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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【19万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第三部 魔界突入編

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206話 隷属の加護

「隷属の加護……」


 新たな加護の名前から力を推測するが、まず頭に思い浮かんだのは、人が誰かに付き従うこと。試しに自分のコピーに向けて従うように念じてみるが、特に手応えはなく加護の効果はないとわかる。

 次の可能性を考えていると、痺れを切らしたマリーのコピーが向かってきた。


 セレスティアがかけたエア・スピードのおかげもあり、余裕をもって対処するが、連続剣の加護もコピー側が持っている可能性を考え、まともには打ち合わない。


 マリーが連続剣の加護を発動する時は、一気に勝負をつけると決心した時。

 つまり、隷属の加護を自分の物にした時が本当の勝負。


「セレス姉様。新しい加護を授かりました。ただこの加護の効果がまだわからないの。だから少しの間、フォローをお願い!」


「加護を授かった……!? わ、わかりました。少しの間でしたら、私の魔術で凌げます。マリーは加護の効力先を見つけてください!」


 セレスティアが後衛からマリーの横に並ぶように駆け寄る。


 セレスティアのコピーはマルチ・フロストジャベリンを大量に展開し、回避が難しい範囲の広さで射出するが、これに対抗するべくブルーフレイム・アローズを同じ数だけ展開して相殺する。


 単一の性質変化魔術だけでは埒が明かないと判断したコピーは、マリーのコピーと共に合体魔術を発動し、オリジナルの二人に迫る。


「ユニゾン・テンペスト」


 抑揚のない声で繰り出された合体魔術は、鋭い風の暴風刃となって床を削りながら突き進んでくる。合体魔術は言ってしまえばエア・スピードのように風と風を掛け合わせた複合魔術。


 風の反魔術は、同じく風魔術での相殺が基本だが、複合魔術の利点を活かした別の方法を考える。セレスティアは瞬間的に思考速度を上げ、再び複合魔術を披露する。


「ダブルキャスト・マジック――スノーシェイプ・シールド」


 扇の形をした分厚い盾を目の前に出現させる。聖属性の魔力を纏わせて強化された雪の結晶盾は、一枚だけ目の前に現れて合体魔術を防ごうと鎮座する。


「セレス姉様……!」


「大丈夫です。マリーは加護の考察を進めて下さい」


 テンペストが迫る。

 氷の盾に風の暴風刃が衝突し、大きな衝撃音と共に飛び散った氷の破片がキラキラとセレスの頬を照らした。


 セレスティアの言葉を信じて、マリーはまた意識を深く集中していく。


 ――他に隷属といえば、何かに従う力。レルゲンはこの魔界に来てから大気の魔力を念動魔術で集めていた。きっとあれも魔力の隷属に近いはず。もっと解釈を拡げて、自分のものにできることは……!


「セレス姉様! これならいける気がするの! 私にやらせて!」


「ええ! 待っていました!」


 氷の盾に大きなヒビが入り、ユニゾン・テンペストが撃ち終わったと同時に粉々に砕け散る。

 盾の後ろに立っていたマリーが綺麗な金髪を結い直し、短く「よし!」と気合を入れた。


「行くわよ」


 足に意識を集中すると、エア・スピードの風が足元へと集まっていき、コピーへ一気に肉薄していく。


 空中に跳び出しながら、突進速度を倍化させ、加速度的に速度を上げていく。


 一息にコピーの懐まで潜り込み、下段からの切り上げを入れる。コピーは自身の髪を掠めるギリギリの所で躱し、距離を取ろうと後退する。


 ――ここからが、隷属の加護の見せ場!


 神剣に意識を集中すると、エア・スピードが狙い通り全て神剣に集まってゆく。

 後ろに跳んだマリーのコピーに向けて、集めた風の補助魔術を攻撃魔術へと転換して放つ。


 コピーは一瞬、魔術の発動時に生じる魔力の高まりを感じ取れず、攻撃魔術に転換されたエア・スピードを真正面から受ける。


 凄まじい勢いでマリーのコピーは吹き飛ばされ、後方の壁に小さくクレーターを作る。


 生身なら全身の骨が複雑に折れる一撃だが、液体が落ちるかのように壁からぬるりと床へ流れ落ちたコピーは、マリーの姿に戻ろうと蠢いた。


「自分の姿だと気持ち悪いわね……」


 マリーが顔をしかめながら自身のコピーを見るが、セレスティアはマリーからエア・スピードの効果が完全に失われていることを確認して、再び同じ魔術を付与する。


「今のが隷属の加護……? 補助魔術を攻撃魔術に変換したのですか……!」


 興奮気味のセレスティアは、どういう原理で起こったのか知りたい気持ちに駆られたが、静かに自分を諌める。


「効いているのかよくわからないわね……」


「手応えはありますが、私もあまり有効になっている気がしませんね」


 二人とも戦闘を有利に進められている実感はあるが、消耗戦になるほど後々の戦いが不利になっていくと考え、一気に勝負をつけると心に決めた。


「セレス姉様!」


「はい、行きましょう!」


 足に魔力と補助魔術の合わせ技で高速移動をしながら、マリーは勝負を決めるべく連続剣の加護を発動しようと距離を詰めた。

読んで下さってありがとうございます!

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よろしくお願いしますー!


スピンオフ短編もあります!

「悲恋の掌握者、ディシアは自分の足で歩いていく」

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