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虐殺者アゴーニアは僕の親友だった。  作者: 天見ハイト
序章

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2/5

『親友エイプリルの回想と証言』 / 序章より抜粋

 エイプリル・グローハウンド。

 待ち合わせ場所に現れた老(・)人(・)は、筆者としては思いの他に普通の人物のように見えた。


 あの虐(・)殺(・)者(・)ア(・)ゴ(・)ー(・)ニ(・)ア(・)を匿っていたにしては──いや、だからこそなのだろうか。風になびく白い長髪と、優しげに揺れる黒の瞳。老齢のせいか動きは鈍かったものの、その端々からは偉大なる冒険家の一端を垣間見ることができた。

 実際、このインタビューを行っている筆者もまた……彼の記した冒険録の読者の一人だ。だからこそ、こうして訊(き)かずにはいられなかった。


『……あぁ、分かっているよ。そう遠慮しなくていい、僕は何でも答えよう』


 流れていた風評の通り、彼は穏やかな人物だった。

 それこそ、あの大犯罪者を匿っていたとは思えないほどに。


 実のところ、このインタビューに至るまでに行った膨大な資料調査や、この数日で交わしたやり取りはいくつもある。

 ただ、その解説は後文に回すとして──この序章では、ひとつだけ。彼とのやり取りの中で、最も印象に残っているものを抜粋しようと思う。


『あぁ。そう、だね。君の疑問も尤(もっと)もなものだ』


 筆者は聞いたのだ。

 どうして──どうして。あの虐殺者アゴーニアと共にいたというのに、寝首を掻くチャンスなどいくらでもあっただろうに。これは後年の調査によって分かったことだが……秘境冒険家エイプリルが設けた最初の妻と娘もまた、あの政策により拷(・)問(・)の(・)末(・)に(・)殺(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)と(・)い(・)う(・)の(・)に(・)。

 どうしてアゴーニアを殺(・)さ(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)の(・)か(・)、筆者がそう尋ねたのなら。目を細めて微笑んだ後、白髪の老人はこう答えてくれた。


『友達だったから。』


 このようにして、当初では虐殺者アゴーニアの素顔に迫っていこうと思う。

 先に断っておくが、筆者ランツィルネもまた半森人の一人だ。そんな私が行っていると来れば、この取材には多数の困難が付き纏った。この場を借りて、海洋冒険家イレーネ氏と探索者ジャック、──────には格別の感謝を──



 □ □ □ □ □



 ──帝国歴三八〇六年発行 、『アゴーニア・ペルディツィオの冒険: 親友エイプリルの回想と証言』より。

 ────フィーシード第三森人共和国 イルフィリア州立図書館蔵。


【注:この蔵書は国家により管理されているものです。破壊・改変を試みた場合には、フィーシード刑法により規定通りの罰金刑が──

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