02.喉元過ぎ去れば黒歴史【Side彼女2】
領民ってことは、つまりえっと……。
「保護するってこと?」
「半分正解で半分不正解。ただ保護するだけじゃない、他の領民と同じように貢献義務は発生する」
「ごめん、よくわからないんだけど」
英語だけじゃなくて、社会もあんまり得意じゃないんだよあたし。
政治とかね、政党名がかろうじて聞き覚えがあるなぁー…くらいで、そこが何を抱えてるだとか、それがどんな影響与えるとかさっぱりだったんだよ。
むしろ、勉強とかテストとかってただの暗記物じゃないの? でなんとか切り抜けてきただけですからっ!
「ここの人間たちについては、前々から問題になっていたって兄貴に押し付けられた書類に書いてあった。契約したままの人間とは言っても、その魔力量を狙った奴らのせいでこの辺りの治安は悪くなってるしな」
「あぁ、あたしたちが追われてたやつらみたいなのね」
「その問題を単純に解決するだけなら、ここを離れたところから魔法ぶっぱなして更地にしちまえばいいだけ。人間の魔力量は魅力的でも、今のまま反抗的なままなら必要ないって考えるヤツらの方が多い」
なんか、その考え方はすごく嫌だな……。
あたしたちは使い捨てなの? いいように利用されて、扱いづらくなったらポイ? それって酷くない?
隠しもしなかった不愉快だって感情が伝わったのか、ビスは慌てて俺は違うからなっ! とか言ってたけど。それはまぁ分かってるからいいよ。
「つまり、非人道的行為を推奨する魔族や、魔力量の増大を目的とする魔族から保護するために、オルドビスの領地に連れ込むということか?」
「連れ込……いや、間違ってはいねぇけどよ。あとはアレだ。あの女が、ここは生まれ育った故郷にも帰れない、人間達の逃げ場だって言ってたからな。魔族からの保護だけじゃねぇよ」
「……意外に真面目に考えていたんだな」
「ね、ビックリだよね」
「俺だって真面目に考えようと思えばできるっつーの」
何回か考えるのやめようかとは思ったけどな! と自棄になったようにわしゃわしゃと髪をかき回していた。
綺麗な髪なんだから、もっと丁寧に扱おうよ。
ぽんぽんと頭を叩いたついでに撫でておいた。くそう、羨ましいくらいにサラサラだねっ!
「それで? 反抗的な態度の人間をどうやって領地へ招待するの? まさか無理やりってわけじゃないでしょ?」
「そこでディーの出番だ」
「え? ここで勇者様(笑)?」
「勇者?」
スバルが不思議そうに首をかしげていたけど、あえてスルーさせてね。
自分で言っておきながら、すっごく小っ恥ずかしいから。
「獣魔を連れた人間は、ウヌディビティバルドゥに最も近い存在として知られている。だから、人間たちにとってディーの行動や言葉は無視できないものとなるんじゃないかって思ったんだ」
「あたしに説得しろと?」
「相当な無茶の空想論に近いとは思うぞ、マスター」
「スバルもそう思うってことは、やっぱりやめた方が……」
「やめねぇぞ、絶対」
さりげなく中止の方へと誘導しようとしてるんだけど、ビスはがんとして意見を変えてくれない。
あぁ、もう本当にどうしよう。説得なんて苦手なんだけど。説得というか、もうスピーチ? プレゼン? そんな小難しいことをただの小娘にできるはずないでしょうが。
「机上論だとしても、不可能じゃない。成功の可能性を少しでも上げるよう手を回せば、いくらでもひっくり返すことはできる」
「……それは誰の言葉で?」
「有名な戦人ナポラオンの名言」
「惜しい! 一字違うだけで 微妙に惜しい!」
誰かとこのしっくりこない感を共有したい……!
ビスっぽくない言い方だとか思ったら、きたよ異世界の罠。
「それでも、具体案が明確にないのなら可能性は限りなくゼロに近い」
スバルが真面目な声色でビスへと告げるけど、その意思は変わらないみたい。どうしようかなぁ……。
「人間の心ほど、単純で複雑なものはない。情も無下にはできないが、理論と打算部分を明示しないと、興味ですら惹けるか危うい。強欲で臆病なのが人間の性質だが、それでも可能だと思うか?」
「言ってること矛盾してねぇ?」
「矛盾してるのが人間だもの」
首を傾げるビスにしれっと言ってみせると、しゅんと表情をかげらせた。味方して欲しかったのか、ごめん無理。
目的も、手段も、その方法も。あたしには賛成しかねるかな。
現実的でも理論的でもない。
ビスの力になりたいとは思うけど、さすがにできることとできないことがあるからなぁ……。
「……切り札もある。もう俺もアズラスも動き出しているんだ。ディーなら、きっと俺よりもうまく出来る」
「そうは言っても……」
「スバルも聞いてくれ。そんで、ディーの力になってくれるか?」
「言われなくても、いつだってマスターの味方だ」
うわあああー…、スバルがいるのは心強いけど、でも!
そこは最後までやらない方向にもっていく方に味方して欲しかった!
あたしには結局逃げ道はないのね。
深くため息をつきながら、ビスの言う切り札とやらに耳を傾けたんだけど……。
「……それ、本当?」
「今のところ、かなりの有力説だ」
「確かにこれは切り札だぞ、マスター」
そんな強いカードを持ってるなら、最初から言って欲しかったかなぁ、なんて。
真面目なシーンに疲れたので、次回は壊れます。
滅茶苦茶にシリアスをぶち壊します。
いや、ぶち壊しての異×だと思うので!!
次回
『唸れ、俺のドライヤー! ひれ伏せ我がアイロンの下に!』
あながち間違ってない次回予告です(え




