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暁の女帝〜狛犬と異世界革命〜  作者: 春と桜
第四章 革命編

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ただいま

どうもはじめまして春と桜です。

初めての作品なのであたかかく見守って頂けたらなと思っています。よろしくお願いします。

 

「ほな、情報屋さん行きましょか」


「ジャンクだ」


 それが男の返事だった。


 椿は少しだけ目を瞬かせ、それから小さく笑う。どうやら名乗ったらしい。本人なりに筋を通したつもりなのだろう。


 路地裏を抜ける。


 湿った空気は少しずつ薄れ、人々の声が近付いてきた。崩れた建物は減り、代わりに石造りの商店や露店が並び始める。夕方が近いらしく、買い物帰りの人々が荷物を抱えて家路を急いでいた。


 椿たちは人波に紛れながら歩く。


 コマは露店を見つけるたびに目を輝かせ、マメとツブはあちこちへ首を向けていた。スクナは変わらず周囲を警戒し、ルシフェルは静かに街を眺めている。ジャンクも何度か振り返ったが、もう追手の姿はなかった。


 王都の中央広場を抜けたところで、椿が足を止める。


「これ買うてええ?」


 視線の先には中古の荷馬車があった。

 使い込まれてはいるが頑丈そうな造りだ。旅商人が使っていたのだろう。木材は日に焼けているものの、車輪は丁寧に整備されていた。


 椿は値段を聞くなり即決した。


 店主が驚くほどあっさり銀貨を払い、その場で購入してしまう。


 荷物を積み込む。


 マメとツブは早速荷台へ飛び乗り、スクナは呆れた顔でそれを見ていた。ジャンクは黙って荷馬車を眺める。


 どう見ても勢いで買ったようにしか見えなかった。


 それでも誰も止めない辺り、この一行ではよくあることなのだろう。


 やがて王都の大門が見えてくる。

 高く聳える石壁。

 その下を行き交う商人や旅人。


 夕陽に照らされた門は黄金色に輝き、長い影を街道へ伸ばしていた。


 兵士たちは椿たちの姿を見ると敬礼する。

 昨日のダンジョン攻略は既に世界中へ知れ渡っている。


 椿は軽く手を振りながら門を抜けた。

 王都の喧騒が少しずつ遠ざかっていく。

 街道には草原を渡る風が吹いていた。

 空は高く、雲はゆっくり流れている。

 しばらく進んだところで、コマがぴたりと足を止めた。


「じゃあコマ頑張るの!」


 白銀の光が溢れる。


 小さな身体が光に包まれ、その輪郭が大きく膨れ上がっていく。


 次の瞬間。


 そこにいたのは巨大な白獣だった。


 雪みたいな毛並みを風になびかせ、金色の瞳が楽しそうに細められている。神々しさすら感じる姿だったが、本人は尻尾をぶんぶん振っていた。


 コマは荷馬車の前へ回る。

 胸を張る。

 得意げだった。


「まかせるの!」


 荷馬車が動き出す。

 夕陽に染まる街道を、白い神獣が引いていく。

 椿は荷台へ腰を下ろし、吹き抜ける風に目を細めた。

 荷馬車は街道をゆっくり進んでいく。

 王都へ向かった時は最短距離を優先した強行軍だったが、今は違う。人数も増えた。荷馬車もある。無理をする理由はどこにもない。


 コマは大きな獣の姿で先頭を歩いていた。

 白い毛並みを揺らしながら楽しそうに荷馬車を引いている。時折こちらを振り返っては尻尾を振る姿は神獣というより大型犬だった。


 旅は終始賑やかだった。

 原因の大半はマメとツブである。


 二人は相手が誰であろうと構わなかった。スクナにも話しかけるし、ジャンクにも話しかける。ルシフェルにすら遠慮がない。


 最初こそジャンクも迷惑そうな顔をしていたが、数日も経てば諦めたらしい。気付けば二人の相手をしていることも増えていた。


 ルシフェルも同じだった。

 相変わらず何を考えているのか分からない。

 黙って空を見ていることもあれば、ぼんやり景色を眺めていることもある。


 それでも椿とはよく話していた。

 花のこと。

 見たことのない土地のこと。

 会話は多くない。


 だが時折見せる言葉の端々に、不器用な優しさが滲んでいた。

 スクナはそんな様子を見ながら黙って荷馬車の護衛を続ける。


 ジャンクは呆れたようにため息を吐く。

 そしてマメとツブは今日も騒いでいた。

 気付けば、その騒がしさが一行を繋いでいる。


 不器用な者ばかりだった。

 だからこそ二人の無邪気さは、思っている以上に大きかった。


 荷馬車は進む。

 風に揺れる草原の中を。

 賑やかな声を乗せながら。



 旅は2週間ほど続いて、荷馬車は最後の丘を越えた。

 眼下に広がるのは、湖を抱く美しい都だった。

 かつて滅び、長い間眠っていた都。今はそこかしこから木槌の音が響き、修復された家々の屋根には色鮮やかな布が干されている。湖から吹く風が水路を渡り、軒先に吊るされた風鈴を揺らしていた。


 椿は荷台から身を乗り出した。


「……賑やかになりましたねぇ」

「そうだな」


 スクナも小さく頷く。


 以前はボロボロだった都だ。今は妖が屋根の上を走り回り、エルフたちが水路の整備をしている。子どもたちの笑い声まで聞こえていた。


 その時だった。

 見張り台の妖がこちらへ気付く。

 一瞬固まったあと、耳をぴんと立てた。


「女帝様が帰還されたぞぉぉぉぉぉ!!」


 大声が都へ響き渡り、修復作業の手が止まる。

 妖たちが屋根から顔を出す。エルフたちが振り返る。

 そして歓声が弾けた。


「ツバキ様だ!!」

「ツバキ様がお帰りになったぞ!!」

「ご無事だったんですね!!」

「コマ様もいる!!スクナさんも!!マメとツブも帰ってきた!!」


 あっという間に人が集まってくる。

 その中心を突っ切るように二つの影が飛び出した。


「ツバキさぁぁぁぁん!!」

「ご無事でしたかぁぁぁぁ!!」


 マフィとコモンだった。

 二人とも目を潤ませながら全力疾走している。

 椿は思わず笑ってしまった。


「みんなただいま」


「神託でダンジョン攻略だの勇者だの魔王だの流れてくるし、私たち本当に胃が痛かったんですからねぇ!!」

「そうですとも!! 毎日毎日どうなったんだろうって皆で心配してたんですよぉ!!」


 周囲の住民たちも何度も頷いていた。

 その様子を見ていたジャンクは少し目を丸くする。

 誰かの帰還を、こんなにも喜ぶ場所があるのか。


 やがてコモンの視線が荷馬車の後ろへ向く。


「ところで……そちらの方々は?」


 銀髪の男と、見知らぬボロボロの男。何か事情がありそうな風貌であった。

 住民たちも気になっていたらしく、一斉に視線が集まる。


 椿はにこりと笑って唐突に言い放った。


「拾ってきました」


 一瞬だけ沈黙が落ちた。


 ジャンクは頭を抱えた。全然説明になっていない。

 ルシフェルも僅かに眉を動かした。


 だが。


「なるほど」

「ツバキさんらしいですねぇ」

「そうですね」

「ツバキ様ですし」

「拾ったなら家を用意しないとですね」

「歓迎会も必要じゃない?」


 とんとん拍子に話が進んでいく。なんの疑問も抱かずに、受け入れる前提で話している。


 ジャンクが呆然と口を開いた。


「……いや、待て」


 ルシフェルもひどく困惑していた。

 二人は顔を見合わせて、そして同じことを思った。


 ――それでいいのか?


 だが周囲はすでに歓迎する空気になっている。

 椿だけが楽しそうに笑った。


「せやから言うたやろ?あったかい場所やって」


 風鈴が涼やかに鳴る。

 湖から吹く風が都を抜けていく。

 滅びたはずの都は、今日も賑やかだった。

新連載!【獄門道中閻魔大王への道】を始めました!

ギャグ×和風ファンタジーです!よければそちらもご覧ください!


お久しぶりです!少しほのぼの続きますが、お付き合いください!


毎日20時更新です!


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