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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【19万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第三部 魔界突入編

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213/214

213話 最初の堕天使

「勇者は今、何のために戦っている?」


 魔王メアリーはそんなわかりきった、当たり前の質問を投げかけてくる。

 当然のように召子が答えた。


「あなたたち魔王軍からの攻撃を防ぐためです」


「そうだね。君たちにとってはそうだろう。けれど、なぜ魔界からわざわざ遠い人間界まで進軍していると思う?」


「それは研究者を名乗るスティルという悪魔が言っていましたよ。私を、勇者を魔王と戦えるレベルまで強くするためだと」


「そうだ。だけどそれだけでは落第だね。他にもっと重要な役割がある。わかるかい?」


 全員が押し黙る。

 クラリスは答えを知っているようで、未だ瞼を閉じている。いつの間にか、受け止めた手の出血は止まっていた。


 セレスティアがクラリスの手を一瞥してから口を開く。


「ここの魔界は魔力濃度が高すぎます。農作物や水源にも多大な影響があるでしょう。それを解消するための領土拡大が狙いではないですか?」


「模範的な解答だ。それもまた間違ってはいない。むしろ正しいと言っていいだろうね。でも、真の狙いとは遠く離れている」


 再びの静寂が室内を包む。

 魔王メアリーは周りを見渡し、別の答えが出てこないことを確認してから語り始める。


「悪魔の生い立ちについて、君たちはおおよその知識を身に着けたはずだ。悪魔は元々、天使の翼がもがれたことに絶望した者たちが、こうして悪魔として堕ち、変異した姿だ。私はね、この天使を絶対に許すつもりはないんだ。なぜか? それは、結局天使が悪魔を誕生させてしまったからだよ」


 ――ズズ…


 何か、瓦礫を掴むような音が聞こえ、魔王メアリーはすぐにレルゲンの方向を見たが、まだ意識を取り戻している様子はない。


 再び視線を召子に戻して話を続ける。


「これを知っている悪魔はそういない。だけど君たちには教えよう。悪魔の翼がもがれたのは、天使同士の争いによるものだ。儀式の一環と言っていい。勝者は敗者の翼を奪い、自らの翼に移植することで新たな力を手に入れることができた。だから力を欲したある天使の一団が、自分より力の弱い天使の翼を片っ端から奪っていった。だが、争いが起きたのは人間界や魔界ではなく、それよりももっと上の次元にある天界。地上界とは次元が異なっているからね。こちらへの影響は少なかった。それでも天界は文字通り火の海となり、多くの翼をもがれた天使たちは次第に増えていき、やがて純粋だった天使は汚れた感情を持つようになった。これが悪魔誕生における本当の成り立ちさ」


 黙って話を聞いていた召子は一つの疑問を口にする。


「なら、どうしてそんな話を魔王であるあなたが知っているの?」


「言っただろう? 悪魔誕生の原典は天使による内乱に近いものだったと。私はその争いを経験した、言わば経験者だ。だからこそ、私は今も天界で暮らしている翼をもいだ連中を許さない。許してはいけない。人間界を襲い、勇者をここに連れてきた理由はそろそろわかった?」


「魔王のあなたが天界の天使を今も憎んでいることはわかりました。ですが、その恨みを晴らすために人間界を利用し、私をここに呼び寄せて一体何をしようとしているのですか」


「何度も言わせないでくれ、天使への復讐さ。君と共に天界へ殴り込みに行くためにね」


「……!!」


 ――まさか自分をここまで連れてくるために、何人も犠牲にして成し遂げたというの……?


 あまりにも突拍子もない目的に、召子は思わず倒れそうになるが、マリーが支えて聖剣を床に突き刺して固定する。


「さて、今までの説明を踏まえてもう一度聞こう。勇者は今、何のために戦っている?」


 召子は倒れそうになりながらも、魔王メアリーに向けて一つ一つ言葉を探すように返答する。


「それなら私が、私たちが人間界も魔界も全て護ってみせます。あなたの力を借りなくても!」


 召子が意思のこもった声ではっきりと魔王メアリーを拒絶する。


「残念だよ……本当に」


 魔王メアリーは心底悲しそうな表情を浮かべる。

 次に新たな魔術を唱えたのは、魔王メアリーだった。


「グラビティ・ストンプ」


 魔王メアリーは再びクラリス共々最大の重力魔術を部屋全体にかけ、重さに耐えかねた床が完全に抜け落ちる。

 重圧が落下中もかかり、魔王城全体が大きく揺れた。


 地上に降り立ち、なおもかかり続ける重力魔術に耐えていた召子の耳に、世界の言葉が届いた。


 〈レベルアップボーナスを選択してください〉


 ――こんな時になんて意地悪な!


 心の中で大きく恨み節を吐き捨てたが、ハッとしてあることに気づき大声で叫んだ。


「動けるようになる〈スキル〉を取得して!」


 ボイスコマンドで命令を出すと、二つのスキルが自動的に選定されて取得される。

 横目で見ると〈天の翼〉と〈重力操作・中〉の二つが流れている。


 身体はまだ重いが、これなら動ける。

 瞬間、召子は魔王に向けて走り込んでいた。


「アメリアァァァア!!」


「……! 召子ォォオオ!!」


 お互いの絶叫が、プライドが、激しく衝突する。

読んで下さってありがとうございます!

もし続きが気になりましたら、ブックマーク、評価をお願いします!

ぜひ皆さんで作品を盛り上げて下さいね!

よろしくお願いしますー!


スピンオフ短編もあります!

「悲恋の掌握者、ディシアは自分の足で歩いていく」

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