184:特異個体『クヴァレイドルクイーン』戦 Ⅰ
エクスゼウス運営の様子
C「主任!!」
主任X「総員録画準備!! 急げ!!」
M「ぐひひひ!! さぁ藤宮くん!! 僕の生み出したお姫様を倒せるかな!!?」
T「とかいいつつ自分は倒す方に投票してんじゃないわよ!! 賭けにならないでしょうが!!」
A「藤宮くんならどんなに強くても必ず倒すって感じするもんね。むしろ倒すまでの過程を見せて欲しい」
一同「同意」
主任X「賭けをやるならせめて何分以内で倒すかにしなさいな。その方が勝負になるでしょ?」
いつもどおりだった模様。
先程も話していたが、各地のボスモンスターに修正が加えられた。上位陣による一方的な各地ボスの蹂躙や、高速パワーレベリングを防止する意味合いも兼ねて行われた今回のアップデート。
基本的には挑戦者上限の撤廃と挑戦者数に応じたステータスや行動の変化だ。既に有志の手によって大方の新モーションやステータスの変化値などは分析されまとめサイトや掲示板に行けばその情報は日を追うごとに追加されている。
しかし、その中に一切として『特殊条件』や『ボスの進化』は今までに存在していなかった。
『 AAA 』
そんな俺たちプレイヤーの前に突如出現したのがこの『ローザクヴァレ』の進化した姿。特異個体『クヴァレイドルクイーン』と明言された新しいモンスターだった。
その姿は深いピンク色のドレスを身に纏う、長い髪を持つお姫様というのが一番しっくりくる。顔は口以外、髪のように延びる触手で見えないが、口は少しだけ開かれ、何か発音するように声を出していた。
その声はとても美しく、その姿も相まって、歌姫の歌のようにも聞こえてくる。美しい姿で美しい歌声・・・・・・あぁ、ずっと聞いていたい。いや、このこえを聞いているだけで俺はとても幸せな気分になっていk・・・・違う!! これは異常状態じゃないのか!!?
「ちっ!!」
両頬を思いっきり引っ叩き意識をしっかりと保つ。しかしとき既に遅し。周囲を見渡せば、全員がその姿と声に魅入られており、戦意を失っていた。だらしなく皆が両腕から力が抜けており、うっとりした表情で無防備に佇んでいた。次の瞬間。
『 AAAAAA 』
「やっべ!!」
ひらひら揺れていた髪の様な触手が恐ろしい速度で迫ってきた。俺はルークを抱え、ギンとコヨミを捕まえるように『天雷風瓶エリシオン』で跳び、ギリギリ回避することができたが、他の面々はそうはいかなかった。全員が全員顔面を貫かれていた。
びちゃりと落ちる顔もあれば、夥しい量の血を流す。案山子のように立っていた彼らはわずか一瞬で全員AS『復活』の発動も許されず、触手がその体を喰らうように取り込んでいった。
――――パーティーメンバー『リーク』瀕死
――――パーティーメンバー『レイレイ』瀕死
――――パーティーメンバー『俺はマー坊』瀕死
――――同戦闘エリア挑戦者『チーザー紫』瀕死
――――同戦闘エリア挑戦者『ミー』瀕死
――――同戦闘エリア挑戦者『アルトりす』瀕死
――――同戦闘エリア挑戦者『オルガン』瀕死
――――同戦闘エリア挑戦者『カトレア』瀕死
――――同戦闘エリア挑戦者『エロロ』瀕死
――――同戦闘エリア挑戦者『アルメリア』瀕死
――――同戦闘エリア挑戦者『ライーダ』瀕死
――――同戦闘エリア挑戦者『サクラ』瀕死
――――同戦闘エリア挑戦者『ヤイチ』瀕死
――――同戦闘エリア挑戦者『ぞうもつまる』瀕死
――――同戦闘エリア挑戦者『弥生』瀕死
――――同戦闘エリア挑戦者『朱雀』瀕死
――――従者『オーク族:オリヴァー』戦闘エリアより離脱
――――瀕死になったプレイヤーは戦闘終了時まで泉での復活及び、アイテム・スキルでの復活が不可能となります。
ファック!!! っざっけんな!! 上位陣を一撃で葬った挙句復活不可能で増援無しとか難易度爆上がりじゃないかよ!!
っぶねぇ!!? こいつまだこっちを狙ってきやがる。縦横無尽に動き回ってはいるけど触手の速さが結構辛い。しかも両手と背中には未だぼんやりとしているお荷物三人が残っている状態だ。
状況は最悪だ。
「ギン!! コヨミ!! ルーク!! 目を覚ませ!!」
「「ほぇ・・?」」
「ふへぇ・・・?」
余裕があれば可愛らしいとか言ってやるのだが生憎そんな余裕はなくなった。しかも声は出せても意識は未だ戻らない。これだけ高速で動いているにも関わらず何も感じていないようにただぼんやりとしている。
「ディア!! ”喰え”!」
『ヨヨ!!』
この状態で戦えるとは思っていない。ローブに隠れていたディアを呼び出し、思考回路の融合を行い、即座に思考を読み取らせる。俺の思考を読み取ったディアは即座に帰還タグをポーチから取り出して発動。
しかし同時に触手が、抱える三人目掛けて襲いかかってくる。しかも俺が三人の回避を選べば、俺は間違いなくダメージを負うコースに触手を動かしているいやらしさ。
そして俺の勘が警告をあげている。俺が手負いの状態で、動けない三人を担いだまま、この攻撃を回避し続けることができるような相手ではないと。
待っているのは確実な死であると告げている。きっと主人公なんてのがいたら、こんなときでも全員助けてしまうんだろうが、生憎俺はそんな器用な男じゃないんでな!
天秤にかけて優先するなら決まってるだろうさ!すまんルーク!!後でいくらでも怒られてやるから許せ!!
「新鮮なルーク一丁ォ!!」
掴んでいたルークを向かってくる触手目掛けて投げつける。触手は無防備を晒したルークに目掛けて進行方向を変え、ルークの身体中を貫いた。囮を捧げたことで確保した回避ルートを一気に駆け抜け、抱える二人と俺は何とか回避に成功する。
同時に帰還タグが効果を発動してギンとコヨミの体が光と共にクランホームへと帰還した。そしてルークの体は食い破られるように触手によって捕食された。
――――パーティーメンバー『ルーク』瀕死
――――従者『NPC:銀狐族のギン』戦闘エリアより離脱
――――従者『NPC:剣豪コヨミ』戦闘エリアより離脱
登場してわずか一分少々で俺以外の全員が瀕死という形で戦闘から除外されてしまった。あたりに残っているのはそこにいたという証とも取れる夥しい量の真っ白な血だまりだけだった。
『 AAAAAA 』
そして触手の先を真っ白に染めたボス『クヴァレイドルクイーン』が佇んでいる。血に染まったというのに、その姿は今だ美しい。その声は俺の心を掴んでいる。
油断すれば一瞬で殺されることを考えればその美しさも狂気へと変わってしまう。
「ディア。体の一部は”向こう”にあるか?」
『ヨヨ』
それなら安心だ。コイツは捕食タイプ。ディア唯一の弱点だ。弱点らしい弱点がないのがディア最大の強みだが、全身を一気に捕食するタイプ相手だと捕食されてそのまま死んでしまう。もちろんその確率は限りなく低いのだがゼロではない。でもこの美しい声の持ち主になら食べられてもいいかもしれ……ないわけがない!
というか、既に思考が汚染されてて何を考えたのか自分でもわからなくなる。こんなモンスター実装して他プレイヤーから苦情来るのは間違いなさそうだなぁ。
話を戻すが、アフターでも一度ディアが捕食され、そのまま帰らぬ存在となり、更にディアを捕食したモンスターが『捕食したモンスターの能力を得る』力を持っていたので全滅し、最初からやり直しになった痛い経験がある。
その経験のあとはディアの力を全部確認し、体の一部が別の場所に残っていれば復活可能であることを確認している。これで、万が一ディアが死ぬことがあっても復活ができる。本当はディアも帰還タグで帰還しろと思考していたんだが、ディアはそれをしなかった。
嬉しい半面。心配でもある。でも帰還タグで体の一部を飛ばしたみたいなので良しとしよう。それにここで負けなければいいだけの話だ。負けても美しさの一部となる幸せがじゃなくて!!
コイツ本当に油断ならねぇ。こっちの思考にまで介入してくるとかマジで・・・・・・面白い相手じゃねーか。久しぶりにこんな相手と戦うことに俺は興奮している。
携えていた『双子星の剣』を抜き構える。相手は未知数で、魅了効果を持っている。気を抜いたりすれば一気に殺される。文字通り今現在の全力で挑もう。
「ディア、用意だけ頼む。出来れば"今の俺の力"で勝ちたいけど負けるのはもっとゴメンなんでな」
『ヨ』
『 AAA 』
同時に静かだった『クヴァレイドルクイーン』が再び動き出した。美しい歌声と共に無数の触手が牙をむく。向かってきた触手を切り裂き、迎撃する。剣で切ることは出来る。ならこのまま全部切り裂いて丸坊主にしてやる。
しかし、そう簡単にはいかなかった。案の定というべきだろう。切り裂いた断面から触手が再生した。そりゃそうだよな。こんな簡単に行く訳ないか。
「『風瓶エリシオン』接続『鏡雀』ッ!!」
後方に下がりながら切り払うように迫る触手を迎撃し、一度距離をとってみる。でも触手もそれに合わせて伸びてきて俺のことをしっかりと捉え続けている。鏡雀の速度よりは遅いため迎撃自体に苦はないのだが、その質量が多い。前に進もうとしても無数の触手の迎撃で手一杯で中々進むことが出来ない。
「『天風朧雀』!!」
それならこれでどうだ。勢い任せで跳び、触手を切り裂きながら前方へと飛ぶ。完全に切り裂ききれていないが下がった分以上の前進には成功した。そしてその先にいる本体に狙いを定める。
『 AAA 』
直後触手がまるで壁のように重なり合い俺の前方の視野をシャットアウト。こうなると先の予想は簡単だが、コイツの動きを見たいこともあり、そのまま突撃し触手の壁をそのまま『天風朧雀』で八つ裂きに切り裂く。
案の定『クヴァレイドルクイーン』はその位置を変えており俺の剣が届くことはなかった。そして再び襲いかかってくる触手の雨。けどだんだんコイツの気配と動き。そして行動パターンが読めてきた。
あとはどんな隠し球を持っているかだけだ。持っていないならこのまま押し切れる。持っている場合ならそれも念頭に置いて攻め方を組み立て追い詰める。
どちらにせよ長期戦になることはないだろう。
復活するプレイヤーと復活せず死んでしまうNPC。
天秤にかけた結果、確実性をより高めるためにルークを生贄にするアール。というかぶっちゃけこの状態だといるだけで邪魔になる可能性もあったので致し方なし。
後日すごく謝罪したみたいです。




