第一話 狩人のご注文-③
夜。
陽が沈み、街の喧騒が穏やかになった頃。
俺は、ベクターさんが貸してくれた魔道具店の奥にある小部屋で横になりながら、一人考えていた。
大量の獣の骨の処理、か……。
お客さんから依頼されたときに思い出したけれど、かつての魔物討伐の道中、森での野宿で獣に襲われて、それを撃退した後の処理で同じように困ったことがあったよなぁ……?
えぇと、そういえばあの時はどう処理したんだっけ――――――。
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―――。
「はぁ~、やっと終わったわね! 全く……こんな夜中に獣の群れだなんて最悪だわ!? 睡眠を邪魔されたお陰で、私の綺麗な髪と肌がボロボロじゃない! っていうか、アレク、怪我はない!? ……って、まぁ別に? あなたがどうなろうと知ったことじゃないけれど……その、せっかくここまで連れてきたんだから、早々に野獣の餌食になられては困るのよね~? だからほら! さっさと私に傷がないか、その身体を見せなさい!?!?」
そう言って彼女――クラリスは、右手に持った剣を一振りに血を払いながら俺たち……いや、俺だけ? に声をかける。
……んだけども……。
「いや……ほとんどクラリスが倒したから怪我なんてないよ……? むしろクラリスは大丈夫? どこも怪我してない?」
「っは、はぁ!? バッカじゃないの!? 私がこの程度の獣相手に怪我するわけないでしょう!? だっ、大丈夫に決まってるじゃない!! ちゃんと見てなさいよね!?」
とある依頼で魔物討伐に向かう最中、野宿をするための森で突然現れた獣の群れ。
それは、獣としての嗅覚か、俺たちが油断する夜の睡眠時を狙って襲いかかってきた。
敵は、クラリスの体の倍はあるほどの巨獣が数体……だった。
……いや、過去形なのはあれね?
彼女が一瞬にして獣たちを全部斬り伏せちゃったから……今はもう……ね?
いやまぁ、いつも通りのことなんで今更だけども……。
そんなことを考えていると、俺の背中側から頼もしい声が聞こえる。
「オイオイ、殺したのは良いけどよぉ? この死体の山はどうすんだ? いくら野獣だろうが、このまま……ってワケにはいかねェだろう? ……まぁ、これじゃあ……」
「そうね……市場に持っていくにしても、死体がこの有様だと……」
そう言って、ルークさんと、シャルロッテ―――シャルさんは、クラリスが斬り伏せた、バラバラの獣を見て首を振る。
「し、仕方ないじゃない!? この暗闇の中なら何が起きてもおかしくないのだから、やるなら徹底的に斬り刻まないとじゃない!!? というか、シャルはともかく、ルークもちゃんと倒しなさいよね! アンタが倒してたらこうはならなかったじゃない!!! この足手まとい!!! 筋肉バカ!!!」
「いや、お前さんなぁ……そうは言うが、あの状況なら俺が後ろを守りに行かないと……っていや、まぁそれはともかく、だ。……仕方ない。ここは現実的に燃やすしかないだろうな。……悪いが頼めるか?」
ルークさんが問いかけると、全員の視線が俺に向く。
だから俺は頷き、すぐに魔法を唱えた。
まず唱えたのは、収束させる風魔法。
これは、クラリスが斬り伏せた巨大な獣たちを一か所に集めるため。
そして次に唱えるのは、着火させるための火魔法と、森に張り巡らせる水魔法。
これは、集めた獣を一斉に燃やすのと、それによる森への延焼を防ぐため。
―――シャルさん曰く、一般の魔法使いならば死体の処理はここで終わりなことが多いらしいが、俺は個人的にもう一回だけ、風魔法を唱えている。
これは―――。
「……ねえアレク? 何度も言うけれど、私に気を使わなくたっていいのよ? そうやって魔力を使うから貴方はいっつも――」
「――そんなわけにはいかないよ。クラリスに、死体が焦げる匂いなんて嗅がせるわけにはいかないからさ」
「~~~~~っ、あ、貴方がいいならそれならいいケド?? まぁでも?? それで倒れられると私が困―――――」
―――そうして俺は、吹き上げる風魔法を唱え、獣が焼けた黒煙を、嫌な臭いとともに上空へと立ち昇らせる。
さて、これで仕事は完了……って、あれ?
しかしすべてを終えたと思って目の前を見て、ふと気づく。
「……あ~そっか。獣は燃やしても骨が残るんだね……どうしよっか……?」
獣が塵となり、かつての姿を失った跡には、彼らの残した真っ白な骨が残されていた。
いくら骨は時間が経っても悪臭を放たないとはいえ、しかしこんな森の中で骨を残し続けていても迷惑だろう。
う~~~ん、でも、骨を燃やし尽くすにはそれ相応の火力が必要だから、これを処理しようものなら、俺はこんなところで魔力切れを起こしてしまうな……。
かといって、これほどの大きさの骨を持って歩くのも……。
「え? そんなの砕けばいいじゃない? ほら、ルークならできるでしょう? ほら、さっさと動きなさい?」
「……んぇ?」
そうクラリスが言い放つと、名指しされたルークさんは深い息を吐きながら、やれやれといった動きで骨の元に歩き出す。
「ったく……俺ぁこの時のために鍛えてるわけじゃねぇんだがなぁ……」
彼はそう言いつつも、腕を大きく後ろに振りかぶり―――――。
「フンッ!!!!!!!」
一撃。
彼の拳が骨の山に直撃すると同時、かつて巨大な骨の塊であったものは一瞬にして灰塵と化し、周囲へと霧散していった。
……えぇ……??
「ちょっと!? もう少し抑えられなかったわけ!? 灰が目に入っちゃうでしょう!? ……アレクの!!」
「っえ、俺??? い、いや、別に大丈夫ですよ?」
「……ですって! よかったわね!! アレクが優しくて!!!」
「俺への労いの言葉はないのかお前さんは……」
「はいはい、私が代わりに感謝してあげるわよ。お疲れ様」
「オイ、それは感謝じゃ……まぁいいが……」
なんて――――――
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……そんなこともあったなぁ……。
って、そうだ、あの時はルークさんに粉砕してもらったんだった。
確かにアレなら骨は無くなるけど、かといってそれをし続けたら灰だけが周囲に舞っちゃって、それもまた別の迷惑になっちゃうよなぁ……。
……いや、待てよ?
そういえばあの後しばらくして、森の管理人から謎にお礼を言われたような気がするな?
なんでだっけな?
え~っと、確か……。
その時、俺の頭に一つの案が思い浮かぶ。
「――――――そうだっ!!!! これならアレの要領で……いける!!!!!!!!」
更新は"不定期"【AM1時】更新予定ですが、プロローグ、第一話終了までは"毎日"投稿いたしますので、ぜひ、気になった方は読んでみてください!




