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いずれ最強の女、白い狛犬と獣人たちの味方をしていたら世界に喧嘩を売ることになりました  作者: 春と桜
第一章

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命の価値

どうもはじめまして春と桜です。

初めての作品なのであたかかく見守って頂けたらなと思っています。よろしくお願いします。

「……これ、半分やる」


「え?」


「いいから食え」


不器用な優しさに気づき椿は少しだけ微笑んだ。


「スクナの分やろ」


「俺はいい」


「よくないやろ」


やさしく返す。


「……ちゃんと食べて。二人とも」


スクナが小さく舌打ちする。


「……分かったよ」


仕方なさそうに、自分の分を口に運ぶ。


コマはその間にも、もくもくと食べている。


「……ほんまによぉ食べるね」


「……食いすぎだろ」


「元気な証拠やなあ」


コマは最後の一つにいきかけて、


一瞬だけ、椿を見る。


「……どうぞ」


それで、ぱくり。


「……結局全部いくのかよ」


スクナが呟き、椿が笑った。


コマは満足そうにその場でくるっと丸くなる。


数秒後にはもう寝ていた。


「……早」


椿が小さく笑う。


「ええ仕事してはるわ」


スクナがちらりと見る。


「……食って寝るだけだろ」


「それでええんよ」


少しだけ静けさが落ちる。


「……なあ、聞いてもええ?」


エルフが頷く。


「この世界のこと、ゆっくりでええから教えてもらえます?」


「望むなら」


「まず、この世界のことについて説明しよう」


エルフが穏やかに口を開く。


「この世界には、人間以外にも種族が存在する。私たちのようなエルフ、ドワーフ、そして獣人」


椿は静かに聞いている。


「見た目だけでなく、寿命や身体能力、魔力の質も異なる」


「同じようには扱われてへんのやね」


「その通りだ」



「人間は、それらを“物”として扱う」



スクナの視線が落ちる。



「売る、買う、使う。価値があれば保有する対象になる」


「価値がなければ?」


「切り捨てる」


淡々としているのに重い。


椿は少しだけ目を伏せる。


「分かりやすいこと」


エルフは続けた。


「獣にも段階がある。魔力を持つ存在の中で、力によって区分される」


「段階、いうと?」


「幻獣、聖獣、神獣だ」


焚き火がぱち、と鳴る。


「幻獣は現実に存在する。狩られ、素材として扱われる。貴族たちの間では珍しいほど権力の象徴として扱われる。」


「聖獣は象徴だ。国や王族が保有し、恩恵を得るとされている」


椿がわずかに首を傾げる。


「恩恵、いうのは」


「加護、繁栄、戦の優位性……人間はそれを信じ、実際に利用している」


「…そして神獣」


空気が、少しだけ変わる。


エルフの声がわずかに低くなる。


「伝記にのみ語られる存在だ」


「人間はそれを探し続けている」



「血眼になって」


静かに落ちる言葉。


「手にした者は、世界を手に入れるとされているからだ」


焚き火の音だけが残る。


そのとき、


「……ぐぅ」


小さく、控えめに鳴るコマの腹。


椿がふっと目を細める。


「ほんまに食いしん坊やなあ」


責めるでもなく、ただやさしく撫でた。


エルフがわずかに視線を向ける。


「その状態は自然だ」


「自然?」


スクナが低く聞く。


「力の変化の前触れだ。大きな力を持つ存在ほど、発現の前に強く消耗する」


「……だから腹が減るのか」


「そうだ。抑えきれていない証だ」


椿は静かにコマを見る。


「ほな、これも大事な過程なんやね」


そのとき、奥から気配が近づく。


同じエルフが皿を運んできた。さっきより量が多い。


スクナが眉をひそめる。


「……まだ出てくるのか」


エルフが淡々と答える。


「先ほどの食事では不足だと判断してあらかじめ用意させていた」


椿が少しだけ目を細める。


「よう気ぃついてくれはるね」


やわらかく笑う。


「ありがと」


皿が並ぶ。


温かい湯気が立つ。


コマの尻尾がゆっくり揺れる。


「ほな、もう一回いただきましょか」


椿が静かに手を合わせる。


スクナは少しだけ黙って、それから皿に手を伸ばす。


「……食っとく」


ぶっきらぼうに言って口に運ぶ。


さっきより、ちゃんと食べている。


コマも、今度は少しゆっくり食べている。


椿はそれを見て、ふっと笑う。

火の揺れる音と、静かな食事の気配。


その中にさっき聞いた話だけが重く残っていた。


湯気の残る皿の間で、エルフが静かに口を開く。


「では、魔法について話そう」


椿が顔を上げる。


「お願いします」


「この世界において魔法は特別なものではない。誰もが扱える力だ」


椿は小さく頷く。


「どう扱うものなんやろ」


「魔力を使う。体の内に流れている力だ。それを外へ出し、形にする」


「……内に、あるんやね」


「火や水、風や土。属性として発現させるのが基本になる」


椿は少し考えるように目を細める。


「……うちには、その内にある力いうのが、よう分からへんのやけど」


エルフがわずかに頷く。


「それは自然だ。迷い人は、この世界の生き物とは違う」


椿の視線が静かに上がる。


「迷い人は、魔力を持たないと言われている」


一瞬、空気が静まる。


「……そうやろなあ」


小さく息を落とす。


「感じへんのやから、あるほうが不思議やね」


エルフは続ける。


「だが、代わりに別の性質を持つ」


椿の目がわずかに細くなる。


「別の?」


「外にある魔力を取り込み、自分の力として変換することができる」


椿はわずかに首を傾げる。


「……外のものを使うんやね」


「そうだ」


「通常の者は、自身の魔力を使う。だが迷い人は違う。外界と直接繋がる」


椿は少しだけ考えて、それから静かに言う。


「ほな、自分の中にあるもんを使うんやなくて……外から借りてくるようなもんなんやろか」


エルフがわずかに目を細める。


「近い」


「ただし、借りるではない。流すだ」


椿がその言葉をなぞる。


「流す……」


「自分の中に溜めるのではなく、通して形にする」


椿はゆっくりと息を吐く。


「……なんとなく、分かる気がするわ」


視線が少しだけ遠くを見る。


「せき止めたら溢れるし、流したら形になる……そんな感じやね」


エルフが頷く。


「その理解でいい」


椿はふっと微笑む。


「初めて聞く話やのに、不思議と馴染むもんやねえ」


やわらかい声。


「ほな、その流し方教えてもらえるやろか」


「望むなら」

本日3話投稿です!


夜20時頃もう一話投稿します!


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