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神隠しで異世界に来た私が獣を守るため人間と敵対すると決めるまで  作者: 春と桜


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狩るものと狩られるもの

どうもはじめまして春と桜です。

初めての作品なのであたかかく見守って頂けたらなと思っています。よろしくお願いします。

街の門を抜けた瞬間、空気が変わった。石の匂いが消えて、土と草の匂いが濃くなる。人の気配は遠のき、その代わりに、何かが潜んでいる気配だけが残っていた。


椿は歩みを緩めず、視線だけで周囲をなぞる。


「……外は外で、ええ空気してはりますね」


やわらかい声とは裏腹にその目は冷静だった。


スクナが小さく鼻を鳴らす。

「気ぃ抜くな。ここはもう街の外だ」


「分かってますよ。そのために来たんやしね」


前を行くコマの耳がぴくりと動く。

完全に警戒してる動きだった。


少し歩いたところで椿がふと思い出したように口を開く。


「そうや、ひとつ聞いてもよろしい?」


「なんだ」


「さっきの情報屋さんのことやけど。よう知ってはりましたね」


スクナは前を向いたまま答えた。


「……知ってたわけじゃねぇ」


「ほな、どうして?」


「昔いたところでな。ああいう連中の話くらいは耳に入る」


椿は少しだけ首を傾げる。


「仲間内、いうやつやろか」


スクナは小さく舌打ちした。


「……そんな綺麗なもんじゃねぇよ。奴隷商人とか、裏で動いてる連中が使う情報屋だ。顔も名前も変えるが、長く生きてるやつはだいたい決まってる」


「なるほど。便利やね、そういう知識は」


「……役に立つかどうかは使い方次第だ」


そのとき、コマが低く唸った。


空気が変わる。


椿の視線がわずかに細くなる。


「……来はるね」


次の瞬間、草むらが弾けた。小型の魔物が三体、一斉に飛び出してくる。歪んだ人型、一直線に椿へ向かってきた、


スクナが短く言う。

「雑魚だ」


「せやね」


椿はもう弓を構えていた。


一射。音もなく放たれた矢が、一体の喉を正確に貫く。倒れるより先に絶命した。


残りの二体が距離を詰める。


その前に、白い影が走った。


コマが低く地を滑るように入り込み、一体の喉元に噛みつく。そのまま引き裂く。血が飛ぶ。


もう一体が椿へ迫る。


「遅いわ」


半歩引いて、体を捻る。腕を流して勢いを殺し、そのまま体勢を崩させたところで、

スクナが短剣を迷いなく心臓へ突き込んだ。


一瞬で終わった。


椿は軽く息を吐く。


「……あっさりやね」


「まだ来る」


スクナの声は低い。


その言葉通りだった。木の上、茂みの奥、気配が増えていく。


椿の口元がわずかに上がる。


「……あらあら。えらい歓迎やこと」


次の瞬間、数が跳ね上がった。五体、六体、それ以上。さっきとは比べ物にならない。


「囲まれてるな」


「ええやないの」


椿は弓を引いたまま笑う。


「稼ぎにはなるやろ」


戦闘が続く。


矢が連続で放たれる。一本、また一本と急所だけを抜いていくが、数が減らない。すり抜けてくる個体も出始める。


一体が死角から飛び込む。


避けきれない。


その瞬間、コマが体当たりで弾き飛ばした。


「……助かったわ、コマ。」


椿はすぐに体勢を戻すが、状況は確実に押されていた。


「キリがないな」


スクナが舌打ちする。


そのとき、奥から重い気配が動いた。


空気が一段沈む。


木々の奥から現れたのは、ひと回り大きい個体。筋肉の付き方も違う。目にわずかに理性が残っている。


「……来るで」


椿の声が静かに落ちる。


「親玉か」


スクナが構えた。


周りの魔物が一歩下がり空気が張り詰める。


椿はゆっくり息を吐いた。


「……ここからが本番やね」


強個体が地面を蹴る。


速い。


一直線に椿へ距離を詰める。


矢を放つ。だが、避けられる。


「……やるやないの」


間合いに入られたその瞬間、スクナが割り込んだ。刃を受け、流し、勢いを逸らすが完全には止めきれない。


「ッ……!」


押される…!!


横からコマが噛みつき、わずかに動きを止めた。


「今や」


椿の目の色が一瞬変わったように見えた。


一射。


目を射抜く。悲鳴が上がるがそれでも倒れない。


巨体が暴れだし地面が抉れた。


「しぶといな……!」


スクナが距離を取る。


椿はすでに次を構えていた。


「ほな、終わらせましょか」


二射目。

もう一方の目に刺さった。

ひどく大きな唸り声を上げて巨体が膝をつく。


その一瞬をスクナは見逃さなかった。


美しく洗練された動きで、

喉元を切り裂き、心臓を突き刺した。


吹き出した血を浴びるその姿が妙に神々しく感じられる。


巨体が揺れて、そのまま崩れ落ちた。


親玉を失ったからか、それともスクナの放つ気配に恐れをなしたのか、魔物たちは潮が引くように散っていった。


森に静寂が戻る。


椿は息を整えながら、周囲を見渡した。


「……ええ運動やったわ」


「ギリギリだろ」


「せやなあ、でも、生きてるやろ」


あっさり言って、しゃがみ込む。


「ほな、仕事の時間やね」


「……剥ぎ取りか」


「そう、でも剥ぎ取りは初めてやし、上手いこといくかは分からへんけどな」



牙、爪、皮。淡々と回収していく。スクナも無言で手伝う。その手つきは慣れていた。


椿がちらりと見る。


「慣れてはるね」


「……昔な」


それ以上は聞かない。


ある程度集め終わり、袋が重くなる。


椿はそれを軽く持ち上げた。


「これなら、しばらくは困らへんやろ」


そして、ふっとスクナを見る。


「……服、買いに行こか」


スクナの動きが止まる。


「……は?」


椿は当たり前みたいに言う。


「だって服、真っ赤っかやし」


少しだけ笑う。


「似合うもん、選んだげる」


スクナは言葉を返せない。


椿はもう歩き出している。


「ほな、帰りましょか」


コマがその横に並ぶ。


少し遅れて、スクナもついてきた。



街の外れにある小さな買い取り所。看板は斜めに傾き、入り口の扉も半分しか閉まらない。けれど、中の気配は軽くない。


椿はそのまま扉を押した。


「すみません、買取お願いできますやろか」


奥にいた男が顔を上げる。椿を見て、次にコマ、最後にスクナへ視線を流した。


値踏みの目を向けられる。


「……何を持ってきた」

書き溜めはありますが、暫くは様子を見ながら1日1話から2話を目安に投稿しようと思っています!


次回のタイトルは「不穏な気配」です。


毎日20時更新です!


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