第17話 遠回りの夏
清流・佐辺川。
夏の日差しを受けた水面が、岩のあいだできらきらと光っていた。
川沿いの草は濃い緑に伸び、葉の裏では蝉が鳴いている。山から下りてくる風には、水と土、それから青い草の匂いが混じっていた。
少し上流では、白い水しぶきが岩に砕ける。
その向こうには、深い緑の山肌が続いていた。
豪雨の夜には恐ろしい濁流となるこの川も、夏は佐辺に恵みをもたらしてくれる。
鮎の季節だった。
鮎漁が解禁されるころになると、川辺には町の外からも釣り人がやって来る。
その日も、上流には何人もの人影があった。
長い竿を構え、流れの中に立っている。
アオとミナトは、釣り人の視界に入らない距離の、大きな岩の陰からその様子を眺めていた。
アオはエラの周りの鱗をわずかに逆立て、爪を出したり引っ込めたりしている。
「あれは、何をしている」
「鮎釣り」
「つり」
「竿と糸を使って、魚を捕る」
アオは黙って釣り人を見た。
一人の男が、流れの中で静かに竿を構えている。
なかなか動かない。
「待っているのか」
「そうだな」
「鮎が来るのを」
「まあ、鮎は川の中にいるんだけどな。釣るのはまた別なんだよ」
「いるのに捕れないのか」
「そんな簡単じゃない」
アオは川を見た。
水の中では、鮎が石の近くを素早く動いている。
アオには、その姿がよく見えていた。
鼻から、シュシュッと短い息が漏れる。
ミナトには、それが人間でいう鼻で笑う動作だと、もう分かっていた。
「効率が悪い」
「釣り人に聞かれたら怒られるぞ」
「川に入ればよい」
「人間はお前みたいに泳げないんだよ」
「鮎は見える」
「人間には、そこまで見えない」
「不便だ」
「だから竿を使うの」
アオは再び釣り人を見た。
長い竿。
流れる水。
じっと待つ人間。
「釣れない時間もあるのか」
「ある」
「それでも続けるのか」
「それも含めて楽しいんだって」
「釣れないのに」
「うん」
アオは首を傾けた。
「分からない」
「だろうな」
ミナトは笑った。
しばらくして、アオがぽつりと言った。
「鮎は、うまい」
「そこは分かるんだ」
「焼くと、うまい」
「去年、辰蔵さんにもらったやつな」
「骨がある。でも、うまい」
「ずいぶん高評価だな」
岩の間を抜けてきた風が、アオの濡れた鱗を撫でていく。
川面の光が、琥珀色の目に映っていた。
鮎は石の陰から姿を見せては、また流れの中へ消えていく。
アオには、それが見える。
なのに人間は、糸の先をじっと見つめて待っている。
やはり、まだよく分からなかった。
*
数日後。
緑川家の縁側で、辰蔵が渋い顔をしていた。
「最近の子どもらは、川で遊ばんのう」
由紀子が麦茶をミナトに渡し、アオの前には塩分を少し加えた水を置いた。
「危ないからって、大人が止めることも多いですから」
「それも分かる。川は危ない。じゃが、川を知らんまま大きくなるのも、それはそれで怖い」
由紀子は少し考えてから、うなずいた。
「私もそこは悩んでる。鮎だって、この地域では昔から身近な魚なのに、どうやって川で暮らしているのか知らない子も多いし」
アオは黙って聞いていた。
しばらくして、ミナトを見る。
「ミナト」
「何」
「アオは、大橋の仕事を手伝ってから、何もしていない」
「そんなことないだろ。川の見回りもしてるし、子どもたちにも危ない場所を教えてる」
「もっと、できることはないのか」
その声は妙に真剣だった。
辰蔵が笑う。
「十分やっとるがな」
「足りない」
「何が足りん」
「里が困っている」
アオは由紀子を見る。
「子どもは、鮎を知らない」
「そうね」
「なら、アオが教える」
由紀子の顔が明るくなった。
「鮎のこと、教えてくれるんですか?」
「水の中なら分かる」
ミナトが横から言った。
「アオ基準の『分かる』は、たぶん人間には難しいですよ」
「なぜ」
「お前、水の中で直接捕まえるだろ」
「捕ればよい」
「ほら」
辰蔵が膝を打った。
「ええじゃないか。子どもらを集めて、川の授業をやろう」
「お父さん、急に話を大きくしないで」
「善は急げじゃ」
「子どもを川に入れるなら、安全の準備が先」
由紀子の声が教師のものに変わった。
「浅い場所だけ。必ず大人がつく。川の中でふざけない。ロープと浮き具も準備して」
「消防団にも声をかけるか」
辰蔵が言う。
「さとるなら来るじゃろ」
ミナトが少し考える。
「白崎さんにも声かけます? 水や魚の話なら、子どもにも分かりやすく説明してくれそうだし」
「いいですね」
由紀子がうなずいた。
アオだけが、少し不思議そうだった。
「鮎をつかまえるだけなのに、人間はたくさん集まる」
「子どもの安全がかかってるからな」
「アオが見ている」
「お前一人に全部任せるほうが怖い」
「なぜ」
「お前、『捕ればよい』で終わるから」
アオは少し不満そうに爪を閉じた。
辰蔵が笑った。
「人間は、一人でできても、みんなでやるときがあるんじゃ」
「なぜ」
「そのほうが、ええときもある」
「分からない」
「まあ、そのうち分かるかもしれん」
「分からないかもしれない」
「それでもええ」
*
川の授業の日。
上流の、流れが穏やかな浅瀬の河原に子どもたちが集まった。
頭には帽子。
手には水筒。
足元は濡れてもいい靴。
川辺には、夏草の匂いと子どもたちの声が広がっていた。
木々の向こうでは蝉が鳴き続け、時折、川面すれすれを小さなトンボが横切っていく。
由紀子が、一人ずつ子どもたちの様子を確認していた。
「今日は絶対に約束を守ること。勝手に深いところへ行かない。川の中でふざけない。流された物を追いかけない。アオ先生の話を聞く。いいですね」
「はーい!」
少し離れた場所では、赤木さとるが消防団の仲間とロープや浮き具を確認していた。
「よし、こっちは大丈夫!」
いつもの大きな声が川辺に響く。
白崎玲奈は、浅瀬から汲んだ水を小さな容器に入れ、子どもたちに見せていた。
「鮎は、川の中の石についた藻を食べます。だから、水の状態や川底の環境がとても大事なんです」
「石を食べるの?」
「石そのものじゃありませんよ」
「石についたご飯?」
「そう思うと分かりやすいですね」
子どもたちが笑う。
ミナトは少し離れた岩の上にいるアオを見た。
アオは、いつになく堂々としていた。
背後には深い緑の山。
その足元には、夏の日を反射する佐辺川。
今では、その景色の中にアオがいることが、ミナトには妙に自然に見えた。
「アオ先生、お願いします」
由紀子が声をかける。
子どもたちが一斉にアオを見る。
「アオ先生!」
「鮎見せて!」
「捕って!」
「お手本!」
アオはうなずいた。
「まず、見せる」
そう言うなり、ざぶんと川へ飛び込んだ。
水しぶきが夏の日差しの中で白く弾けた。
「わあっ!」
子どもたちが歓声を上げる。
背びれが水面をすっと切る。
アオは流れを読みながら石の間を抜け、音もなく潜った。
数分もしないうちに、水面から顔を出す。
両手には、銀色に光る鮎。
「捕った」
子どもたちが大騒ぎした。
「すごい!」
「はやっ!」
「アオ先生、もう一回!」
アオのエラ蓋がぱたぱたと動いた。
喉の奥から、
「ギュルギュル……」
と、得意そうな音まで漏れる。
ミナトは頭を抱えた。
「お手本になってない!」
大人たちが笑った。
由紀子も笑いながら言う。
「アオ先生。人間の子どもは、その捕り方はできません」
アオは不思議そうに由紀子を見る。
「なぜ」
「泳ぎも速くないし、水の中もそんなに見えません」
「不便だ」
「そこは認めます」
ミナトが言う。
「だから、人間でもできるやり方を教えてやって」
アオは手の中の鮎を見る。
そして子どもたちを見る。
「分かった」
*
アオの授業は、少しぎこちなく始まった。
「鮎は、石の近くにいる」
一人の子が手を挙げる。
「どの石?」
「よい石」
「よい石って?」
アオが止まった。
ミナトが小声で言う。
「もうちょっと頑張れ」
「よい石は、よい石だ」
「頑張ってない」
由紀子が笑いをこらえながら助け船を出した。
「アオ先生。鮎が好きなのは、どういう石ですか?」
アオは川を見た。
「水がよく当たる。藻がつく。石の近くに隠れる場所がある。流れが強すぎない」
玲奈がうなずく。
「そうですね。鮎は石についた藻を食べるので、そういう場所に集まりやすいんです」
「へえー」
子どもたちが川底を覗き込む。
アオはその先を指した。
「でも、あそこには行くな」
少し下流。
水面だけを見れば、ほかの場所と大差はない。
「あそこは底が急に深くなる。下で水が回っている。足を取られる」
子どもたちの顔から笑いが消えた。
「こっちの岩も、濡れると滑る」
アオは別の場所を指す。
「雨の次の日は、ここまで来るな。水が速い」
短い言葉だった。
だが、迷いがない。
由紀子は黙って聞いていた。
「一人で来るな」
アオが言った。
「魚は、流されても泳げる。人間は、流されたら戻れないことがある」
子どもたちは真剣にアオを見る。
「帽子が流れても追うな。竿も追うな」
一人の子が聞いた。
「もったいなくても?」
「命のほうが、もったいない」
ミナトが思わずアオを見た。
由紀子も、少しだけ目を細めた。
「そうですね」
その声はやわらかかった。
「それは絶対、覚えておいてください」
アオは子どもたちを見渡す。
「川は、怖い」
少し間を置く。
「でも、怖いだけではない」
由紀子がアオを見る。
アオはもう川へ目を戻していた。
夏の日差しを受けた水面が、変わらずきらきらと揺れていた。
*
そのあと、子どもたちは浅瀬から川を観察した。
鮎がどこにいるのか。
どんな石を好むのか。
水が速い場所と、緩い場所。
辰蔵は昔の鮎漁の話をし、玲奈が鮎の生態を補足する。
さとるは、子どもが危ない場所へ近づかないよう見ていた。
そのうち、準備していた竿を使って、鮎釣りの体験も始まった。
簡単には釣れない。
一分。
二分。
五分。
子どもたちの集中力が、少しずつ切れていく。
「まだ?」
「全然釣れない」
「アオ先生みたいに捕ったほうが早い」
アオが大きくうなずいた。
「その通りだ」
「お前はそっちに乗るな」
ミナトが即座につっこんだ。
辰蔵が笑う。
「待つのも釣りじゃ」
アオは川を見る。
「鮎は、そこにいる」
「おるな」
「見える」
「アオにはな」
「なぜ待つ」
「それが釣りじゃ」
アオは納得していない。
しばらくして、一人の子の竿が揺れた。
「あっ!」
由紀子が振り向く。
「慌てないで!」
子どもが必死に竿を支える。
やがて、小さな鮎が水面から姿を現した。
「釣れた!」
一斉に歓声が上がる。
「すごい!」
「やった!」
「見せて!」
釣った本人は、両手で鮎を持ちながら、顔いっぱいに笑っていた。
アオはそれを見ている。
「一匹」
「大成功だよ」
ミナトが言う。
「一匹で、こんなに喜ぶのか」
「自分で釣った一匹だからな」
アオは、鮎と子どもの顔を見比べた。
少し考える。
「……そうか」
それからしばらく、アオは自分では鮎を捕らなかった。
代わりに川を見ながら、
「その石の近く」
「少し右」
「そこは流れが強い」
と短く声をかける。
子どもたちは何度も失敗した。
それでも、一匹釣れるたびに歓声が上がった。
アオはそのたびに、子どもの手の中の鮎を見る。
「小さい」
「でも釣れた!」
「そうか」
また別の子が釣る。
「これも小さい」
「アオ先生、そこは褒めて!」
川辺に笑い声が広がった。
ミナトも笑う。
「ちゃんと先生してるじゃん」
「鮎の場所を言っているだけだ」
「それを先生って言うんだよ」
アオは少し考えてから、
「そうか」
と答えた。
*
授業が終わるころには、子どもたちはすっかり鮎に夢中になっていた。
「またやりたい!」
「今度はもっと大きいの釣る!」
「アオ先生、次も教えて!」
由紀子が笑う。
「じゃあ、今日教えてもらった川の約束も覚えておいてね」
「はーい!」
子どもたちが帰っていく。
にぎやかだった川辺が、少しずつ静かになっていった。
残ったのは、ミナト、辰蔵、由紀子、さとる、玲奈。
そしてアオ。
アオはしばらく川を見ていた。
「アオ?」
ミナトが呼ぶ。
返事の代わりに、アオは川へ入った。
ざぶん。
「何してんだ?」
五分もしないうちに戻ってくる。
両腕には鮎が何匹も抱えられていた。
辰蔵が笑う。
「おお、立派じゃ」
ミナトはあきれた。
「結局、捕るんかい」
「子どもは帰った」
「だからって急に本気出すなよ」
「鮎は、まだいる」
「知ってる」
「こんなにいる」
「見れば分かる」
さとるが大笑いした。
「アオらしいなあ!」
玲奈も笑っている。
「でも、子どもたちがいる間は捕らなかったんですね」
アオは少しだけ顔を背けた。
「子どもが釣る日だった」
ミナトはその横顔を見た。
何も言わず、笑った。
*
「せっかくじゃ。わしらで焼いて食おう」
辰蔵の一言で、河原に小さな焚き火ができた。
さとるが流木を選び、火を起こす。
由紀子が鮎を洗い、辰蔵が慣れた手つきで串を打つ。
玲奈が塩を振りながら聞いた。
「これくらいですか?」
「もうちょいでええ」
「お父さん、適当じゃないでしょうね」
「長年の勘じゃ」
「一番信用しづらいやつ」
ミナトが笑った。
アオは焚き火から少し離れた場所に座っていた。
火は、まだ好きではない。
火の粉が上がるたび、背びれがわずかに低くなる。
ミナトが隣へ座った。
「大丈夫か」
「火は、痛い」
「近づきすぎなきゃ大丈夫」
「でも、魚をうまくする」
「そこは認めるんだな」
「火は分からない」
「釣りも火も分からない。今日は、分からないもの多いな」
「人間が分かりにくい」
「まあ……だろうな」
ミナトは苦笑した。
そのうち、串に刺した鮎が、焚き火の周りでゆっくり焼けていく。
皮が少しずつ香ばしくなり、脂が火へ落ちる。
ぱちっ、と小さな音がした。
昼間あれほど鳴いていた蝉の声も、いつの間にか遠くなっていた。
夕方の空は、山の端だけ赤みを残している。
川面には、青とも紫ともつかない色が混じり始めていた。
水の流れる音だけは、昼間と変わらない。
辰蔵が一本を抜き、アオへ差し出した。
「ほれ。今日の先生への礼じゃ」
アオは慎重に受け取った。
「熱い」
「焼きたてじゃからな」
ミナトが言う。
「ふうふうしろ」
「ふーふー」
アオが見よう見まねで息を吹く。
あまり冷めていない。
それでも待ちきれずにかじった。
ぱりっと皮が割れた。
アオの目が少し細くなる。
「うまい」
辰蔵が満足そうにうなずいた。
「じゃろ」
「火の魚は、うまい」
「それ去年も言ってたぞ」
ミナトも鮎をかじった。
塩気。
香ばしい皮。
ほろ苦い身。
ただの焼き鮎なのに、川辺で食べると妙にうまかった。
少し離れたところでは、さとるが焼けた鮎を玲奈へ渡している。
「熱いので気をつけてください」
「ありがとうございます」
「骨、多いんで」
「はい」
「もし食べにくかったら、俺が――」
玲奈が笑った。
「大丈夫です。ゆっくり食べます」
「……はい」
由紀子がちらりと見る。
「赤木さん、今日は声が小さいですね」
「え?」
さとるの声が一段大きくなった。
ミナトがにやりとする。
「白崎さんの前だと、声量調整できるんですね」
「ミナトくん」
今度は妙に低い。
アオが鮎を食べながら言った。
「赤木さとるは、白崎玲奈の前で弱い」
玲奈がふっと笑った。
さとるの顔が赤くなる。
「アオ、それ今言うな」
「なぜ」
「恥ずかしいからだ」
「恥ずかしいが、喜ばしいことだ」
ミナトが吹き出した。
「完全に覚えたな、それ」
焚き火を囲んで、笑い声が広がった。
辰蔵が茶をすすりながら言う。
「ええ時間じゃな」
誰も、すぐには返事をしなかった。
川の音がする。
焚き火が小さく爆ぜる。
焼けた鮎の匂いが、夕方の風に混じる。
ミナトと暮らし始めてから、一年以上が過ぎていた。
その間に、アオの周りには少しずつ人が増えていた。
アオは鮎を食べながら、ふと周りを見た。
辰蔵がいる。
由紀子がいる。
さとると玲奈が何か話している。
隣には、ミナトがいる。
「何だ?」
ミナトが聞いた。
アオは少し考えた。
「人間は、変だ」
「急だな」
「鮎がいるのに待つ。火で焼くのにも待つ。話も長い」
「最後は余計だ」
辰蔵が笑う。
「その通りじゃ」
「お父さんは認めないで」
アオは焚き火を見る。
「でも」
少し間を置く。
「これは、悪くない」
ミナトが笑った。
「だろ」
アオは焼き鮎をもう一口かじった。
「待つ時間も、食べる味になるのか」
由紀子が少し驚いたようにアオを見る。
玲奈はやわらかく微笑んだ。
「そうかもしれませんね」
「なら、少し分かった」
「釣りも?」
ミナトが聞く。
アオは即答した。
「まだ分からない」
一斉に笑い声が上がった。
*
やがて、空に一番星が見えた。
焚き火の炎も、少しずつ小さくなっている。
「アオ先生、来年もやるか?」
さとるが聞いた。
アオは川を見た。
「子どもがやるなら、やる」
「次は、お前が全部捕るなよ」
ミナトが言う。
「今日は捕らなかった」
「最後に大量に捕ったけどな」
「子どもは帰った」
「理屈は通ってるんだよなあ」
アオは少し考えた。
「来年も、待つのか」
「たぶんな」
しばらく、川を見る。
「来年も、みんなで食べるのか」
「うん」
「なら、待つ」
辰蔵は、目を細め、かすかにうなずいた。
由紀子は少し遠くを見るように、小さく微笑んだ。
さとるは、口を開きかけて、結局そのまま閉じた。
玲奈は、手にしていた串を見つめてから、そっと顔を上げてアオを見た。
ミナトは、いつものように笑っていた。
川の音に混じって、焚き火が小さく爆ぜた。
話は、なかなか尽きなかった。
河原には、六人の長い影が伸びていた。
揺れる火の明かりの中で、その影は少しだけ重なっていた。




