理性『相手は美しい』と思わせる。ただそれだけ。
ただそれだけの事なのに、まともにそれを受けると、死ぬ間際、もしくは死んでしまうまで、正常な思考と感性を持てなくなる魅了の力。
高い精神力がある相手には全く歯が立たないであろうこの効果だが、逆を言えば、精神を削りさえすればそれは、ボスだろうとなんだろうとこの効果の対象に出来るということでもある。
特殊能力を発動させる為には特定のキーワードが必要な場合がある。俺の『天籟刀:ズイカク』のキーワードが『目覚めろ』という言葉。俺は語呂がいいのでその後で『天籟刀:ズイカク』とつけて呼んでいるが、実は『目覚めろ』だけでも使える。
MPを回復する葡萄を飲み込んで『天籟刀:ズイカク』の『天籟刀』にて消費したMPを全回復させて、万全の状態にする。これで全ての準備は完了だ。
『艶姫刀:クヴァレイドル』も『天籟刀:ズイカク』と同じくキーワードを口にすることで特殊能力が発動するタイプの武器。そのキーワードは・・・
「艶やかに歌え『艶姫刀クヴァレイドル』」
『――――LAAA――――』
――――◇――――
『艶姫刀:クヴァレイドル』特殊能力『クヴァレイドル』発動。
――――◇――――
『 L Laaaa Laaaa ??? LAAAA・・・・ 』
『艶姫刀:クヴァレイドル』にて『クヴァレイドルクイーン』へと刻んだ傷、その全ての箇所に鮮やかな模様が浮かびあがった。それは桜のように美しく、再び魔法の力を受けたシンデレラのように新たな美しさを持っていた。
痛みから悲鳴を上げて、とても苦しそうにしていた『クヴァレイドルクイーン』の表情からは苦しみが消えた。そして顔を惚けさせ、俺に向かってただ静かに手を伸ばしてきた。
「安らかな世界でゆっくり休みなさい。美しいお姫様」
『 AAA 』
俺に伸びてきたか弱く美しい手を取って、俺はふらつく『クヴァレイドルクイーン』の体を受け止めた。そして優しく痛みを感じないように、ゆっくりとその心臓へ『艶姫刀:クヴァレイドル』を突き刺した。
『 Laaaa ? 』
「大丈夫だよ。もう俺は貴女を傷つけないよ」
『 Laaaaa・・・ 』
そう言うと、『クヴァレイドルクイーン』は一戦前の『イドル』と同様に優しい笑みを浮かべながら、俺の腕の中で、光となって消えていった。
――――◇――――
・特異個体『クヴァレイドルクイーン』撃破
・生存者:プレイヤー『アール』『リーク』『レイレイ』『俺はマー坊』『ルーク』『チーザー紫』『ミー』『アルトりす』『オルガン』『カトレア』『エロロ』『アルメリア』『ライーダ』『サクラ』『ヤイチ』『ぞうもつまる』『弥生』『朱雀』
・生存者:従者『NPC:銀狐族のギン』『NPC:剣豪コヨミ』『モンスター:破滅の球体-ディア-』『モンスター:オーク族のオリヴァー』
・戦闘終了に伴い、封鎖していた戦闘エリア『海岸エリア:ボスフィールド』を開放します。
・特異個体撃破に伴い、生存者全員が『姫刀:ローザクヴァレイド』を入手
・特異個体の特殊撃破に伴い、『アール』の『艶姫刀:クヴァレイドル』の能力を強化。
――――◇――――
・『クヴァレイドルクイーン』を撃破しました。
・レベルアップ!:アールはレベル52になりました。
・特異個体討伐報酬:武器:太刀『艶姫刀:クヴァレイドル』の能力が『クヴァレイドルⅡ』へと進化。
・賞金:26000Dを獲得
――――◇――――
武器:太刀『姫刀:ローザクヴァレイド』
攻撃力:+366 特殊効果『クヴァレイド』
・海岸に現れた美しき水姫から与えられた武器。美しい模様とは裏腹に、高い殺傷能力を保持している。綺麗なものには危険があるとはまさにこのことである。
――――◇――――
特殊効果『クヴァレイド』
・戦闘開始から180秒毎に発動。発動から30秒間。攻撃を行うとHP&MPが大幅に回復する。HP&MPが最大値の時、攻撃力が上がる。
――――◇――――
特殊能力『クヴァレイドルⅡ』
『クヴァレイドルクイーン』の文字通り魂が宿っているため、所持者のMPを僅かに消費することで一時的に『クヴァレイドルクイーン』と同じ力が使える。また、『クヴァレイドルクイーン』の気まぐれで、もしくは所持者自身がHPを捧げることで『クヴァレイドルクイーン』が二体顕現し、従者『クヴァレイドル』『クヴァレイドル』となる。その間、自身は『クヴァレイドルクイーン』の能力を発動できない。
従者『クヴァレイドル』のHPは捧げたHPと同じになり、全損すると従者化が解除される。
◇クヴァレイドルクイーンの能力◇
・水姫侵食
自分が傷つけた相手を『特殊状態:水姫侵食』にする。侵食が心臓に達した時、相手を瀕死にする。
・水姫魅了
心に隙がある相手を『特殊状態:水姫魅了』にする。水姫魅了にかかると、魅了対象は水姫魅了が自然回復せず、戦意を喪失する。
――――◇――――
まさかの能力強化&二体目従者化である。嘘でしょ?
『La〜』
『責任トレトイッテイル』
ただ倒しただけなのに。
早速アール実戦にて使用。何げに使いたくてウズウズしていたのは秘密。本人が言うように、相手の精神へダメージを与える桜花殲滅流、ひいては超越桜華戦流との相性は最高。地面に伏していた中でアールの全力を見ていた面々はその光景に目を奪われていたこと間違いなし。
サラッと口説くあたりこの主人公・・・自分から女難の相に激突しに行ってるのである。
特殊撃破条件
・初回出現時に生存する。
・クヴァレイドルクイーンを抱いた状態でトドメを刺す。
・生存者が3名以下(従者除く)で撃破する。
以上三つの内二つ以上を達成することで『艶姫刀:クヴァレイドル』を入手可能。入手後は一つでも条件を満たすと能力の強化が可能(一度のみ)




