表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/15

事件の終わり

「それで、その男はどうなったんですか?」

 小鈴は、目の前に座る鈴鹿に尋ねた。畳敷きの部屋の中、座卓を囲み鈴鹿の土産話を聞いていたのである。

 事件は終わり、鈴鹿は自分の屋敷へと戻ってきていた。

「うん? 桜命館に電話して、男を回収してもらって。それで、終わり。その後は、どうなったか分かんない」

 そう言うと、鈴鹿はお茶請けのお菓子を手に取る。『夜のお菓子』というキャッチフレーズで知られたものだ。悪路王との戦いの後、もう一日、桜命館に泊まったその帰りに、ミュンヒたちがお土産として持たせてくれたものであった。

 袋を開け、香ばしく焼かれた細長いパイをかじり、緑茶を一口すする。

「ああ~。やっぱり、これにはお茶が合うね。いくらでも、食べられちゃうよ」

 鈴鹿の前には、すでに空となった袋が4つほどまとめられていた。

「まあ、でも。どうかな……。あの様子じゃあ、話を聞くっていうのも無理だろうし。悪いのは妖刀だったってことで、決着つけるかもね」

「そうなんですか?」

「たぶんね。あの姿になったのは妖刀の呪いのせいだって、私が妖警に言っちゃったから」

「悪路王のことは、話さず?」

「うん。そっちの方が、都合が好いと思ったから。あの刀、事件の証拠として保管されると思うからさ。妖力を吸収するなんて世間に知れたら、絶対に使おうとするやつが現れるでしょ。でも、そんな強い呪いだったら、誰も近づこうと思わないかなって。次の被害者を出さないための保険みたいなものだよ」

「確かに。強くなっても、意味ないですものね」

「そうそう。それに、悪路王のことまで話すと面倒じゃない。何で悪路王が降りてきたのか、とか。本当は、私が悪路王と戦うために仕組んだんじゃないのか、とか」

「ええ? そんなこと言う人、いますか?」

「これが、いるんだって。小鈴は、そんなことないの?」

「私は、今の所、そんな人に当たったことはないですね」

 そう言って、小鈴も二袋目の『夜のお菓子』に手を付ける。鈴鹿も、次の袋を開けていた。

「それよりも、桜命館のちびっ子二人だよ。かわいかった~。小鈴の小さい頃を、思い出すよね」

「どれだけ前のことですか」

 事件を解決し、桜命館にもう一泊した際、鈴鹿はリンカとミカの二人と一日中遊んでいたのである。帰り際などは、今度は何時いつ遊びに来てくれるのかと、足にしがみついて離れないほどであった。

「今月、また向こうの方に行くじゃない。その時は、一緒に寄ろうよ。もうホント、堪らないから」

 その時、廊下を走る音が聞こえてくる。トトトッと、軽い音を響かせて二人のいる部屋の前まで来ると、それは止まり、声を掛けてきた。

「鈴鹿様。お手紙が届いています」

「ん。入って~」

「はい。失礼します」

 一人の小鬼が、障子を開けて入ってくる。その手には、一通の白い封筒があった。

「誰から?」

「はい。玉藻前たまものまえ様からです」

「ほら、噂をすればって奴だよ」

 そう言って、鈴鹿は受け取った封筒を開ける。その手紙は、今度の秋分の日に行われる集会の招待状だった。

 それは、『御前会ごぜんかい』という名の、御前と呼ばれる者たちが集う会である。年回りで当番が回っていくのだが、今年は玉藻前が当番なのであった。

 そして、玉藻前の屋敷は、鈴鹿の屋敷から見て桜命館よりも東に位置している。そのついでに、リンカとミカに会いに行こうと、鈴鹿は考えていたのだった。

「いやあ、楽しみだね。そういえば、着物。まだ、何着ていくか決めてないっけ」

「土壇場になっては、嫌ですからね。今の内に、決めてしまいましょう」

「そうだね」

 御前会への参加は、和装が決まりとなっていた。一時は、洋装での参加も許されていたが、皆の屋敷が畳敷きで、座ると見栄えが今一つになるということで、和装を正式な物としたのである。

 鈴鹿と小鈴は、桐の箪笥を開け、次々に着物を出していく。

 あれでもない、これでもないと、瞬く間に部屋は着物に占拠され、足の踏み場もなくなっていくのだった。



 さて、鈴鹿と悪路王の話は、これにて仕舞い。

 御前会にて、何かが起こるのか。それとも、何も起こらず、平穏無事な会で終えるのか。

 それはまた、別の話――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ