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暁の女帝〜狛犬と異世界革命〜  作者: 春と桜
第三章 ヤタガラス帝国編

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神獣の衣

どうもはじめまして春と桜です。

初めての作品なのであたかかく見守って頂けたらなと思っています。よろしくお願いします。

 

 ボスの尾が振り下ろされる。轟音とともに石床が砕け、水飛沫が高く舞い上がった。だが、その場所に椿の姿はなかった。白い残像だけが水面を駆け抜ける。


 巫女服の裾が翻る。風が身体を押し、水が足場を支え、光が視界を研ぎ澄ませる。さっきまで重く感じていた身体が嘘みたいだった。椿は自分でも驚くほど自然に駆けていた。


「……ほんまに軽いねぇ」


 コマの周囲で小さな光が跳ねる。風の精霊、水の精霊、光の精霊。目には見えない力が椿を後押ししていた。巫女服はただ動きやすいだけではない。


「ツバキ!」

「その服、精霊さん達も頑張ってるの!」


 椿が笑う。その時、左手の指輪が淡く輝いた。白銀の光が集まり、長弓へ姿を変える。月詠だった。


「オイラサンジョウ!」

「オイラ、スネルトコロダッタ」

「ふふ、頼りにしてるよ」


 月詠が嬉しそうに震える。白銀の弓身を淡い光が走った。椿は弦へ指を添える。心が不思議と落ち着いた。


 その間にもボスは止まらない。巨大な前脚が振り下ろされ、水面が爆発した。椿は横へ流れるように避ける。飛び散る飛沫が頬を掠めた。


「まだまだ元気やねぇ」


 スクナが踏み込む。黒刀が甲羅の継ぎ目へ叩き込まれた。鈍い音が響く。だが浅い。


「ちっ!」


「硬ぇ!」


 ボスが首を振る。スクナの身体が吹き飛ばされた。水を滑りながら着地するが表情は険しい。


「相性最悪だな」

「せやけど、倒せへん相手やないよ」


 椿は矢を放ちながら相手を見続ける。甲羅は硬い。首も硬い。目は素早く、矢を嫌うように動く。

 だが攻撃のたびに防御が消える場所があった。咆哮する時。水弾を吐く時。大きく口を開いた瞬間だけだ。


「ああ」


 椿の目が細くなる。頭の中で点と点が繋がった


「そこやったんやね」


 ボスが咆哮する。水面が震えた。巨大な口が開く。


「スクナ!」


「なんだ!」


「口の中や!」


 一瞬だけ沈黙が落ちる。次の瞬間、スクナが獰猛に笑った。牙を剥く狼みたいな顔だった。


「なるほどな」


「そう来なくちゃ面白くねぇ」


 ボスが突進する。スクナは真正面から迎え撃った。床を砕きながら走り、黒刀を構える。

 衝突寸前。身体を捻る。首の横を駆け上がる。鱗へ指を食い込ませた。


「ガアァァァァッ!!」


 巨体が暴れる。尾が壁を砕く。水柱が上がる。

 だが離さない。右腕一本でしがみつく。左のない肩ごと身体を押し付ける。


「逃がすかよ!」


 黒刀が上顎へ突き刺さる。硬い歯列をこじ開ける。血が飛び散った。


「今だ!!」


 口が開く。喉の奥まで見えた。熱い息が吹き付ける。


 椿は深く息を吸った。周囲の空気が静かになる。精霊達が集まり始めた。


 風が弓へ集まる。水が矢へ絡みつく。光が白銀の筋になって伸びていく。


 月詠が震えた。


「ツバキ!」


「いける!」


「全部乗せる!」


 白銀の光がさらに強くなる。矢は一本ではなかった。精霊の力が重なり、一本の矢の中へ幾重にも圧縮されていく。


 椿は静かに目を閉じた。弓道場で過ごした日々が脳裏をよぎる。息を整える。


 狙う。


 ただ一点。


「月詠」


 静かな声だった。けれど迷いはない。


「力、貸してな」

「マカセテ!」


 弦が引き絞られる。空気が震える。周囲の水が浮かび上がった。

 ボスも危険を察したのか暴れ始めた。だが遅い。スクナが首へしがみついたまま笑う。


「外すなよ!」


「当たり前やろ」


 弦が鳴った。


 放たれた矢は白い流星になった。風を裂く。水を割る。光の尾を引きながら一直線に飛ぶ。


 ボスが最後の抵抗で首を振る。だが避けられない。


 矢は口内へ吸い込まれた。


 次の瞬間、白銀の光が喉の奥で爆発した。甲羅の継ぎ目に亀裂が走る。首が裂ける。


 青黒い血と水が噴き上がった。


「ガアアアアアアアアアッ!!」


 断末魔が響く。巨体が暴れる。壁が揺れる。


 だが止まらない。光は内側から全身を貫いて白い亀裂が走る。


 そして。


 巨大な身体がゆっくり傾いた。


 どさり。


 床が揺れる。


 水面が波打つ。


 静寂が戻った。


 誰もすぐには動けなかった。荒い息だけが聞こえる。しばらくしてスクナが首の上から飛び降りた。


「終わったか」


「終わったみたいやね」


 コマが飛び跳ねる。マメとツブも歓声を上げた。


「勝った!」


「十階層ボスだぞ!」


「やったな!」


 椿は息を吐く。月詠をそっと撫でた。


「ありがとう」


「えへへ!」


「オイラ頑張った!」


 ボスの胸には大きな魔石が残されていた。拳ほどもある青い結晶だ。さらに甲羅の内側からは高級素材も見つかる。


「これは当たりやな」


「かなり高く売れそうだ」


 スクナが魔石を拾い上げる。重い。だが価値は十分だった。


 十階層を突破した証でもある。

 椿はその先を見た。

 ボスの後ろ。

 開かれた通路。


 まだ終わりではない。


「ほな、行こか」



新連載!【獄門道中閻魔大王への道】を始めました!

ギャグ×和風ファンタジーです!よければそちらもご覧ください!


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