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神隠しで異世界に来た私が獣を守るため人間と敵対すると決めるまで  作者: 春と桜
第一章

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白き獣と、その先へ

どうもはじめまして春と桜です。

初めての作品なのであたかかく見守って頂けたらなと思っています。よろしくお願いします。

次の瞬間。


短剣が迷いなく喉元へ突き込まれ、確実に息の根をとめた。


男の目が見開かれる。


声にならない音が漏れ


そのまま力尽きた。


椿は息一つ乱さず、小鳥へと視線を落とす。


そして、白い獣へ。


さっきまでの気配が嘘みたいに、森は静かだった。


小さな体。けれど、さっきの動きは軽くない。ただの獣ではないことは最初から分かっていた。


「……あんた、なかなかやねぇ。助けられてしもた」


やわらかく言うと、白い獣はじっと椿を見上げた。淡い色の瞳がまっすぐこちらを映している。逃げるでも媚びるでもなく、ただそこにいる。


椿は少しだけ目を細めた。


「言葉、分かってはるのやろか」


試すように呟くと、獣の耳がぴくりと動く。


思わず小さく笑う。


「……賢い子やね」


そのまま視線を外し、小鳥の亡骸へと歩み寄った。

土の上に横たわる小さな体を見下ろししばし黙る。


やがてしゃがみ込み、近くの柔らかい土を手で掬う。指先が汚れるのも気にせず静かに穴を掘っていく。


大きくはない。けれど、この体を納めるには十分だった。


そっと小鳥を抱き上げる。

「……もう、追われることもないよ」


小さくそう言って、土の中へと横たえた。


その上に静かに土をかぶせていく。


最後に手を合わせた。


椿は立ち上がり軽く手を払った。


ふと横を見ると白い獣がすぐそばにいた。


いつの間にか距離が縮まっている。


「ついて来はるつもり?」


問いかけると、小さく鳴いた。


椿はほんのわずかに息をついて、目を細める。


「……仕方のない子やね」


そのまま少しだけ考えてから、視線を獣に戻す。


神社で見た、あの石の姿が重なる。


「……コマ」


ぽつりと落とす。


「狛犬やったんやろ。ほな、そのままでよろし」


白い獣、コマの耳が動く。


次の瞬間、すっと椿の隣に並んだ。


その距離が不思議と自然に感じる。


椿はわずかに笑った。


「気に入ったんやねえ」


コマが小さく鳴く。


椿はゆっくりと周囲を見渡した。動くものはない。風の流れも、もう乱れていない。


「……さて」


短く息を吐き、倒れた男たちへ視線を落とす。


一人の懐を探る。革袋。中には硬いパンと干し肉、それから硬貨がまとまって入っていた。


指先で一枚弾く。乾いた音が返る。


「……銅やろか」


もう一枚。わずかに重い。


「……銀、かしら」


さらに奥から鈍く光る金が覗いた。


「……よう持ってはること」


男たちから集めた貨幣を軽く数える。金貨が二枚、銀貨が十、銅貨は三十ほど。この世界の価値はまだ分からないが、しばらく困ることはなさそうだ。


袋ごと肩にかける。


別の男からは小ぶりの弓と矢筒を見つけた。


椿は弓を手に取り、しなりを確かめ、弦を引く。張りは十分。


指先に馴染む感覚に、ほんのわずか目を細めた。


幼い頃から引き続けてきた弓だ。的に向けるよりも先に、身体がどう引くかを覚えている。


「……悪うないなあ」


そのまま背に回す。腰の短剣は状態の良いものを帯に差し替えた。


「使えるもんは、遠慮のう使わせてもらいます」


それ以上は言わなかった。

椿は男たちに視線を落とすこともなく立ち上がる。


白い獣が少し離れた場所からこちらを見ている。


椿は視線だけ向け、わずかに口元を緩めた。


「ほな、行こか。コマ」


歩き出す。柔らかな足音が迷いなく後ろについた。



森は、静かではなかった。


踏み入れてすぐに分かる。気配が多い。息を潜めたもの、こちらを窺うもの、明確な敵意を向けるもの。


椿は歩みを止めない。ただし呼吸は落とし、重心を低く保つ。


そのとき、茂みが揺れた。


小さな影が飛び出す。


——さっきと同じ、醜い人型。三体。


椿の視線がわずかに細くなる。


「……群れで来はるのかいな」


一体が飛びかかる。直線。


椿は半歩だけ踏み込み、体を捻る。腕を取り流す。


勢いが横へ滑り、重心が崩れる。


その瞬間、白い影が地を裂いた。


——コマ。


喉元へ迷いなく食らいつく。鈍い音と共に動きが止まった。


残りの二体が一瞬怯む。


椿は間合いを取り弓を構えた。


放つ。


矢はまっすぐ、一体の目を貫いた。


もう一体。


動く前に距離を詰める。踏み込み、足を払う。崩れたところへ短剣を突き込んだ。


冷酷な瞳に迷いはない。確実に息の根を止めた。



血の匂いが広がる。


椿は短く息を吐いた。


「……ほんま、面倒なとこやね」


視線をコマへ向ける。白い毛にはほとんど血が付いていない。


「……よう分かってはる」


コマが小さく鳴く。そのまま自然に隣へ戻ってくる。


椿は軽く頷いた。


「近いのは任せるわ。遠いのはうちがやる」


「……ええ連携やね」


言葉にすると、ほんの少しだけ実感が宿る。



その後も、森は牙を剥き続けた。


茂みから飛び出す魔物、木の上からの奇襲、低く這う影。


椿はすべてを淡々と捌く。


流し、崩し、仕留める。


遠ければ射抜き、近ければいなす。


コマもまた、呼吸を合わせるように動いた。


一人と一匹に言葉はない。



やがて木々の密度が薄くなり光が差し込む。


森の終わりだ。


椿は足を止めずそのまま外へ出た。


視界が開ける。


その先に——街があった。


書き溜めはありますが、暫くは様子を見ながら1日1話から2話を目安に投稿しようと思っています!


応援よろしくお願いします!

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