表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/29

第19話 無明の層、探索前会議

今回から探索編が始まります。





 翌日の朝9時。

 ギルド前には、三つの影が並んでいた。


 アロン。

 リンカ。

 そして────ミカ。


 朝の冷たい空気の中、三人は無言のままギルドの扉を押し開けた。



「お待ちしておりました、どうぞこちらへ」



 受付嬢は三人の姿を見るなり、昨日と同じように深く頭を下げ、奥へと案内する。


 だが、通されたのは昨日とは違う部屋だった。


 広い。

 机の上には大量の資料。

 そして中央には──模型のような立体物が置かれている。


 会議室だ。



「来たな……よーし、よく来た!」



 オルテが勢いよく立ち上がる。

 昨日よりも顔色は良いが、目の奥にはまだ疲労が残っていた。



「……一応聞くが、ダンジョンに行ってないよな」


「当然だ。許可が無効になってしまうからな」


「よーし! よし! なら良い!!」



 オルテは胸を撫で下ろし────

 次の瞬間、ミカを見て固まった。



「……なんだその女は?」


「彼女か? 彼女はミカ。昨日仲間になったんだ」









































「は?…………はぁぁぁぁぁ!? お前ッ…何勝手に死人を増やすような事を!!!」


「死人って、なぜ死ぬ前提で話すんだ。俺達は死なん」


「そう言って死んでった奴がたくさんいるって言ってんだろーが!!! 君! 悪い事は言わない! コイツのパーティー抜けろ!!」



 オルテは机を叩き、ミカに向かって叫んだ。


 その声には、昨日のような取り乱しではなく────

 “本気の心配”が滲んでいた。



「いや、私は抜けません」



 ミカは一歩も引かない。

 その瞳は、昨日よりも強く、揺らぎがなかった。



「私の事を心配してくれるのはありがたいのですが……私には行かなきゃいけない理由があるんです」



 オルテはしばらくミカを見つめ────

 やがて、深く息を吐いた。


「…………そうか、なら俺はもう何も言わん……はぁ……」


 その声は、諦めではなく、覚悟を受け入れた者の声だった。


 そして────オルテは机の前に立ち、三人を見渡す。


 その表情は、昨日とは違う。

 ギルド長としての顔だった。


 空気が、静かに張り詰める。


 そして───



「……では、改めて──」



 オルテは模型に手を置き、低く告げた。









































「無明の層について話そう」



 その言葉は、会議室の空気を一瞬で変えた。




「その前にテーブルの上に置いてあるその模型はなんだ?」


「ん? これか……だいたい察しがつくだろう?」


「無明の層か」



 リンカが淡々と呟く。


 机の中央に置かれた模型は、灰色の石を積み上げたような八段の塔だった。

 階層ごとに微妙に形が違い、ところどころに小さな穴や通路が彫られている。

 まるで“本物のダンジョン”をそのまま縮小したような精巧さだった。



「これを見ればだいたい分かる通り、無明の層は全8階層で構成されている。我々調査チームが各階層毎に出現する魔物をまとめたのがこちらだ」



 オルテは資料の束をアロンたちへ渡す。


 紙には、魔物の出現場所・時間帯・天候条件まで細かく記されていた。


 ────以下、資料の内容を一部抜粋




 オクトスパイダー

 (通常の蜘蛛と異なり、脚が8本ではなく8対=16本で構成される魔物)


 出現階層:2階層

 出現場所:2階層を降りた直後の道を左に進んだ広場

 出現時間:朝から夕方にかけて

 追加事項:雨天時のみ出現


 こういう情報を集めて売っているのがダンジョンマップだ。

 ギルド横売店にて絶賛販売中!!




「普通のダンジョンと大差ないように見えるが……不審な階層とかないのか?」


「そんなものがあるなら、とっくに対処している……無いから手詰まり状態なんだよ」



 アロンの質問に、オルテは呆れたように肩を落とす。



「行方不明者の痕跡とは無いのか? 血とか肉とか冒険者の所持品とか落ちているだろう?」


「全く無しだ……魔力の痕跡も確認したが、既にダンジョンの魔力と一体化して解析不可能な状況だ」


「全く手がかりなしか」


「意味のない調査だな、私達呼ぶ意味なかったんじゃないか?」



 リンカの言葉に、オルテはムッと眉を吊り上げた。



「一応、怪しい場所は検討がついてある」



 そう言いながら、ダンジョン模型の“七階層”を指差す。


 すると───

 模型の上部にホログラム映像が出現し、

 その部分だけがズームアップされて映し出された。


 立体的に投影された場所は、ただの壁だった。

 凹凸もなく、ひび割れもなく、特徴のない灰色の壁。



「この壁がどうした?」


「この映像からは判断できんだろうが……この壁だけ、魔力の流れがおかしくなるタイミングがあるのだ」


「ほーう」



 そう言って、そのホログラムに分かりやすく魔力の流れを模した矢印が現れる。



「並の経験と観察力を持つ冒険者じゃあ、まず見つける事もできない僅かな違和感だ」


「なるほど……トップはあれだが、中々優秀なのだな……お前の部下は」


「見つけたのは俺だ!!!」



 リンカの淡々とした言葉に、オルテは机を叩く。



「で……どうなんだ?」


「うん?」


「いや……怪しいのなら何かしらアクションをしたんだろう? 何があったんだ?」



 リンカの当然すぎる質問。









































「…………」



 しかし────オルテは、なぜか黙った。



「おい……何故そこで黙る」


「…………」


「まさか……お前」



 リンカの目が細くなる。

 アロンがフォローを入れるように口を開いた。



「おいおい副リーダー?君が目の前にしている男はこの街……セイドウのギルド長だぞ? “おさ”だぞ? 要らぬ心配だ」









































 アロンのフォローを受けても、オルテはなお沈黙を続ける。



「え?……まさかですよね?」



 ミカも不安げに口を開いた。



「…………え? まさかだよな?まさか“怪しいとこ見つけておいて、何もしませんでした”な訳ないだろう?ちゃんと詳しく調べてる筈だ」


「まぁ調べてないんだがな」


「(何言ってんだこの男)………どうして?」




読んでくれている方、モチベーションに繋がってます、本当に嬉しさと感謝でいっぱいです!

ありがとうございます!

さらに【ブックマーク】や【下の評価(☆☆☆☆☆)】をしていただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ