第11話 辛気臭い奴らと不穏な沈黙
ちょくちょくこの小説では、
・ダンジョン
・バックヤード
・カーテン
などなど横文字という名の英語を使ってますが、
それは私…燕尾が翻訳しているからであり、
この世界の言語は英語はもちろん日本語でもないです。
ゆえにこれから横文字や現代の言葉をアロン達が使おうと、
私が翻訳していると解釈してくださいね
“ザ・無能な人材”を求めるアロン達……
「さて……どの辺が、今回の“候補”になり得るか」
ふたりの足音が、ギルド内の石床に淡く響いた。
戦いはまだ始まっていない。
だが、選定はすでに始まっていた。
ギルドの内部には、ざわめきが常に漂っていた。
情報の売買、依頼の交渉、装備の手直し。喧嘩沙汰こそ滅多にないが、落ち着いているとは言いがたい。
アロンは一通り、ホール内を見渡す。
目に映るのは装備に身を包んだ冒険者たち。それぞれに違う癖、違う目つき。
だが────すべて、琴線に触れなかった。
探す。
探す。
探す。
……そして、
「ダメだ。辛気臭すぎる。俺は辛気臭い奴は嫌いなんだ」
その声にリンカが淡々と重ねる。
「私もだ……辛気臭い奴と一緒にいるとコッチまで辛気臭くなる。ってことは、また二人でか」
「そうなるな。今回はどうする? ゆっくり行くか? それとも背負うか?」
「私は背負われる方が良いな。足の疲労が無くて楽だ」
「別に背負うこと自体は構わないが、運動しないと太るぞ」
「もっと肉食えとか言ってなかったか?」
「体重を増やせと言ったんだ。太れとは言ってない」
「……理不尽な奴だ」
くだらない言い合いのまま、結論だけは確定した。
今回の無明の層の攻略は、ふたりだけで挑むことになる。
---
ギルドの受付前。手続き窓口は数名並んでいたが、どれも通常業務の範囲――依頼提出、証明書更新、戦利品の報告。ごくありふれたやり取りが続く。
そんな中、アロンとリンカは列を抜けて窓口に立った。
「次の方……今日は、どういった件でしょうか?」
受付嬢は慣れた笑顔で問いかける。
「ダンジョン攻略の許可を頼む」
「はい、承りました……どのダンジョンでしょうか?」
アロンは、一言だけ。
「無明の層だ」
その瞬間、受付嬢の顔から一切の表情が消えた。
ほんの数秒、静止。
目が泳ぐでもなく、ただ空間が“止まった”ような錯覚。
「……おい?」
アロンが声をかけると、受付嬢ははっと我に返ったように背筋を伸ばす。
「あっ……も、申し訳ありませんっ! も、もう一度お願いします!」
言葉を絞り出すように繰り返すその姿を、リンカは静かに見ていた。
表情は変えず、ただ空気の揺れを感じ取っているようだった。
「……無明の層の許可が欲しいのだが」
再び、受付嬢が静止する。
今度は、少しだけ早く復帰した。だがその瞳には、わずかな震えが宿っていた。
「も、申し訳ございません……少々お待ちください」
そう言って、緊張したまま足早にバックヤードへと消えていく。
その足音は、魔導爆薬でも仕掛けられているかのように、小刻みに鳴り響いていた。
「……どうしたのだろうな」
受付の背後の扉が閉まってから数十秒、アロンは窓口の前で腕を組んでぼそりと漏らす。
「まぁ……あの反応になるのも、無理はないだろう」
リンカは壁に背を預けながら、視線を逸らさずに答えた。
「ほう? 何か察したようだな、副リーダー」
「分からないのか? 無明の層は、これまでに何度も攻略を試みられたが、全てのパーティーが消息不明になっているんだ」
「それが?」
「そんな状況で、また冒険者を送り出すと思うか? ギルド側が」
「なるほど……確かに合理的じゃないな」
「危険性が明白なのに許可を出すような愚かな組織ではないからな、ギルドは」
リンカは言い切る。
「あらかた、“ギルド長が説得しに来る”だろうな」
アロンは頷きながら、書類の端をぼんやりと指でなぞる。
「なるほど、なるほど……」
バックヤードの扉が、静かに開いた。
戻ってきたのは───受付嬢、ひとりだけだった。
アロンとリンカの視線が、ぴたりと止まる。
「……一人じゃないか」
アロンが短く呟く。
「別に私は、“ギルド長が来る”とは断定していない」
受付嬢はカウンター前で頭を下げる。
その表情には明らかな気まずさが滲んでいた。
「お待たせしました……“無明の層”への進入許可につきましてですが、申し訳ございません。現在そちらのダンジョンについては、許可申請は受け付けておりません。……本当に申し訳ありません」
静かに、しっかりと断られた。
「……ほらな」
リンカは腕を組みながら、アロンの顔を見る。
「まぁ……予想通りの反応だ」
「“私の”予想通りだな」
「……ああそうだ……だがな、俺はそこで折れるタイプじゃない」
リンカのわずかなドヤ顔を鮮やかにスルーし、アロンは正面へ向き直る。
「おい。ギルド長と話をさせてくれ」
アロンの言葉に、受付嬢は一瞬だけ目を細め、すぐに表情を切り替えた。
「……ギルド長との面談ですね。分かりました、こちらへどうぞ」
まるで“予測していた反応”と言わんばかりの顔。
何かを悟っていたような口調と態度に、アロンは眉をひそめる。
「……なんだ? やけにあっさりだな」
「まるで、お前が反発してくることを読んでたようだな」
リンカは目線を逸らさず、軽くつぶやいた。
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