第10話 未来から来た配達員
第10話です。
今回、喫茶ミオを訪れるのは、未来から来た配達員。
彼女は、時を越えて誰かの心残りを届ける仕事をしていました。
けれど、たくさんの手紙を届けてきた彼女自身にも、ずっと受け取れずにいた一通の手紙がありました。
届けること。
受け取ること。
そして、止まっていた時間がもう一度動き出すこと。
第10話「未来から来た配達員」、お付き合いいただけると嬉しいです。
その日、店主は常連帳を開いていた。
黒い革張りの古い帳面。
表紙の角は擦り切れ、金具はくすんでいる。けれどページは不思議と破れておらず、インクの文字もはっきり残っていた。
常連帳。
そこには、世界が壊れる前にこの店を訪れていた人々の名前が書かれている。
佐伯さん。
野村さん。
篠原先生。
黒瀬さん。
ユイちゃん。
見覚えのある名前があった。
この店に来た客たちは、やはり偶然ここへ辿り着いたわけではなかったのかもしれない。
壊れかけの配達ロボット、AD-17が届けた誕生日プレゼント。
最後の新聞記者、黒瀬真悟の原稿。
記憶を売った少女、アメの蜂蜜入りホットミルク。
幽霊になった常連客、篠原宗一郎の「いつもの一杯」。
世界を救えなかった勇者レオンの折れた聖剣。
人間になりたかった自動販売機AVM-0321。
休暇中の魔王ヴァルグランが置いていった黒焔城の紋章。
そして、死ぬことを忘れた老人、ヨル。
ヨルの名は、昨日この常連帳に書いた。
――ヨル。
死ぬことを忘れた老人。
長い夜を歩いてきた人。
温かいコーヒーを飲んだ。
名を呼ばれた。
その文字は、今もページに静かに沈んでいる。
まるで、最初からそこにあったかのように。
店主は、その名前を指先でなぞらないように、少し離れた場所へ手を置いた。
ヨルは、最後に眠るように消えた。
長い夜が明けるみたいに。
その姿を思い出すと、胸の奥に静かな痛みが残る。
悲しみではある。
けれど、苦しいだけではない。
見送るということが、少しだけ分かった気がした。
誰かがいたことを覚えておく。
名を呼ぶ。
記録する。
それだけで、長すぎた夜が終われることもある。
店主は常連帳を閉じようとして、最後の方のページをもう一度だけ開いた。
真っ白なページ。
名前を書くための線だけが引かれている。
端に、小さくこう書かれている。
――最後の客。
店主は息を止めた。
昨日も見たページだ。
何度見ても、胸がざわつく。
その空白は、ただの空白ではない。
いつか誰かの名が書かれる場所。
最後の客。
この店を閉めてはいけない。
最後の客が来るまでは。
日記にも、篠原にも、同じ言葉があった。
店主はページを閉じた。
今は、まだ。
今はまだ、その空白に触れる時ではない。
常連帳をカウンターの下へ戻し、店主はいつものようにカップを磨いた。
カウンター横には、古い自動販売機が立っている。
AVM-0321。
もう表示は点かないはずなのに、時々ほんの一瞬だけ淡く光ることがある。気のせいかもしれない。けれど、店主はそれを完全な気のせいだとは思っていなかった。
正面には、手書きの紙が貼られている。
――夜明けのブレンド 価格:ありがとう一つ
――店内専用。どういたしまして付き。
中には、琥珀色の液体が入った小さな瓶が一本だけ残っている。
まだ誰も買っていない。
AVMが最後に補充してほしいと言った一本。
いつか、必要な誰かの手に渡るのだろう。
店主はAVMの表面を軽く拭いた。
「今日もよろしくお願いします」
返事はない。
それでも、何かがそこにいる気配はあった。
店主は一杯目のコーヒーを淹れた。
白いカップ。
カウンターの端。
誰のためか分からない一杯。
湯気が静かに立つ。
その時、店の外で鐘のような音が鳴った。
からん、ではなかった。
扉のベルではない。
もっと遠く、もっと硬く、どこか金属的な音。
ちりん。
ちりん。
郵便受けに何かが落ちたような音にも似ていた。
店主は顔を上げた。
窓の外を見る。
灰色の街。
ひび割れた道路。
倒れた街灯。
そして、店の前の空間が、青白く揺れていた。
空間に、細い線が走っている。
それは扉のようでもあり、裂け目のようでもあった。ヴァルグランが来た時の紫色の裂け目とは違う。今回はもっと整っていて、四角い枠のような形をしている。
まるで、透明な玄関がそこに現れたようだった。
青白い光の向こうから、人影が飛び出してきた。
「到着!」
元気な声だった。
直後、その人物は足を滑らせた。
「わっ」
店の前のひび割れた道路に、見事につまずく。
両手に抱えていた大きな鞄が跳ね、背中の荷物箱ががしゃんと鳴った。
店主は慌てて外へ出た。
「大丈夫ですか」
「だ、大丈夫です。配達員は転倒程度では遅配扱いになりませんので」
よく分からない返事だった。
倒れていたのは、若い女性だった。
年齢は二十代前半くらいに見える。
短く切った黒髪に、青いラインの入った帽子。服装はどこか制服のようで、膝丈のコートには反射材のような光る線が走っている。胸元には小さな金属製のバッジ。
そこには、こう刻まれていた。
――時空郵便局 第七配達課。
店主はその文字を見つめた。
「時空郵便局」
「はい」
女性は素早く立ち上がり、制服の埃を払った。
そして、大きな鞄から端末のようなものを取り出す。
「時空郵便局第七配達課所属、時枝カナタです。指定座標、終末後朝霧市、喫茶ミオ前。指定時刻、開店中。配達対象、喫茶ミオ店主様」
彼女は一息で言った。
言い慣れているのだろう。
「お届け物です」
店主は瞬きをした。
「僕に、ですか」
「はい。お名前は」
「……分かりません」
カナタと名乗った配達員は、端末を見た。
それから、あまり驚いた様子もなく頷いた。
「照合します。受取人、喫茶ミオ店主。現在、氏名記憶喪失状態。店主呼称にて受取可能。問題ありません」
「問題ないんですか」
「はい。時空郵便では、名前を思い出していない受取人への配達も想定内です」
「幅広いですね」
「時空を扱うと、だいたいのことは想定内に入れておかないと事故になります」
カナタは真面目な顔で言った。
店主は、なんとなく納得した。
この店に来る客の中でも、かなり説明が必要な部類かもしれない。
けれど、配達員というだけで、少し親近感もあった。
第1話で来たAD-17も、配達ロボットだった。
五十年遅れの誕生日プレゼントを届けるために、この店へ来た。
今回は未来から来た配達員。
届けるものがある。
なら、客である前に、まずは配達員として迎えた方がいいのだろう。
「中へどうぞ」
店主が言うと、カナタは端末を確認した。
「店内への入場許可、確認。ありがとうございます」
「そんな確認が必要なんですか」
「配達員は、受取人の許可なく私有地へ侵入してはいけません」
「喫茶店ですが」
「時空郵便規定では、喫茶店も私有地です」
「なるほど」
店主は扉を開けた。
カナタは大きな鞄を抱え、店内に入る。
からん、とベルが鳴った。
カナタはその音を聞いて、少し目を見開いた。
「本当に鳴るんですね」
「ベルですので」
「未来では、こういう音の店はほとんど残っていません」
「未来から来たんですよね」
「はい」
カナタは店内を見回した。
カウンター。
棚のカップ。
窓際の席。
古い照明。
カウンター横の自動販売機。
彼女の視線が、AVMの前で止まった。
「自動販売機……」
「ご存じですか」
「資料映像で見たことがあります」
「資料映像」
「昔の人が屋外で飲料を購入するために利用した、無人販売装置ですよね」
「たぶん、そうです」
店主はAVMを見た。
本人が聞いたらどう思うだろう。
無人販売装置。
少し寂しい呼び方だ。
「この自動販売機は、うちの店の一部です」
店主が言うと、カナタは少しだけ表情を改めた。
「失礼しました」
そして、AVMに向かって軽く頭を下げた。
「時空郵便局第七配達課、時枝カナタです。お邪魔します」
返事はない。
だが、店主には、AVMの表面がほんの少しだけ明るくなったように見えた。
「礼儀正しいんですね」
「配達員ですから」
カナタはそう言って、カウンターの前に立った。
「では、こちらがお届け物です」
彼女は鞄から、小さな白い箱を取り出した。
箱は紙製に見えるが、表面には青白い細かな文字のようなものが走っている。光の糸で封をされており、普通の荷物ではないことは明らかだった。
宛名欄には、手書きではなく、薄い光で文字が浮かんでいる。
――喫茶ミオ 店主様。
差出人欄には、こうあった。
――時枝サヨ。
店主は顔を上げた。
「時枝」
カナタの名字と同じだ。
カナタは一瞬だけ表情を動かした。
しかし、すぐに配達員の顔へ戻った。
「受領サインをお願いします」
彼女は端末を差し出す。
画面には、受取人サイン欄が光っていた。
「名前が分からない場合は」
「店主、で大丈夫です」
店主は指で「店主」と書いた。
端末が、ぴ、と小さく鳴る。
「受領確認。配達完了……」
カナタはそこまで言って、端末の表示を見つめた。
眉をひそめる。
「……あれ?」
「どうしました」
「完了処理が通りません」
「通らない」
「はい。荷物は渡したはずなのに、配達完了になっていません」
店主は白い箱を見た。
「まだ、中身の受取が終わっていないとか」
「時空郵便では、未開封でも荷物を渡した時点で完了扱いです。中身の確認は受取人責任なので」
「現代の宅配便と似ていますね」
「未来でもだいたい同じです」
カナタは端末を操作した。
しかし、表示は変わらないようだった。
「おかしいですね。受取人は店主様。荷物は店主様に渡しました。座標も時刻も一致。なぜ完了しないのか」
店主は箱の差出人欄をもう一度見た。
時枝サヨ。
「この差出人は、カナタさんのご家族ですか」
カナタの手が止まった。
表情がわずかに硬くなる。
「……母です」
「お母様」
「ですが、これは店主様宛ての荷物です。私は配達員ですので、中身には関与しません」
声が急に事務的になった。
店主はその変化に気づいた。
この人は、何かを避けている。
それは、配達員としての規則なのか。
それとも、もっと個人的な痛みなのか。
「開けてもいいですか」
「受取人の自由です」
店主は白い箱の封に触れた。
青白い光の糸が、すっとほどける。
蓋を開ける。
中に入っていたのは、一通の封筒だった。
白い封筒。
古い紙でできている。
その表面には、手書きの文字があった。
――時枝カナタへ。
店内が静まり返った。
カナタは、封筒を見たまま動かなかった。
まるで時間が止まったようだった。
店主は封筒を手に取る。
「カナタさん宛てです」
「……違います」
カナタは小さく言った。
「これは、店主様宛ての荷物の中身です。私は配達員です。配達員は、業務中に個人的な郵便物を受け取ることはできません」
「でも、宛名はカナタさんです」
「規定では」
「規定より、宛名ではないでしょうか」
カナタは唇を噛んだ。
「私は、届ける側です」
「はい」
「受け取る側ではありません」
その言葉は、少し強かった。
強いぶんだけ、脆くも聞こえた。
店主は封筒をカウンターに置いた。
「では、先に何か飲みますか」
「え?」
「配達完了にならないなら、少し休んでも遅れないのでは」
「いえ、私は次の配達が」
カナタは端末を見た。
そこには、何も表示されていないようだった。
彼女の顔が少しだけ曇る。
「……次の配達予定が、出ていません」
「では、休憩できますね」
「そういうことでは」
「ご注文は」
カナタは戸惑った顔をした。
「注文」
「はい。ここは喫茶店なので」
「私は配達員です」
「配達員の方も、客になれます」
カナタは返答に詰まった。
この店に来る客は、皆最初は自分が客であることを認めたがらない時がある。
AD-17も、最後に「当機は客でしたか」と尋ねた。
AVMは、自動販売機が客になることを喜んだ。
ヴァルグランは魔王の休暇として来た。
ヨルは名を呼ばれるために来た。
カナタは、自分は配達員だと言う。
届ける側だと。
それはきっと、彼女にとって鎧なのだ。
「温かいものを淹れます」
店主は言った。
「苦手なものはありますか」
「……未来の栄養飲料以外は、あまり飲み慣れていません」
「では、あまり強くないものにします」
店主はカウンターの内側へ戻った。
カナタはしばらく立ったままだったが、やがてカウンター席に腰を下ろした。
大きな配達鞄を膝の横に置く。
肩の力は抜けていない。
いつでも立ち上がれるような姿勢だった。
店主は、コーヒーではなく、温かいレモネードを作ることにした。
棚の奥に蜂蜜があった。
アメに使ったものと同じかもしれない。
湯を沸かし、薄く切ったレモンを入れる。蜂蜜を溶かし、少しだけ生姜を加える。
未来から来た配達員。
ずっと時間の中を走ってきた人。
そんな人には、苦さよりも、喉を通る温かさが必要な気がした。
カップに注ぐと、柔らかな黄色の湯気が立った。
「お待たせしました」
カナタはカップを見た。
「これは」
「ホットレモネードです」
「未来の飲み物ですか」
「たぶん、かなり昔からあると思います」
「昔の飲み物」
カナタは慎重にカップを持った。
両手で包む。
その瞬間、彼女の指が少し震えた。
「温かい」
「はい」
「未来では、温度調整されたカップが多いので、こういう熱さは久しぶりです」
「熱すぎますか」
「いえ」
カナタは首を横に振った。
「ちょうどいいです」
彼女は一口飲んだ。
目を少しだけ見開く。
「甘い」
「蜂蜜です」
「酸っぱい」
「レモンです」
「少し、辛い」
「生姜です」
「情報量が多い飲み物ですね」
「そういう感想は初めてです」
店主は少し笑った。
カナタはカップを見つめたまま、もう一口飲んだ。
肩の力がほんの少しだけ抜ける。
「未来では、どんな仕事をしているんですか」
店主が尋ねると、カナタはカップを置いた。
「時空郵便局の配達員です」
「時間を越えて配達するんですか」
「はい。正確には、終末後時空における心残り郵便の配送業務です」
「心残り郵便」
「世界が終わった後、人々は最後に手紙を書きました」
カナタは視線を落とした。
「家族へ。友人へ。過去の自分へ。もう死んだ人へ。これから生まれるはずだった子どもへ。言えなかった言葉、謝れなかったこと、渡せなかったもの。そういうものを、未来の郵便局が回収しました」
「それを届けるんですか」
「はい。ただし、歴史を変えることはできません」
「できない」
「過去に手紙を届けても、大きな出来事は変わりません。戦争も、災害も、死も、基本的には変わらない」
「では、なぜ届けるんですか」
「心残りを減らすためです」
カナタは言った。
「手紙一通で世界は救えません。でも、誰かが最後まで自分を思っていたと知ることはできる。謝罪を受け取ることはできる。ありがとうを知ることはできる。未来では、それを『心的救済配送』と呼んでいました」
「難しい言葉ですね」
「私もそう思います」
カナタは少しだけ苦笑した。
「でも、やっていることは単純です。届けるだけです」
「届けるだけ」
「はい」
その言い方は、AD-17を思い出させた。
配送任務を完了する。
ただ届ける。
けれど、その「ただ」がどれほど重いことか、店主はもう知っている。
「たくさん届けたんですか」
「はい」
カナタはカップの縁を指でなぞった。
「数えきれないくらい。母から娘へ。兵士から婚約者へ。先生から生徒へ。作家から読者へ。未来の子どもから、会えなかった祖母へ」
「会えなかった祖母へ?」
「時空郵便では、未来から過去だけでなく、存在しなかった可能性から届くこともあります」
「だんだん分からなくなってきました」
「私も完全には理解していません」
カナタは真面目に言った。
「配達員なので」
「配達員は理解しなくてもいいんですか」
「宛先へ届けることが仕事です。中身の意味は、受取人のものです」
その言葉を聞いて、店主は白い封筒を見た。
――時枝カナタへ。
その中身の意味は、カナタのものだ。
だが彼女は、受け取ろうとしない。
「カナタさんは、受け取ったことはないんですか」
カナタの表情が固まった。
「ありません」
「一度も?」
「はい」
「どうして」
「配達員だからです」
同じ答えだった。
「私は届ける側です。届ける人間が受け取る側になったら、仕事が止まります」
「ずっと届け続けていたんですか」
「はい」
「休憩は」
「あります」
「今みたいに座って飲み物を飲む時間は」
「必要最低限です」
「手紙を読んだことは」
「ありません。配達員は中身を読みません」
「自分宛てでも?」
「自分宛てのものは、受け取らなければ中身ではありません」
カナタは、まるで自分に言い聞かせるように言った。
店主は黙った。
配達員としての規則。
それは、彼女を守ってきたものなのだろう。
他人の心残りを運ぶ仕事。
手紙には、無数の重さが詰まっている。
それを一つ一つ受け止めていたら、配達員自身が壊れてしまう。
だから読まない。
だから受け取らない。
だから届ける側でい続ける。
けれど、受け取るべきものまで受け取れなくなったとしたら。
それは、どこかで終わらせなければならない心残りになる。
「お母様は、亡くなられたんですか」
店主が静かに尋ねると、カナタは少しだけ目を伏せた。
「はい」
「未来で?」
「未来と言っても、店主さんから見れば未来ですが、私にとっては過去です」
「そうですね」
「母は、第七区画避難都市で亡くなりました。終末後に作られた地下都市です。地上は長く住めませんでした」
「世界は、そこまで続いていたんですね」
「続いていました。壊れたまま、細く」
カナタはホットレモネードを見つめた。
「人はしぶといです。世界が終わったと言われても、残った場所で暮らします。水を分け、人工光で野菜を育て、古い記録を読み、子どもに空の青さを説明します」
「空の青さを」
「本物を見たことがない子も多かったので」
店主は窓の外を見た。
灰色の空。
青くはない。
けれど、かつては青かったはずだ。
「カナタさんは、配達員になりたかったんですか」
「子どもの頃は」
カナタの声が少し柔らかくなった。
「地下都市の通路には、郵便受けが並んでいました。ほとんど使われていないのに、母は毎日そこを見ていました」
「お母様が?」
「はい。『今日は何か届いているかもしれない』と言って」
「実際に届いたんですか」
「たまに。古い区画からの通知とか、配給表とか、誰かの手紙とか」
カナタは少し笑った。
「母は、何も入っていなくても郵便受けを見るのが好きでした。私はそれが不思議でした。どうせ空なのに、と」
「はい」
「でも母は言いました。『届くかもしれないと思える場所があるのは、いいことよ』と」
店主の胸が静かに痛んだ。
届くかもしれないと思える場所。
この喫茶店も、そういう場所なのかもしれない。
帰れるかもしれない。
誰かがいるかもしれない。
最後の一杯が飲めるかもしれない。
名前を呼んでもらえるかもしれない。
だから、扉の札を「開店中」に返す。
「それで、配達員に?」
「はい。私は、空っぽの郵便受けを見ている母に、いつか本当に手紙を届けたいと思いました」
カナタは言った。
「でも、母に届ける前に、私は他の人の手紙ばかり届けるようになりました」
「お母様からの手紙は?」
白い封筒が、カウンターの上にある。
カナタはそれを見ないようにしていた。
「母は、亡くなる前に私宛ての手紙を書いたそうです」
「そうですか」
「私は受け取りませんでした」
カナタの声が少し震えた。
「なぜですか」
「その日、私は最後の配送便に出る直前でした。避難都市の外へ出る配達です。危険で、戻れる保証はありませんでした。母は病室から通信をくれました。『手紙を書いたから、出発前に受け取って』と」
「はい」
「私は言いました。帰ってきたら受け取る、と」
店主は何も言わなかった。
「配達が先だと思いました。たくさんの人が待っていた。自分の手紙を読む時間があるなら、一通でも多く届けるべきだと思いました」
「はい」
「でも、帰れませんでした」
カナタはカップを強く握った。
「配送先の時間が崩壊して、帰還座標が消えました。第七区画避難都市も、その後どうなったのか分かりません。母の手紙は、受け取らないまま不達になりました」
不達。
届けられなかったもの。
受け取られなかったもの。
この店には、そういうものが集まる。
「ずっと探していたんですか」
「探していません」
カナタは即座に言った。
だが、すぐに目を伏せた。
「……探していたら、配達できなくなると思いました」
「はい」
「だから、探さないことにしました。私は配達員だから。届ける側だから。受け取れなかったものがあっても、それは業務外だと」
店主は白い封筒を手に取った。
「でも、その手紙が今ここにあります」
「……はい」
「カナタさんが、ここへ届けました」
「違います。私は店主さん宛ての荷物を届けました」
「その中に、カナタさん宛ての手紙が入っていました」
「だから、完了にならない」
カナタは、かすれた声で言った。
「私が受け取らないから」
「たぶん」
店主は封筒をカウンターの上に置き直した。
「カナタさん」
「はい」
「この店では、配達員も客です」
「……」
「届ける人にも、受け取るべきものがあると思います」
カナタの目が揺れた。
彼女はずっと、配達員として座っていた。
背筋を伸ばし、制服を整え、端末を手元に置いて。
しかし今、その肩が少しずつ崩れていく。
「受け取ったら」
カナタは小さく言った。
「私は、配達員でいられなくなるかもしれません」
「どうしてですか」
「泣くかもしれない」
「はい」
「止まってしまうかもしれない」
「はい」
「次の配達に行けなくなるかもしれない」
「はい」
「それが怖いんです」
店主は、静かに頷いた。
「怖いですね」
「はい」
「でも、受け取らないままでも、止まっているように見えます」
カナタは息を呑んだ。
「私が」
「はい」
「止まっている」
「ずっと届け続けているのに」
「……」
「心だけ、どこかで止まっているのかもしれません」
カナタは反論しなかった。
ホットレモネードの湯気が、彼女の前でゆっくり薄れていく。
やがて、彼女は端末を手に取った。
受領画面を開く。
そこには、未完了の配送記録が点滅していた。
カナタは、それをじっと見つめた。
「受取人変更」
彼女は小さく言った。
「荷物内封書、宛先、時枝カナタ。配達員本人への転送処理」
端末が、ぴ、と鳴る。
しかし、画面には赤い文字が出た。
――本人配送不可。
カナタは苦く笑った。
「ほら、規定で」
「では、僕が届けます」
店主は言った。
カナタが顔を上げる。
「店主さんが?」
「はい。今、この手紙はこの店にあります。僕がカナタさんへお渡しします」
「でも」
「一時的に、この店が郵便局になるということで」
「そんな簡単に」
「この店には、自動販売機も魔王も勇者も来ますから」
「理由になっていますか」
「たぶん」
店主は封筒を持った。
カウンターの外へ出て、カナタの前に立つ。
少しだけ姿勢を正す。
配達員の真似をしてみる。
「時枝カナタさん」
カナタの肩が震えた。
「時枝サヨさんから、お手紙です」
店主は封筒を差し出した。
「お受け取りいただけますか」
カナタは封筒を見つめていた。
長い時間。
彼女の手は膝の上に置かれたまま動かなかった。
やがて、指先が震えながら上がる。
恐る恐る、封筒に触れる。
その瞬間、店内の灯りがふっと揺れた。
カナタは封筒を両手で受け取った。
「……受け取りました」
端末が、ぴ、と鳴った。
今度は、青い文字が浮かび上がる。
――配送完了。
カナタはその文字を見た。
そして、堪えきれなかったように顔を伏せた。
涙が落ちた。
一粒。
二粒。
封筒の上に、小さな水滴が落ちる。
「ごめんなさい」
彼女は言った。
それが誰への言葉なのか、店主には分からなかった。
母へか。
手紙へか。
配達員としての自分へか。
それとも、ずっと受け取れなかった子どもの頃の自分へか。
店主はカウンターの内側へ戻らず、そのまま静かに立っていた。
手紙を読むかどうかは、カナタの自由だ。
受け取っただけで終われることもある。
けれど、カナタは封を開けた。
慎重に。
震える指で。
中から、一枚の便箋が出てきた。
古い紙。
文字は柔らかく、少し丸い。
カナタはそれを見た瞬間、また涙をこぼした。
「母の字です」
「はい」
「本当に、母の字です」
彼女は便箋を開いた。
しばらく黙って読んでいた。
店主は読まなかった。
中身は受取人のものだ。
しかし、カナタは途中で顔を上げた。
「読んでもらっても、いいですか」
「僕がですか」
「はい。自分で読むと、最後まで読めない気がします」
店主は頷いた。
便箋を受け取る。
そこには、短い手紙が書かれていた。
店主は静かに読み上げた。
「カナタへ」
カナタは両手を握った。
「あなたがこれを読んでいるということは、ちゃんとどこかへ届いたということですね」
店主の声が、店内にゆっくり広がる。
「配達員になったあなたは、きっと自分のことを後回しにしていると思います。昔からそうでした。郵便受けが空っぽでも、他の人の荷物を見つけると、自分のことみたいに喜ぶ子でした」
カナタの唇が震えた。
「でも、カナタ。届ける人も、受け取っていいのです」
その一文で、カナタの肩が大きく震えた。
店主は少しだけ間を置き、続きを読んだ。
「あなたが届けている手紙には、誰かの心が入っています。だからこそ、あなたの心も、どこかで受け取ってもらわなければいけません」
カウンター横のAVMが、ほんの少し光ったように見えた。
「私は、あなたを待っていました。でも、帰ってこなかったことを怒ってはいません。あなたはきっと、誰かの『ごめんね』や『ありがとう』や『大好き』を届けていたのでしょう。それなら、私は少し誇らしいです」
カナタは泣いていた。
声を出さずに。
ただ、涙だけが止まらなかった。
「ただ、一つだけお願いがあります。どこかで温かいものを飲んでください。できれば座って。できれば、誰かに名前を呼んでもらって」
店主は、ヨルの言葉を思い出した。
名は、誰かが呼ぶためにある。
「そして、たまには配達員ではなく、私の娘に戻ってください」
カナタは両手で顔を覆った。
店主は最後の行を読んだ。
「カナタ。生まれてきてくれて、ありがとう」
少し下に、署名がある。
「母、サヨより」
店主は読み終えた。
店内は静かだった。
外の灰色の風も、遠くなっているようだった。
カナタは、しばらく泣いていた。
それは長い涙だった。
未来から来た配達員。
無数の手紙を届けてきた人。
たくさんの心残りを運んできた人。
その彼女が、初めて自分宛ての手紙を受け取って泣いている。
店主は、何も言わなかった。
泣く時間も、受け取ることの一部だと思ったからだ。
やがて、カナタは小さく息を吐いた。
「……温かいもの、飲んでいます」
「はい」
「座っています」
「はい」
「名前も、呼ばれました」
「時枝カナタさん」
店主がそう呼ぶと、カナタは泣き笑いのような顔になった。
「はい」
その返事は、配達員としてのものではなかった。
一人の娘としての返事に聞こえた。
その瞬間、店の奥で、かちり、と音がした。
時計の針が一つ進むような音。
カナタは顔を上げた。
「今の音は」
「この店で、時々鳴る音です」
「時空変動ですか」
「分かりません」
「配達完了音に似ています」
「そうなんですか」
「はい」
カナタは端末を見た。
画面には、今度こそはっきりと表示されていた。
――配送完了。
その文字を見て、彼女は静かに笑った。
「本当に、完了しました」
「よかったです」
「はい」
カナタは母の手紙を丁寧に折りたたみ、封筒に戻した。
それを胸ポケットにしまう。
その仕草は、とても大事なものを身体の近くに置く仕草だった。
「店主さん」
「はい」
「これは、私からです」
カナタは配達鞄のポケットから、小さな紙片を取り出した。
不在票のようだった。
けれど、普通の紙ではない。薄く透明で、見る角度によって文字が青く光る。
そこには、こう書かれていた。
――不達票。
宛先、時枝カナタ。
理由、受取人不在。
その下に、カナタは端末から小さなスタンプのような装置を取り出し、紙片へ押した。
青い光の印が浮かぶ。
――配達完了。
「これは」
「ずっと持っていた不達票です。母の手紙を受け取れなかった証拠でした」
「それを」
「この店に置いていきます」
カナタは言った。
「私が、受け取れた証として」
店主は両手で受け取った。
不達票は軽かった。
けれど、その中には長い時間が詰まっているようだった。
「大切に預かります」
「ありがとうございます」
カナタは深く頭を下げた。
そのあと、ふとカウンター横のAVMを見た。
「店主さん」
「はい」
「あの夜明けのブレンドは、買えますか」
店主はAVMを見た。
中には一本だけ。
AVMが残した最後の商品。
「価格は、ありがとう一つです」
「はい」
カナタはAVMの前に立った。
まっすぐに。
配達員としてではなく、客として。
「ありがとう」
彼女は言った。
その声は、店内に静かに響いた。
AVMの消えていた表示パネルに、淡い光が灯る。
文字が浮かんだ。
――どういたしまして。
がこん。
小さな音がした。
取り出し口に、琥珀色の瓶が出てきた。
夜明けのブレンド。
カナタはそれを受け取った。
両手で包む。
「温かい」
「はい」
「これを、持っていってもいいですか」
「もちろんです」
「未来には、本物の夜明けを知らない人がいます」
カナタは瓶を見つめた。
「この味が夜明けかどうかは分かりません。でも、誰かに届けたいです」
「また配達ですか」
店主が尋ねると、カナタは少しだけ笑った。
「はい。でも、今度は受け取った人間として届けます」
「受け取った人間として」
「はい」
彼女は母の手紙の入った胸ポケットに手を当てた。
「届けるだけではなく、受け取ったことも一緒に持っていきます」
店主は頷いた。
「それは、良い配達ですね」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
カナタは笑った。
さっきまでの張り詰めた笑みではない。
少し泣いた後の、柔らかい笑みだった。
その時、店の外で再び青白い光が揺れた。
透明な四角い扉のようなものが、店の前に現れている。
カナタは端末を見た。
画面に新しい表示が出ているようだった。
「次の配達先が出ました」
「どこですか」
「分かりません」
「配達員なのに」
「時空郵便では、よくあることです」
カナタは配達鞄を肩にかけた。
来た時よりも、その鞄が少し軽く見えた。
いや、実際には荷物が増えている。
母の手紙。
夜明けのブレンド。
それでも、背負い方が変わったのかもしれない。
「また来ますか」
店主が尋ねると、カナタは少し考えた。
「時空郵便では、同じ時間座標へ二度来ることは基本的に禁止されています」
「そうですか」
「でも」
カナタは扉の前で振り返った。
「この店は、規定外の場所みたいなので」
「よく言われます」
「また、何か届くかもしれません」
「お待ちしています」
カナタは嬉しそうに頷いた。
「店主さん」
「はい」
「名前を思い出したら、郵便受けを確認してください」
店主は目を見開いた。
「郵便受け?」
「名前が戻ると、届くものがあります」
「それは、何ですか」
カナタは少し困った顔をした。
「すみません。配達員は、中身を言えません」
「そうでしたね」
「でも、届きます。たぶん」
たぶん。
未来から来た配達員の言葉としては、少し頼りない。
だが、その頼りなさが不思議と温かかった。
「では、行きます」
「お気をつけて」
カナタは扉を開けた。
からん、とベルが鳴る。
外の青白い光の前で、彼女はもう一度だけ振り返った。
「喫茶ミオ店主様」
「はい」
「配送にご協力いただき、ありがとうございました」
「こちらこそ、ご来店ありがとうございました」
「……ご来店」
カナタはその言葉を噛みしめるように呟いた。
「そうですね。私は、客でもあったんですね」
「はい」
「では」
カナタは胸ポケットに手を当てた。
「また、どこかの時間で」
彼女は青白い扉の中へ歩いていった。
光が揺れる。
カナタの背中が薄くなる。
最後に、配達鞄についた小さな鈴が鳴った。
ちりん。
ちりん。
そして、光は消えた。
店の外には、また灰色の街だけが残った。
ひび割れた道路。
倒れた街灯。
静かな風。
店主はしばらく扉の前に立っていた。
未来から来た配達員は、母の手紙を受け取り、夜明けのブレンドを持って去っていった。
届ける人にも、受け取るべきものがある。
その言葉が、胸に残っていた。
店内へ戻る。
カウンター横のAVMを見る。
夜明けのブレンドは、もうない。
取り出し口は空になっている。
正面の表示も消えている。
しかし、店主にはAVMが少し満足そうに見えた。
「売れましたね」
返事はない。
だが、店主には聞こえた気がした。
――どういたしまして。
店主は小さく笑った。
それから、カナタが置いていった不達票を持って倉庫へ向かった。
「預かりもの」の木箱を開ける。
中には、錆びた鍵、古い万年筆、子ども用の髪留め、折れた眼鏡、写真の入っていない写真立て、金属製の名札、折れた聖剣、黒焔城の紋章がある。
そこへ、不達票をそっと置いた。
薄い紙片は、折れた聖剣と魔王の紋章の間ではあまりに頼りなく見えた。
けれど、不思議とその場所に収まった。
不達。
受取人不在。
配達完了。
その三つの言葉が、一枚の紙の上に並んでいる。
店主は木箱の蓋を閉めた。
店内へ戻り、茶色いノートを開く。
新しいページ。
ペンを持つ。
――九人目の客。時枝カナタ。
少し考え、次の行を書く。
――未来から来た配達員。
――たくさんの心残り郵便を届けてきた人。
――自分宛ての母の手紙だけを、受け取れずにいた。
店主は、カナタが泣いていた姿を思い出した。
泣くことを恐れていた配達員。
止まることを恐れていた人。
けれど、手紙を受け取った後の彼女は、止まったのではなく、もう一度歩き出した。
店主は続きを書く。
――この店で、時枝サヨさんからの手紙を受け取った。
――夜明けのブレンドを買い、未来へ持っていった。
――不達票をこの店に置いていった。
最後に、一行だけ書いた。
――届ける人にも、受け取るべきものがある。
その一文を書いた時、店主の胸の奥が静かに疼いた。
自分にも、届くものがあるのだろうか。
カナタは言った。
名前を思い出したら、郵便受けを確認してください。
名前が戻ると、届くものがあります。
郵便受け。
店主は店の入口へ向かった。
扉の横に、古い郵便受けがある。
今まで気にしたことがなかった。
赤茶けた金属製の小さな箱。
表面は錆びているが、蓋には薄く文字が残っている。
――喫茶ミオ。
店主はそっと蓋に触れた。
中を開けたい衝動があった。
だが、手は止まった。
名前を思い出したら。
カナタはそう言った。
今開けても、きっと何も届いていない。
あるいは、届いていたとしても、受け取る準備ができていない。
店主は郵便受けから手を離した。
まだだ。
この店には、順番がある。
日記も一度に全部読むなと書いていた。
地下の扉も、まだ開けていない。
最後の客のページも空白のままだ。
名前もまだ戻っていない。
焦ってはいけない。
けれど、いつか。
いつか、自分宛ての何かが届くのかもしれない。
そう思うと、怖かった。
だが、不思議と少しだけ待ち遠しくもあった。
店主はカウンターへ戻った。
朝に淹れた一杯目のコーヒーは、すっかり冷めている。
いつものことだ。
店主はそれを手に取った。
一口飲む。
苦い。
冷めている。
けれど、今日はその苦さの中に、ホットレモネードの蜂蜜の甘さを思い出した。
カナタは、母の手紙を受け取った。
そして、また配達へ向かった。
受け取ることは、終わることではなかった。
むしろ、次へ進むためのことだった。
店主はカップを置いた。
窓の外を見る。
灰色の空。
壊れた街。
誰もいない道路。
けれど、どこかの未来へ向かって、配達員が歩いている。
夜明けのブレンドを鞄に入れて。
母の手紙を胸に入れて。
受け取った人間として。
届けるために。
店主は新しい湯を沸かした。
カップを磨く。
椅子を整える。
AVMの正面に貼られた紙を見て、少しだけ考えた。
夜明けのブレンドは売れてしまった。
なら、紙を書き換えなければならない。
店主は古い紙を剥がさず、その下に小さく書き足した。
――売り切れ。
――でも、ありがとうは受付中。
書き終えると、AVMの表示がほんの一瞬だけ光った。
――^^
見間違いかもしれない。
だが、店主は笑った。
「どういたしまして」
誰に向けた言葉か、自分でも分からなかった。
未来から来た配達員か。
AVMか。
それとも、いつか届く自分宛ての手紙か。
外では、終わった世界に風が吹いている。
過去から届かなかった荷物も。
未来から来た手紙も。
受け取れなかった言葉も。
この店には、いつか辿り着くのかもしれない。
店主は扉の札を見た。
――開店中。
世界が終わったあとも。
未来から来た配達員が、ようやく母の手紙を受け取ったあとも。
喫茶店だけは、まだ営業している。
最後の客が来る、その日までは。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
第10話は、未来から来た配達員・時枝カナタのお話でした。
たくさんの心残りを届けてきた彼女が、どうしても受け取れずにいた母からの手紙。
配達員として届ける側であり続けたカナタが、喫茶ミオで初めて「受け取る側」になる回でした。
届ける人にも、受け取るべきものがある。
その一通を受け取ったことで、彼女はまた次の配達へ向かっていきました。
そして、店主の名前と郵便受けにも、少しだけ新しい伏線が残りました。
次回は、第11話「記憶を食べる猫」です。
よろしければ、またこの喫茶店にお立ち寄りください。




