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神隠しで異世界に来た私が獣を守るため人間と敵対すると決めるまで  作者: 春と桜


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2/16

見過ごせないもの

どうもはじめまして春と桜です。

初めての作品なのであたかかく見守って頂けたらなと思っています。よろしくお願いします。

体感的には15分ほど歩いただろうか、

森は相変わらず静かすぎた。風はあるのに音が続かない。どこかで途切れているような不自然な静けさだ。


椿は足を止め耳を澄ます。助けを呼ぶような掠れた鳴き声。微かに血の匂いもした。


ほんの一瞬だけ迷いがよぎる。

椿は昔から第六感が鋭い。

関わればこの世界の闇に触れる気がした。

それでも…

「…見過ごすんは、性に合わへんのよ」

小さく呟いて歩き出す。白い獣も黙ってついてくる。


木々を抜けた先にいたのは小さな鳥。手のひらほどの体。羽は泥と血にまみれ、呼吸は浅く、体は小刻みに震えている。

椿の目が静かに細くなる。

「……ひどいこと、しはる」


そっと近づくと、小鳥の体が強ばった。逃げたいのに動けない。強い恐怖だ。椿は手を止めた。無理には触れない。ただそこにいた。

「……取って食いやしませんよ」


白い獣が前に出て、小鳥のそばへ寄り添うように身を寄せて小さく鳴いた。


意味は分からないがそれでも何かを伝えているようだった。小鳥の震えが少しだけ和らぎ、警戒が解ける。

「……ええ子やな」


今度はそっと手を伸ばす。小鳥は拒まない。そのまま掬い上げた。本来は美しかったであろう小鳥の体はあまりにも軽かった。


その瞬間、頭の中にイメージが流れ込んでくる。小鳥の記憶だろうか?

空を飛ぶ感覚。風の匂い。次の瞬間、想像を絶するような恐怖。追われて逃げる、捕まる。男たちの笑い声。痛み。じわじわと侵される体。動けない。ただ苦しい。ただ怖い。生きたい。


小鳥の呼吸がさらに弱くなった。終わりが近いのだ。椿は静かに包み込んだ。

「……もうええよ」


小鳥の瞳がわずかに動き椿を見て一粒の雫を落とし、そのまま力が抜けた。


椿は小鳥を地面にそっと置き、静かに手を合わせた。

「……よう頑張ったな」


背後で枝が鳴った、男たちの声だ。


「おい、いたか?」

「ああ、いたいた…って、なんだぁ?女じゃねえか!」

「ははッ!すげえな上玉だ。こんなとこで当たり引くか普通」

「顔もそうだが、体もいい。上に流せば相当な値になるぞ」

「いや待て!!それよりあの白いの見ろよ。真っ白だぞ。幻獣か?いや、それ以上かもしれねえな」

「女と一緒に持って帰るか。暇つぶしがすごい収穫になったなあ!!」

「使えねぇ鳥にも使い道があったってわけだ」


笑い声が重なる。


椿の動きがほんの一瞬止まった。

白い獣が小さく唸り声を上げる。

怒っているのだ。


椿はゆっくりと立ち上がり微笑んでいた。けれど目の奥だけが冷え切っている。


「よう喋らはりますねぇ、お誘いはありがたいんやけど…」


視線がまっすぐに向けられる。


そしてほんの少しだけ首を傾げて言った。


「——お断りさせてもらいますわ」


「もう少し、まともなご趣味をお持ちになった方がよろしいんやないですか?」

にこりと微笑んだ。


「ツレねぇこと言うなよ!珍妙な服は俺の趣味じゃねえが、異国の者か?高値で売れそうだ。大人しくすれば優しくしてやるよ」

一人がにやつきながら距離を詰めてきた。


「お誘いはありがたいことやけど、お兄さん方はうちの好みやないのです」


男が鼻で笑う。


「気が強い女は嫌いじゃあねえんだ」


男が椿に触れようとしたその瞬間。


男の腕が、逸れる。


触れたかどうかも分からないほど自然に。


体勢が崩れ、そのまま地に叩きつけられる。


「がっ……!」


椿はわずかに首を傾げる。


「……手ぇの出し方、ずいぶんとお行儀よろしないこと」


残りの男たちの空気が変わる。


「……やれ」


一斉に動きだした。


椿に向かって剣が振り下ろされる


速い


椿は半歩だけ退く。


触れる。


それだけで力が流れる。


軌道が狂い、身体が崩れた。

男の急所を正確にねらい蹴り上げ倒れたところを、ためらいなく踏み潰した。不快な感覚が足に残る。

もう再起不能であろう。

椿は男が持っていた短剣を拾い構える。


「ックソ女!」

男たちは怒り狂ったように踏み込んできたが

一人、また一人と地に沈んでいった。


「……雑やね」


小さく零した。


残るは一人。


息を荒くしながら後ずさる。


「な、なんなんだよお前……!」


椿はゆっくり歩み寄る。


逃げ道を塞ぐように。


「人に値段つけはる前に、ご自分の値打ちを量らはったらどうです?」


にこりと笑った。


「まあ、聞くまでもなさそうやけど」


男が叫びながら剣を振り上げた。


その瞬間


死角に回ろうとした別の男が、白い影に喉元を裂かれた。


音もなく崩れ落ちる。


椿は振り返らない。


ただ、わずかに目を細め笑った。


「……ええ子やねぇ」


最後の男の顔が歪む。


「ば、化け物……!」


椿は静かにしゃがみ込んだ。


男と目線を合わせて

「えらい言いようやこと」


くすりと笑った。


男の手が震える。


「ま、待て!!悪かった…もうやらねぇよ!」


椿は小さく頷き


「それは、ようございました」


やわらかく微笑んだ。


「——せやけど」


声は変わらない。


「聞いてしもたもんは、なかったことにはできまへんの」


視線だけが冷える。


「小鳥さんのこと暇つぶしや、言うてはりましたやろ?うち、弱いものいじめは嫌いなんです」


沈黙。


男の喉が鳴る。


椿は、ゆっくりと短剣を持ち上げた。


無造作に見えて、狙いは正確。


距離はもうない。


「——ほな、そろそろ終いにしときましょ」


書き溜めはありますが、暫くは様子を見ながら1日1話から2話を目安に投稿しようと思っています!


毎日20時更新です!


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