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神隠しで異世界に来た私が獣を守るため人間と敵対すると決めるまで  作者: 春と桜
第一章

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13/23

覚醒の兆し

どうもはじめまして春と桜です。

初めての作品なのであたかかく見守って頂けたらなと思っています。よろしくお願いします。


脇腹から滲む血が広がっていく。


「……くそッ!」


服の端を噛んで裂き、右手だけで布を押し当てる。片手ではやりづらい。それでも力を込めて押さえ続ける。


「止まれ……止まれよ……」


布がすぐに赤く染まる。それでも離さない。


そのとき、足元で小さく気配が揺れた。


コマだった。足を引きずりながらそれでもこちらへ近づいてくる。


「……無理に動くな」


だがコマは止まらない。


ふらりと体が揺れる。倒れかけるその瞬間スクナは咄嗟に体を寄せ、片腕で受け止めた。


その拍子に頬を舐められる。


「……?」


遅れて、頬のヒリつきが消えていることに気づく。


視線を落とすとコマがこちらを見上げていた。


「くぅん」


視線は椿へ向いている。


「……あっちか」


言葉にするより早く理解した。


コマは腕の中から身をよじり椿の方へ行こうとする。


スクナは舌打ちしながらもすぐにコマを椿のそばへ下ろした。


コマはふらつきながらも近づきそのまま椿の傷口へ顔を寄せる。


淡い光が滲んだ。


強くはないが澄んだ水のような静かな光。


完全には塞がらない。

それでも流れていた血が止まる。


スクナは何もできずそれを見ていた。


やがて光は消え、コマの体が崩れ落ちた。


「……おい」


倒れ込む体を片腕でなんとか支える。


そのとき。


「……ぐぅぅ……」


小さく場違いな音が響いた。


スクナは一瞬だけ固まる。


コマの腹が鳴っていた。


「……なんだそれ」


思わず漏れる。


だが考えている余裕はなかった。


血はもう流れていない。

——なら、ここにいる理由はない。


スクナはまずコマを口で咥えそのまま椿を背負う。


片腕と体で支える。キツイがそれでも離さない。


疲労で足が震えるがそれでも前に出た。


森へ踏み込み再び走り続ける。

枝を踏む音は消え、背後の空気が急に重くなる。

追ってきている。

しかも一人や二人じゃない。

足を止めた時には、もう遅かった。


スクナは椿を木の根元へ下ろし、コマもその横へ寄せた。

短剣を抜き状態を確かめる。

刃は欠けているが、まだ使えるだろう。

右手だけで握り直し、重心を落とす。

息は荒い。さっきの交戦で体力はかなり削られていた。それでも、ここでやるしかない。


草を割って現れたのは四つの影だった。数は減っている。残った連中は、逃げ遅れた獲物を仕留める目をしていた。


「逃げ切れると思ったか」


低い声がした。


「……思ってねぇよ」


返す声も掠れている。

囲まれた。前に一人、左右に一人ずつ、後ろに一人。動きが揃っている。初手で崩す気だ。


最初に来たのは左側にいた男だった。左から切り上げが来る。そういう癖なのだろう。

踏み込みと同時に刃が上へ跳ねる。スクナは半身で外した。

運足は小さく速い。体を滑らせるようにずらし、相手の懐へ入る。

すれ違いざまに短剣を走らせた。喉だ。血が弾けて倒れる音より早く、次の気配が入る。


正面から突かれる刃を、短剣の腹で軽く当てて軌道をずらす。真正面で止めるよりその方が早い。

体をひねって内側へ入ると、距離が一気に詰まった。脇下へ押し込む。鈍い抵抗があったが気にせず引き抜いた。


後ろの気配が動いた。振り向くより早く、足を踏み込み、背を見せないまま体を回す。斜め後ろからの斬撃が肩を掠めた。浅く血が出た。だが止まらない。ここで下がれば、連中の間合いに飲まれる。


前に残った二人のうち一人が、低い姿勢のまま滑り込んできた。

構えが違う。無駄がない。こいつが一番厄介な相手だろう。横薙ぎを短剣で受ける。重い。腕が痺れる。受け切らず、刃の角度を変えて流す。続けて上から下、横、足元。切り替えが速い。削りに来る型だ。


スクナは下がらなかった。下がれば詰められるのが分かっていた。だから半歩前へ出た。軌道を紙一重で外し、頬に触れる程度で済ませる。熱いものが流れた。だが関係ない。今は内側だ。間合いの中に入れば、剣の長さは邪魔になる。


短剣を逆手に持ち替えた。喉元へ突き上げたが、弾かれ硬い衝撃が手に返った。刃が軋む。嫌な感触だ。スクナはもう一歩踏み込んだ。今度は胴へ。相手は半身でかわし、返しの斬撃を合わせてくる。避けきれなかった。腹を裂かれる。熱が一気に広がる。遅れて衝撃が来た。


短剣に負荷が乗り乾いた音がして刃が折れた。


その一瞬の遅れが、致命的だった。男の剣が落ちてくる。スクナは身を捻って直撃を外したが、衝撃で体勢が崩れそのまま地面へ叩きつけられた。

肺が空気を拒み視界が揺れて立ち上がる為の力が入らない。


「くそッ…」


視界の端に椿とコマがいた。


ここを抜かせるわけにはいかない。


そんな風に考えている自分に思わず苦笑いが漏れる。


「女と白いのだけで十分だ。コイツは殺す」


男が近づいてきた。

剣を振り上げる動きが、妙にゆっくり見える。

ここで終わりなのか。



初めて失いたくないものができた。

守りたいと強く願った。

でも俺は無力だ。

弱い自分に反吐が出る。


霞んでいく視界の中、クソみたいな人間どもに奪われ続けた記憶が、やけに鮮明に浮かぶ。

それでも頭に残ったのは、皮肉にも人間の顔だった。椿の笑顔。温かい食事の匂い。頭を撫でる手の重さ。


……もう二度と失わねえ。壊されてたまるか。


もう誰にも——


奪わせねぇ!!



息が焼け血の味が広がる。

身体の奥で何かが噛み合った音がした。


——ギフト発生条件を満たしました

——第一段階認証

——覚醒を承認します





書き溜めはありますが、暫くは様子を見ながら1日1話から2話を目安に投稿しようと思っています!


スクナさん頑張ってますね!!戦闘シーン引き続き続きます!


毎日20時更新です!


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