第68話 あの丘の上にて
あの港町を見下ろす位置にある丘の上に私は座っていました…
「風が気持ちいいわね…。」
どこからか吹いてきた風が、草木を揺らして、私の髪を撫でました。
風の吹いて行った方を見ると、そこには紫の壁などなく、ただ広い大海原が広がっています…
「広いわね…海は…あの向こうにはどんな世界が広がってるのかしら…。」
私は、海を見ながらそうつぶやきました。
「確かめる気はないのか? 俺としては、確かめてみたいがな…。」
不意に話しかけられて後ろを見ると、そこには、ヴァーテルと竜也、アウラが立っていて、同様に海の方を眺めていました。
「僕も海の向こうには、興味があるんだ…。」
「アウラも行ってみたい!」
竜也とアウラが意見を述べるとヴァーテルは私の方を向きました。
「だそうだ…で、どうする? 行くのか?」
ヴァーテルの問いに私は立ち上がってからこう答えました。
「決まりきったことを…行くに決まってるでしょ!」
「それじゃあさっそく港へ出発だ!」
竜也が走り出して、それに続くように2人が走り出しました。
そんなみんなの顔には、笑顔が浮かんでいました。
「あれ?」
「どうしたんだ牡丹! 行くぞ!」
「ごめんごめん! 今いくから!」
今、誰かが見ていたような気がしますが、多分気のせいでしょう…
私は、みんなの背中を追いかけて丘を下り始めました。
これで、私たちの話は終わりです…ですが、旅はまだまだ続きます…なぜなら、この世界にはまだまだ知らないことで満ち溢れているからです…そんな知らないことを知るために私たちは、旅を続けます…これから訪れるであろう出会いと別れ…それは、旅を彩る素敵なものになるに違いありません…
この旅に終点なんてものはないかもしれませんが、仮にそれができたとすれば、きっとそこに至るまで、突っ走るのでしょう…
このたびの続きですが…そうですね…また、時間があったらお話ししましょうか…
私たちの旅の記録を読んでいただきありがとうございました…
△月□日 北上牡丹
旧王都の中心部にある城の一室…真っ暗なその部屋の真ん中に置かれた椅子に牡丹と同じか年下ぐらいに見える少女が座っていた。
「そう…あの子がしくじったの?」
「はい…それで、彼女の処遇についてはいかがいたしましょうか?」
少女の声に対して返事をしたのは、黒い箱のようなものである…これは、電信魔術の効果を最大限にしつつ、外部に聞かれる可能性が限りなくゼロに近くなる装置で、この部屋には5つ少女を取り囲むように設置してあった。
「別に気にしなくてもいいわ…仮にあの子が解任されても、代わりの駒を探すだけです…つくづく後悔するわ…あの時、余分なことを言い過ぎた…そうでなければ、こちらにちょうどいい駒があったというものを…。」
「…スティーリアのことについては、こちらで対処いたします…失礼まします…。」
こう言い残して、「05」と書かれた箱が消えた。
「言うことも言ったからお開きでいい?」
「私は構わぬ…。」
「右に同じ…。」
少女の質問に対して、「02」と「03」が返事をした。
「じゃあ終わり…また、呼ぶかもしれないから、ちゃんとアンテナたてといてね…。」
少女がそう言うと、箱はすべて消えて、周りは石造りの部屋へと変化した。
「お疲れさまでした…。」
「少し疲れたから休ませていただきます…。」
「かしこまりました。」
部屋に入ってきた女性は、少女に近づくことなく退室した。
それを確認すると少女は、チェス盤に置いてあった駒を一つ倒してから、置いてあったワイングラスにワイン…ではなくぶどうジュースを注いだ。
「おどろいたと言えば、おどろいたかな…まさか、あの子の計画をつぶしたのが日本人だなんて…まぁあの子の計画を止めたところで、私たちの計画の足元にも及ばないけどね…もう少し…私の計画の実行までもう少し…そうすれば、あいつらなんか目じゃないわ…覚えておきなさい…北上牡丹…。」
手にぶどうジュースの入ったグラスを持った彼女の狂ったような笑い声が城内に響き渡った。
読んでいただきありがとうございます。
投稿してから約2ヶ月…一日一回更新を続けられたのは、自分でも驚いています。お気に入り登録してくださった方、感想をくださった方、読んでくださった読者様、本当にありがとうございます。
しかしながら、牡丹たちの旅はまだまだ始まったばかりです。「ひだまりの国」は、この話を持って最終回とさせていただきますが、続編にあたる「ひだまりの国 海底都市の謎」を投稿しました。牡丹たちの旅をまだ、見たいという方は、そちらをどうぞ!
これまでありがとうございました。




