戦士長セデス
どうもはじめまして春と桜です。
初めての作品なのであたかかく見守って頂けたらなと思っています。よろしくお願いします。
炎の中を、俺は駆けていた。
焼け落ちる木々の匂いが鼻を刺す。
悲鳴があちこちで上がり、兵たちの足音が森を踏み荒らしていく。
それでも足は止まらなかった。
目の前へ飛び込んでくる兵は、片っ端から斬った。
一人、二人。
もう数えるのも面倒になるほどだ。
「止めろ! あいつを通すな!」
遅い。
槍が伸びる。
剣が振り下ろされる。
魔法が飛んでくる。
だが、どれも俺の足を止めるには足りない。
銀の剣を一閃させるたび、兵が崩れ落ちた。
胴を裂き腕を落とす。
次の一歩の邪魔になるものをただ斬っていく。
その途中で、俺は倒れていた若いエルフを見つけた。
崩れた梁の下でうずくまり、幼い子どもをかばっている。
兵が笑いながら近づいていた。
「動くなよ」
剣を振り上げた、その瞬間だった。
兵の首が飛ぶ。
俺は振り返らないまま、梁を片手で持ち上げた。
「立てるか」
「……は、はい」
「行け。走れ」
その声に、若いエルフはようやく我に返ったようにうなずき、子どもを抱えて逃げていった。
守るべき者を守る。
それだけだ。
だが、森の奥へ走るほど、戦場はさらに酷くなっていく。
その中で、俺は里長を見つけた。
肩が裂け、衣も破れ、ふらつきながらどこかへ向かっている。その目は死んでいなかった。
「里長」
駆け寄ると、里長は一度だけこちらを見た。
「セデスか」
「無茶をするな。背負う」
言い返す前に、俺は里長を肩へ担いだ。
「すまん、祠へ頼む…」
「謝るな」
そのまま、俺は炎の中を駆けた
剣振るうたびに一瞬で道が開く。
何百人斬ったかはわからない。
途中から数えるのをやめた。
ようやく祠へたどり着き、里長が震える手で何かを掴んだ。
黒い刀だった。
見た瞬間、本能がざわつく。
禍々しい。
まともなものじゃない。
だが、里長はそれを抱えたまま、静かに言った。
「……私は一人で大丈夫だ」
「何を言っている」
「行け」
短く、強い声だった。
里長は、まっすぐ俺を見た。
「コマ様を守れ」
あの方を守ることが今一番大事なのだと、里長は言っている。
俺は一瞬だけ黙った。
だが、次の瞬間にはうなずいていた。
「……分かった」
里長は小さく頷く。
「頼む」
それだけで十分だった。
俺は踵を返し、再び走り出した。
今度は、コマ様のいる家へ。
道中でも兵は絶えなかった。
槍が突き出され、魔法が飛び、怒号が森を揺らす。
俺はただひたすらに銀の剣を振るった。
足止めをしてくる邪魔になるものを、片っ端から切り捨てる。
二千は倒しただろう。
そのくらいの手応えは、とうに超えていた。
燃えた枝が落ち、黒い煙が森を覆っている。
その中を抜けた先で、ようやく見えた。
他の家よりも少し頑丈に作られた客用の家は避難所になっていた。
怪我人。
子ども。
老人。
戦えない者。
傷ついた者たちが家の中へ押し込まれるように集まり、その外側を、まだ戦えるエルフたちが囲んでいる。
肩から血を流しながら弓を引く者。
片腕で剣を握る者。
膝をつきながら、それでも前へ出る者。
誰も下がっていない。
「通すな!!」
「コマ様を守れ!!」
「子どもたちを下げろ!!」
怒鳴り声が飛ぶ。
兵が押し寄せるたび、誰かが体を張って受け止める。
倒れれば、別の誰かがその場所へ立つ。
崩れそうになれば、後ろから支える手が伸びる。
血まみれだった。
それでも、誰も諦めていない。
コマ様、子ども、老人、家族を全員で守っていた。
その光景を見た瞬間、胸の奥がすっと冷えた。
静かな怒りだった。
目の前では兵士がエルフを切りつけようとしている。
俺は地面を蹴った。
銀閃。
兵の胴が斜めに裂ける。
返す刃で隣の喉を切り裂き、そのまま三人目の首を落とした。
血飛沫が舞う。
兵たちがようやくこちらを見る。
「な、なんだあいつ……!」
「化け物だ!!」
家の前にいたエルフの一人が、目を見開く。
「……戦士長」
声が震えていた。
次の瞬間。
「戦士長だ!!」
叫びが上がり空気が変わった。
「戦士長が来たぞ!!」
「俺たちは必ず助かる!持ちこたえろ!!」
「陣を組み直せ!!」
士気が上がり崩れかけていた隊列が、一気に立て直されていく。
負傷した者が下がり、弓兵が後衛へ回る。
前衛が盾のように並ぶ。
皆の目に、光が戻る。安心したのだ。俺が来たことで。それが分かった瞬間、さらに胸の奥が熱くなる。
「前を空けるな!!」
「皆とコマ様を守れ!!」
エルフたちの声が森へ響く。
その前で、兵たちは明らかに怯み始めていた。
「なんだよこいつら…!」
「止まらねぇぞ!!」
「化け物か!!」
俺一人じゃない。
ここにいる全員が守るために立っている。
兵が再び突っ込んでくる。
俺は剣を構えた。
「下がるな」
「俺が前を押し返す」
次の瞬間、地面を蹴った。
銀閃が走り、兵が吹き飛んだ。
そのまま前線を切り裂くように踏み込んだ。
ズゥン……ッ。
重い音が響いた。
空気が変わり兵たちが左右へ割れ一人の男が歩いてきた。
全身鎧。巨大な剣。一目で分かった。
強い。
男は倒れた兵たちを見下ろし、それからゆっくり俺へ視線を向けた。
「……なるほど」
「貴様が戦士長か」
俺は剣を構え直す。男が巨大な剣を肩へ担いだ。
「俺は騎士団長コフリンズ」
鋭い目が俺の背後を見る。
コマ様を見ていた。
「その白い獣、こちらへ渡してもらおう」
胸の奥で、怒りが静かに軋む。
俺は一歩前へ出た。
「断る」
俺は銀の剣を静かに向けた。
「俺の名前はセデス」
銀髪が炎に揺れる。
「この里の戦士長だ。ここから先へは、一歩も通さん」
書き溜めはありますが、暫くは様子を見ながら1日1話から2話を目安に投稿しようと思っています!
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