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画像生成AIの男爵令嬢は、存在しない罪を描く  作者: ゲント・カイ


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第9章 偽物を作れる者

「できません」


ミレーユは答えた。


国王の目が細くなる。


「理由は」


「そのような不敬な画像を作るなど……」


「王命である」


「ですが」


「余が許可している」


もう逃げられない。


ミレーユは周囲を見る。


アドリアン。


エレノア。


宰相。


神官。


公爵。


全員が自分を見ている。


ほんの数時間前まで、ここはエレノアを断罪する場所だった。


今は違う。


自分が中央に立たされている。


「記録板を」


神官が白い板を置いた。


ミレーユは両手を近づけた。


魔力が反応する。


頭の中へ言葉が浮かぶ。


――王宮大広間。


――国王。


――エレノア・グランフェルト。


――国王が彼女へ跪いている。


嫌だ。


作りたくない。


だが能力は、命令を待っている。


「どうした」


国王が言う。


ミレーユは目を閉じた。


生成。


白い板が光る。


数秒後。


画像が現れた。


誰も声を発しなかった。


そこには王宮大広間があった。


国王が膝をつき、エレノアへ頭を下げている。


エレノアは驚いた表情で立っていた。


光の入り方。


衣服。


床の模様。


王冠。


すべてが本物と見分けがつかない。


だが、その場にいる全員が知っている。


そんな出来事は一度も起きていない。


「……なるほど」


国王の声は静かだった。


ミレーユの膝が震える。


「これが、そなたの力か」


「違います」


自分でも何が違うのか分からなかった。


「私は……確かに画像は作れます。でも、今までのものは」


「では、誰が作った」


宰相が問い詰める。


「知りません!」


「同じことができる能力を持つ者が、他にもいると?」


「いるかもしれません!」


「神殿の記録にはない」


「登録されていない者が……」


「映像も作れるのか」


エレノアが尋ねた。


ミレーユは口を閉じた。


「できないのなら、そう答えればいい」


「……できません」


「では試しましょう」


ミレーユの呼吸が荒くなる。


「嫌です」


「先ほどはできないと」


「嫌だと言っているでしょう!」


叫び声が広間へ響いた。


自分の声とは思えなかった。


「どうして……」


涙が滲む。


「どうして、あなたばかり」


エレノアの眉がわずかに動いた。


「公爵家に生まれただけでしょう」


もう止められなかった。


「最初から王太子殿下の婚約者で、最初から王妃になると決まっていて、何をしても当然のように人が頭を下げて。私は何をしても男爵令嬢のまま!」


「ミレーユ」


アドリアンが名を呼ぶ。


その声に、逆に何かが切れた。


「殿下だって!」


アドリアンを見る。


「私に優しくしてくださいました。私を信じると。エレノア様より私を見てくださったではありませんか!」


「君は……」


アドリアンの顔が青ざめる。


「僕を騙したのか」


「違います」


「映像を作ったのか」


「私は殿下を……」


「作ったのか!」


初めて聞く強い声だった。


ミレーユは肩を震わせた。


沈黙が答えになった。


近衛騎士が動く。


「待って!」


両腕を掴まれる。


「離して!」


「ミレーユ・ヴァルデン。王族を欺いた罪、偽証、国家反逆罪の捏造、および司法妨害の嫌疑により拘束する」


「私は反逆などしていない!」


「他者へ反逆の罪を着せた」


騎士団長の声には一片の感情もなかった。


「結果として公爵家と王家の関係を破壊し、国家に重大な混乱を招いた」


手首へ封魔具がはめられる。


能力とのつながりが途切れた。


ミレーユは初めて、本当に何も作れなくなった。


「殿下!」


連れて行かれる途中で叫んだ。


アドリアンは見ていた。


だが近づいてこない。


「私はあなたを愛しています!」


それは、嘘ではなかった。


少なくとも今は。


王妃になりたかった。


王太子を奪いたかった。


だがいつからか、本当に彼を欲していた。


だからこそ余計に、自分がしたことの意味が分からなくなった。


アドリアンは長い間黙った後、低く答えた。


「君が見せたものの中で」


声が震えている。


「僕は、何を信じればよかったんだ」


ミレーユは何も言えなかった。


扉が閉じる。


王宮大広間が見えなくなる。


最後に目に入ったのは、自分が生成した一枚だった。


跪く国王。


存在しなかった光景。


誰が見ても本物に見える嘘。


そして、それを作ったのは間違いなく自分だった。


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