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神隠しで異世界に来た私が獣を守るため人間と敵対すると決めるまで  作者: 春と桜


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ここにいる

どうもはじめまして春と桜です。

初めての作品なのであたかかく見守って頂けたらなと思っています。よろしくお願いします。


「……ぐぅ……」


「……。」


「……ぐぅぅ…」


「……起きたのか」


咥えたまま低く漏れる。


どれだけ進んだか分からないが、すでに日は昇っていた。

やがて水の音が聞こえた。


小さな川だがその水は澄んでいる。

そのそばには岩陰の洞穴があった。


スクナはそこへ入り込み、ようやく椿を下ろした。


続けてコマもそっと地面に置く。


その場に座り込む。息が荒い。傷が焼けるように痛い。


それでもすぐに顔を上げる。


椿の呼吸は浅いが確かに続いている。

血も止まっていた。


「……生きてる」


次にコマを見た。


「……ぐぅぅ……」


腹は正直だった。


「……はぁ」



スクナは立ち上がりふらつく足を引きずるようにして外へ出た。


川へ向かう。自分の傷を洗ってから、右手だけで魚を追う。何度も逃げられるがそれでも繰り返す。


やがて一匹を捕まえた。


洞穴へ戻り魔法で火をつけた。


魚を焼く。少し焦げたがいいだろう。

料理なんてしたことがない。


コマの口元へ差し出す。


「……食え」


焦げた匂いに顔を顰められた。


「文句言わずにくえ」


わずかに口を開く。


一口飲み込むごとに


「……ぐぅ」


「……ぐぅぅ」


腹の音は止まらない。


「……食ってるだろ」


小さくぼやく。


やがてコマの呼吸が少しずつ落ち着いてくる。

傷は塞がりかけているが、スクナは気づかない。


視線を椿へ向けた。


静かな呼吸。顔色はまだ悪い。


壁に背を預け、スクナはその場に座り込んだ。


何も言わずにただ、そこにいた。


水の音だけが流れる。


次に目を閉じたときには抗う間もなく意識が沈んでいた。


やがて。


椿の指が、わずかに動いた。


その微かな音にスクナの視線が跳ねる。


コマも顔を上げる。


ゆっくりと、椿の目が開く。


ぼんやりとした視線が揺れて、やがて焦点を結ぶ。


目の前にあるのは、スクナとコマ。


二人とも、心配そうに覗き込んでいた。


その顔を見て、椿はほんの少しだけ目を細める。


それから、ふっと笑った。


血の気のない唇で、それでもやわらかく。


「……おはようさん」


かすれた声だがどこか安心させる響きだった。



「……寝てろ」


ぶっきらぼうだった。


椿は少しだけ目を細める。


「起きたばっかりやのに、えらいこと言うね」


「死にかけてたやつが言うな」


「ちゃんと戻ってきてるやろ」


軽く返すが声はまだ掠れていた。


スクナがちらりと見る。


顔色は悪いままだが、意識ははっきりしている。


「……無理に動くな」


少しだけ言い方が変わる。


椿はその変化に気づいたみたいに小さく笑った。


「分かった、今日は大人しゅうしとく」


そう言って力を抜くように横になる。


無理はしていない。


それが分かってスクナは何も言わなかった。


コマがその横で、もぞもぞと動く。


「……ぐぅ」



椿がくすっと息をこぼす。


「ほんまによぉ鳴く子やね」


「……ぐぅぅ」


その瞬間、


「……っ、」


スクナの口から短く笑いが漏れた。


自分でも意外だったらしく目を少し見開いて一瞬止まる。


それから、小さく息を吐く。


「……仕方ねぇやつだな」


椿はそれを聞いてほんの少しだけ目を細めて、ただその空気を大事にするみたいに受け取った。

椿はゆっくりと手を伸ばして、コマの頭を撫でた。


「頑張ってくれたんやねえ、ありがとう」

コマはその手に頬を寄せる。


「スクナもやよ。その傷…怪我してはるんやろ?」


「かすり傷だ」


「無理、したらあかんよ。でも…守ってくれてありがとうな」


「……。」


少しだけ静かな時間が流れ水の音だけが響いている。


椿は目を閉じたまま少しだけ息を吐く。


「うちも少し休めば、また動けるから」


スクナは何も言わない。


椿がもう一度、小さく言う。


「……助けてくれて、ありがとう」


スクナの指が、わずかに止まる。


「……礼言う元気あるなら寝てろ」


ぶっきらぼうな返しだが、さっきより言葉も表情も柔らかった。


「はいはい」


椿は少し笑いながらそのまま目を閉じた。

呼吸がゆっくり落ちていく。


スクナは壁にもたれて座り直す。


視線は椿とコマに向いたまま静かな時間が続く。


しばらくして、椿の呼吸がわずかに乱れた。

スクナの眉が動く。


「……おい」


返事はない。額に手を当てると火傷しそうなほど熱かった。


「……無茶しやがって」


コマがそっと椿のそばへ寄る。椿の指が、わずかに動いた。


「……スクナ」


かすれた声。


スクナはすぐ顔を寄せる。


「ここにいる」


椿はぼんやりしたまま少しだけ笑った。


「……そっか」


そのまままた目を閉じる。


スクナは一度だけ息を吐き、布を濡らして額に当て直す。


「今は休め」



少しして、スクナは立ち上がった。

椿を見てから、コマに視線を移す。


「……行くぞ」


「ワンッ!」

書き溜めはありますが、暫くは様子を見ながら1日1話から2話を目安に投稿しようと思っています!


この中に作者と共にスクナ推してくれる人はいますか…?笑


活動報告でもお知らせしましたが、ゴールデンウィーク期間中作者は旅行中の為お休みさせて頂きます!

6日20時から再開予定です!

良いゴールデンウィークをお過ごしください!✨

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