事件は日常の近くに潜んでいる
次の日。私は日野桜に指定された待ち合わせ場所についていた。
現在9時10分。あの時桜に指定された時間は9時ぴったり。
「おかしいな〜」
まさか、すっぽかされたわけじゃないよね。でも、小学生なんだから、確認する術もないし。それに、昨日日野桜が言っていたこともすごい意味深。
「なるべく軽装できてね。あ、でもあまり目立たないような服できてよ。あまり目立ってほしくないから。あと、存在感を消しておく準備とバイトが終わったら記憶を消す準備もしておいて。それと、偉い人に会ったりもするんだから、人見知りに絶対ならないでね。あと…」
めちゃくちゃなっが!半分くらいは耳から情報抜けていった気がする。
「あ、本当に来てた。」
横を見ると日野桜が立っていた。
「来るよ。私、大抵のことはちゃんとしてるから。」
私は重たいリュックを背負い直して、出発する準備をしていた。
リュックには日野桜に持ってこいと言われたものが多く入っている。まず、万年筆やボールペン、インクなどと言ったオシャレめの筆記用具およそ30人分。次にノート50冊分。リュックの中には自分が必要な水筒などが入っている。めちゃくちゃ重い。
あと、まだ日野桜に言われて持ってきたものがある。それは、私の手の中にある大量の本だ。
「今私が借りたのと似たような本をかき集めて持ってきて欲しいの。」
「え?無理だよ無理。1人じゃ4冊以上借りれないんだから無理だよ。」
昨日の放課後、私は確かに日野桜を止めようとしていた。流石にそれは無理だし、ルール違反になるから。第一、日野桜は現在よく思われてないんだから、でしゃばらない方がいい。それに、今から1人でかき集めるなんて無理すぎる。
そう反論したはずなのに、私は日野桜の主張に負けたのだった。
「はあ。」
「何溜息吐いてんの。今からマジカルファンタジーに行くんだから、少しくらいテンション上げて。」
どこでテンションを上げればいいと言ってんの。無理だよ。どこにもそんな要素ないよ。推しのグッズがない限り!!!
てかっ!
「マジカルファンタジー!!!???」
「そうだよ。言ってなかったっけ?」
「はあ?????」
膝から崩れ落ちる。この大荷物を持ってヤバいところに連れ去られるの?嫌!今すぐ帰りたい!!!
「帰っていい?もう無理だよ。」
「そんな風に萎んでたら私が膨らますしかないじゃん。」
何を言ってるんだコイツは。膨らますしかない?え?もしかして日野桜さん、あなた私のことを物理的に膨らまそうと……。
「そんなこと考えるわけないじゃん。」
日野桜が私の目の前に立ち顔がドアップで私の視界映っていた。
「え?え?」
「全部声に出てたよ。」
ほら立って立ってと、私を立たせる日野桜。
「前から思ってたけどさ、谷崎さんって、結構明るい子だよね。」
日野桜が先に行ってしまうのを追いかける。
「そうかな?」
友達もいない私が明るい子なわけない。本当に本が私のお友達てきな人だし。
「うん。だって、結構おしゃべりな子だし、反応も見てて面白いし。それに、私は谷崎さんと一緒にいて、楽しいからね!」
「あ!!!」
やばい。私としたことが……忘れてた!!!!
「推しのグッズをついでに買っていきたかったのに!!!!!!!!」
そう、ここ池梟は私にとってのオタクの聖地であり!!!!!!池梟のサンサン通りにあるアニルイトは本店だからついでに行きたかった!!!!!!!!!!!!
「今から戻って買いに行っていい?」
現在私達はアニルイトがある東口にいるのではなく、西口にいた。
「え?無理だよ。」
「そ、そんなぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「だって、もうバイト先に着いたから。」
私の後ろで鉄の柵が閉じた音がする。ガチャンと閉まる音が無常にも聞こえてくる。
「え?」
いや、嘘だ。さっき私は日野桜と一緒に駅地下のデパートにいたはずだ。東守とかいう。なのに、なんで私は今森の中にいるの????
「え???????」
「ようこそ、ツァウバー学校へ。」
日野桜が真顔で私に手を差し出してくる。
「え?」
困惑している私をよそに。
一体私はこのツァウバー学校とかいう場所で何をさせられるんだ。今まで聞いたこともない名前。行ったこともない場所。そして、池梟駅を歩いていたはずなのに、何も知らない場所に送られる不可思議な現象。そして、恐らく全てを知っている日野桜。
「これから3日間のバイト、頑張ってね。谷崎ホタルちゃん。」
日野桜の妖しげな笑みと共に私は戻れない場所に来てしまったのだと悟った。




