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僕の偽物が勇者パーティで世界を救っていた件 ~借金も婚約も、僕には身に覚えがありません!~  作者: キモウサ


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第六話:宴会のあと、事件です

どうしたら、荒ぶるドワーフさんたちをなだめられるだろうか?

ドワーフ……と言えば、アレだよね。


僕はちょっと考えてから、ドワーフの職人さんたちに声をかけた。


「さあ、皆さん。お話もひと段落しましたし、とりあえず一杯飲みませんか? お腹も空いてるんじゃありませんか?」


「……ん? 酒?」


ボルガン親方の太い眉が、ぴくりと動いた。

よし! いいぞ!


「はい。せっかくですから、お食事もどうぞ。今日は僕がおごります!」


僕はさっそくモリーさんを呼んだ。


「モリーさん! こちらのドワーフの皆さんに、まずはエールをお願いします! それからお料理も、何かおいしいものを持ってきてもらえますか?」


「はいよ! 任せときな!」


モリーさんは僕らの顔を見比べると、なぜか楽しそうに笑って厨房へ向かっていく。


すると、それまで険しい顔をしていた職人さんたちの表情が、みるみる明るくなった。


「なんだ、お前! 意外といいやつじゃねえか!」


「気が利くじゃねえか、リアム!」


「そうだそうだ! そういうことなら話は別だ!」


ボルガン親方もガハハと笑い始めた。


「よし、お前ら、座れ座れ! 今日はリアムのおごりだとよ! たっぷり飲ませてもらおうじゃねーか!」


職人さんたちはガタガタと椅子を動かし、周りの空いていたテーブルにどかどかと座り始めた。


でも、ボルガン親方だけは動かなかった。


「ワシはこの席で飲ませてもらおう! あんたを見張るって言ったからな!」


そう言ってボルガン親方は、僕とカイルさんとハンクさんが囲むテーブルの空いた椅子に、どっかり腰を下ろした。


……なるほど。ちゃんと見張るつもりなんだね。


まあ、隣でずっと睨まれるよりは、何かおいしいものでも食べて機嫌よくしていてもらった方がいい。


やがてモリーさんが、大きなエールのピッチャーと、湯気の立つ料理を次々に運んできてくれた。


「おおっ、来た来た!」

「まずは乾杯だ!」


さっきまでの怒鳴り声が、いつの間にか笑い声に変わっていた。

うん。いい感じだ。


あとはお酒や料理をどんどん運んでもらって、皆さんに楽しく過ごしてもらおう。


師匠が支払いを忘れて、僕が謝りに行く。そんなときは、こうして酒や料理をごちそうして、相手に少しでも機嫌を直してもらう。これが僕のいつものやり方なんだ。


おかげで、評判のいい菓子屋さんや、お詫びに持っていくと喜ばれるお酒の銘柄には、ずいぶん詳しくなってしまった。もっと違うことで詳しくなりたかったけどね……。


その夜は、思っていた以上に賑やかになった。


ドワーフの職人さんたちはエールをぐいぐい飲むし、いつの間にか近くの冒険者たちまで一緒になって乾杯している。


同じテーブルのハンクさんも、ボルガン親方に勧められてジョッキを掲げ、楽しそうに笑っている。

さっきまで薬草茶を飲んでいたカイルさんも、いつの間にか大きなジョッキをつかんで、エールをがんがん飲んでいた。


……あれ? 僕がおごるのって、職人さんたちだけのつもりだったんだけどなぁ。


まあ、みんな楽しそうだからいいか。


ちなみに僕は、お酒を飲むとすぐ顔が真っ赤になるので、エールは遠慮しておいて、いつものように炭酸水をお願いした。


それから、食堂の料理長が作ってくれた揚げたてのフライドポテトをいただくことにした。


おっ。ここのポテト、細長いんだね。


僕の住んでる街では、ジャガイモを皮付きのまま六つぐらいに大きく切って揚げることが多いんだけど、こっちのは細く切ってある。


ひとつつまんで、ぱくり。


……んー、旨い!


外はサクサクで、中はほくほく。ほんのりハーブの香りがして、塩加減もちょうどいい。


これはなかなかいいね。今度、家でも作ってみようかな。


「リアム! お前も飲め飲め!」


ボルガン親方が、上機嫌でジョッキを持ち上げた。


「僕はこっちでいいです」


僕がそう言ってポテトを一本つまむと、ボルガン親方はガハハと笑って言った。


「凄腕の魔術師のくせに、ポテトかよ!」


『凄腕の魔術師』という言葉を聞いて、カイルさんはまた何かを思い出したらしく、僕の肩を抱いてぐすぐす泣き始めた。

……あれ? カイルさんから、また魔力が漏れ始めてる。

僕はこっそり結界キューブを起動させておいた。みんながまたバタバタ倒れたら大変だもんね。


……いやあ、忙しい人たちだね。


でも、こんなに大勢で騒ぎながら食事をするのも久しぶりだ。


何だかんだで、僕もけっこう楽しい夜を過ごしてしまった。



* * *



朝、目が覚めた。昨夜、楽しい時間を過ごしたせいだろうか、目覚めがいい。


僕はベッドの上で大きく伸びをした。


うん。よく寝た。


ここは昨日、自分で予約しておいた宿屋の部屋だ。昨夜はずいぶん騒がしかったから、こうして静かな朝を迎えられるのはありがたいね。


……ん?


どこからか、妙な音がする。


ぐごおお……。

ぐがああ……。


なんだろうと思ってベッドから顔を出すと、床に大きな人影が二つ転がっていた。


ひとりは、立派な髭を生やしたドワーフのボルガン親方。


もうひとりは、あのイケメン勇者カイルさんだ。


……なんでこの二人が僕の部屋で寝ているんだっけ。あ、思い出した!



昨日の夜、冒険者ギルドの食堂の閉店時間まで騒いでから、僕が宿屋に帰ろうとしたら、ボルガン親方が、僕の後ろからドスドスとついてきたんだよね。


「借金を返すまで、絶対にお前から目を離さねえぞ! 朝まで見張ってやる!」


まあ、約束どおりと言えば約束どおりだ。だから僕も、仕方なく一緒に宿屋へ戻ることにした。


ところが、それを聞いていたカイルさんまで立ち上がった。


「俺も行く!」


……え?


「お前、また何も言わずにいなくなるつもりだろ! クリフたちに会わせるまでは、絶対に目を離さないからな!」


いや、だから僕はどこにも逃げるつもりはないんだけど。

というか、君たちが探している人とは別人なんですけどね。


そんなことを言っても、すっかり酔っぱらったカイルさんが聞いてくれるはずもない。


結局、ボルガン親方とカイルさんの二人が、僕の部屋までついてくることになった。


そして二人とも、部屋に入って間もなく床に座り込んだかと思うと、そのまま眠ってしまったんだった。


床を見ると、ボルガン親方は太い腕を組んだまま、ぐうぐういびきをかいている。その少し向こうではカイルさんがお腹を出して、気持ちよさそうに眠っている。

こんなにいびきがうるさい中で、僕もぐっすり眠っていたなんて、ちょっぴり……恥ずかしい。

旅の疲れのせいだね。うん、きっとそう。


昨日は二人とも、あれだけ「見張る、見張る」と大騒ぎしていたのに、これじゃ全然、見張れてないじゃないか。


僕が夜中にこっそり抜け出しても、たぶん気づかなかっただろうね。


昨夜は二人ともずいぶん飲んでいたから、ぐっすり眠っているんだろう。起こしたらかわいそうだし、なるべく音を立てないようにしよう。


そう思って、そっとベッドから降りようとした、そのときだった。


ドンドンドンッ!

突然、部屋の扉がものすごい勢いで叩かれた。

……うわっ! いったい何事?


僕は急いで扉を開けたんだけど、そこに立っていたのは、宿屋のご主人だった。小太りで温厚そうな人だったのに、今はなぜか顔をこわばらせ、額には汗まで浮かんでいる。


どうしたんだろう?


「リアム様! た、大変でございます! 宿屋の前に……!」

「宿屋の前に?」


「と、とにかく、玄関までお越しくださいませ! 急いでください!」


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