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それでも私は旅をする ~気づいたら唯一神になっていましたが、興味がないので世界を歩きます~  作者: 翡翠


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第14話 世界一の定義



 「……世界一、ですのよね」


 アリアベルは、静かに言った。


 目の前には、先ほど完成した料理。


 “アリアフィッシュ”の最適調理。


 確かに美味しい。


 だが。


「……はい」


 レオニードが答える。


「現時点では、最上位評価となります」


「……現時点」


 アリアベルは、その言葉を繰り返す。


「つまり」


 一拍。


「他にもあるかもしれない、ということですわね」


「……その通りでございます」


 即答だった。


「……難しいですわね」


 アリアベルは小さく笑う。


 だが。


「では、確かめましょう」


「……承知いたしました」


 レオニードは即座に動く。


 同時刻。


 世界各地。


 海、川、湖。


 あらゆる水域に情報が走る。


「……“比較”が始まる」


「全魚種対象だ」


「最高品質を用意しろ!」


 王城。


「……ついに来たか」


 カールハインツが静かに言う。


「“相対評価”の段階に入った」


 一拍。


「市場は荒れるぞ」


「……すでに兆候が出ております」


 側近が答える。


「価格変動が激化、流通競争が加速」


「……抑えるな」


 カールハインツは即断する。


「これは止めるものではない」


「……御意」


 港町。


「……では」


 レオニードが告げる。


「比較対象を提示いたします」


 机に並べられる複数の魚。


 すべてが最高品質。


「北方大型種」

「南方香味種」

「深海高脂質種」

「淡水希少種」


「すべて、最高水準でございます」


「……楽しみですわね」


 アリアベルは、純粋にそう言った。


 一皿目。


「……美味しいですわね」


 二皿目。


「……こちらも美味しいですわ」


 三皿目。


「……違いますが、美味しいですわね」


 沈黙。


 誰もが理解する。


「……決まりませんわね」


「……はい」


 レオニードが頷く。


「すべてが高水準であるため、単純比較が成立しておりません」


「……では」


 アリアベルは少し考える。


 そして。


「用途ごと、ではいかがかしら」


「……用途」


「ええ」


 一拍。


「焼きに向いている魚」


「煮るのに適した魚」


「そのように分ければよろしいのではなくて?」


 レオニードが一瞬、言葉を失う。


 そして。


「……合理的です」


 即答。


「単一の“世界一”ではなく、用途別最適化」


「……それなら」


 アリアベルは小さく頷く。


「全部、美味しいままでいられますわ」


 その瞬間、世界が変わる。


 単一頂点の競争は終わる。


 多極化。


 最適化。


 用途別評価体系。


「……定義が更新されました」


 レオニードが静かに言う。


 王城。


「……なるほど」


 カールハインツが頷く。


「独占を避けたか」


 一拍。


「見事だ」


 港町。


「……これで」


 アリアベルは立ち上がる。


「決まりですわね」


 少女は歩く。


 ただの思いつきで。


 だが、その一言が世界のルールを変える。


 それでも本人は変わらない。


 ただ、美味しいものを探しているだけなのだから。

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