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一般魔法使いの俺、悪役(風)令嬢にパーティを追放されたけど、その理由が正論過ぎたので大人しく魔道具店員に転職しました!  作者: 朝雨 さめ


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第一話 狩人のご注文-①




古びた棚を引き開けると、羊皮紙と香草の匂いが鼻腔に香る。


見上げた天井には、いくつもの火魔法が込められた魔道具が明るい光を広げ、部屋の隅々まで照らし出している。

壁一面にびっしりと詰められた棚や、部屋の中央に並ぶ木の台の上には大小さまざまな道具が整然と並べられており、俺は思わずその中の一つ――"雷魔法"が込められた、透明な瓶の底に三枚の刃が付いている魔道具を手に取って、問いかけた。


「あの~……これ、って、なんの魔道具なんですか? 見たところ、武器のようにも見えるんですが……?」


俺がそう問いかけると、目の前にいたおじいさん……じゃなくって。

この魔道具店の店主―――ベクターさんが答えてくれる。


「うん? お~、それはのう? こう……ここを押すとな? 付与されている雷魔法が起動してここに付いている刃が回転して……中に入れた豆や香草を、簡単に磨り潰すことの出来る調理魔道具じゃよ」


ベクターさんはそう言いながら、小さな突起を押す―――と。


「うわぁっ、音うるさ!? っ、けど本当だ! 刃が回転してる!? ……えっ、こんなんであの固い豆が潰せるんですか!? 手でやらなくても!?」


「ほっほっほ! そうじゃよ。ちなみにこの中に果物なんかも入れれば、それも簡単に潰すことができるぞ?」


「果物も!? 入れるだけで!? ほぇ~~すごいな、それは……!」


いきなり刃が高速回転したり、起動時の音の大きさには驚いたけど……確かにこの突起一つを押すだけで、あの固い豆や果物を潰せるなら全然気にならない!


そんな関心をしながら俺が何度もそれを起動しては停止してを繰り返すのを、ベクターさんが優しい笑みで見届ける。


―――俺がこの魔道具店で働き始めてから、二日が経った。


思いがけない縁からこの魔道具店で働くことになった俺は今、店主であるベクターさんから魔道具がどういうものなのか、魔道具をどうやって作るのかの基礎から学んでいる新米魔道具店員だ。


……とは言ってもここはやはり魔道具店。

いつお客さんが来てもお店の商品を紹介できるよう、たまにこうして気になる魔道具を見つけては話を聞いたりもして、穏やかな日々を過ごしている。

……まぁ、俺がここで働き始めてから未だお客さんは来ていないので、その辺りはまだやったことはないんだけども……。


ただ、二日間という短い間だけどもこうして魔道具に触れ、知っていくと、意外にも奥が深く、楽しいことに気が付いた。

これまで魔物を倒すためだけだった魔法に、こんな便利な使い道があったと思うと、なんていうか……俺が学んだことは何も無駄ではなかったんだと少し嬉しく思えるというか……。


……ほんと、追放されてからすぐにこんないいところで働けるなんて……俺は運が良いんだなぁ……!


なんて思っていると……。


「すんません! 新規受付やってますか!?」


「わっ、え!?」


バタンッ―――と、扉が勢いよく開かれ、冷えた外気とともに一人の男性が店内に滑り込んできた。

出で立ちから見れば、森で狩りをする狩人のようで、彼の背中には立派な弓矢が掲げられている……っていうか――。


「お客さん!!!???」


「……はぃ???」


思わず俺は初めてのお客さんに目を輝かせる……が、すぐにそれを見たベクターさんが俺の頭に軽く手を当て、窘めるように男性に問いかけた。


「こらこら……これは失礼しました、こちらは新人でしてねぇ……それで、本日はどのような魔道具をお求めで?」


「……あっ、そうです! 実はですね……!」


そうして男性は、変に喜ぶ俺を尻目に、これまでの現状を話し始めた。


「実は私、こう見えて森で魔物や獣を狩る生活をしているんですが……そこで最近困りごとがありまして……」


……こう見えて……?


「困りごと、ですかな?」


「えぇ。魔物が強くなってきた影響なのか、年々獣が森に逃げてくる数も多くなってきていましてね。魔物の方は倒してもその場で魔素となるので問題ないのですが、如何せん獣のほうは―――」


彼がそう言いかけた途中で、俺は思わずかつての出来事を思いだし、口に挟んでしまう。


「―――あぁ、分かります。獣は燃やしても骨がそのまま残りますもんね……」


――が。


「――!? っ、そうです! まさにその通りで……って、店員さん、わかってくれるんですか!?」


「え!? あ~~まぁ、そうですね。俺……あっいや、私も過去に同じ経験をしたことがありまして……」


俺がそう口にすると、男性は驚きと期待を混ぜた表情を浮かべて俺の手を取った。

そんな彼の瞳はあまりにも眩しく……っていや……まぁ、確かにこんな経験があるなんて冒険者や狩人ぐらいしかいないだろうし?

共感してくれるのは嬉しいもん……か?


などと、気軽に思っていたのだが。


「いやぁ~~~! それは心強い!!! いやいや、本当によかった! それならば、ぜひ貴方に解決する魔道具を作っていただきたいのですが、問題ないでしょうか!? いやはや、もうここ数日、獣の骨が増えるばかりで、森の手入れの方が出来ず……!」


「うえっ!? お……私、ですか!? で、でも――」


俺が《この事例に対しての》経験があると語ってしまったためか、男性はすっかり俺を頼もしい魔道具店の店員だと勘違いしてしまい、一人で舞い上がり続けている。


しかしまぁどう対応したものか……と戸惑いながらベクターさんに視線を向けると、彼は優しく微笑みかけてきた。


「うむ。これも立派な仕事じゃからな! 何事も挑戦と経験……! せっかくの機会じゃ! お主がやってみなされ」


「っえ、でも―――」


「大丈夫じゃ。……お主なら、必ずできる!」


―――っ!!


その言葉を受けた瞬間、俺は彼の姿に、彼女の姿を重ねてしまった。

それは、俺の憧れの人で、大切な人。

かつて、同じような言葉をかけてくれた彼女を思い浮かべながら俺は……。


「――はい!」


元気よく返事をした。



更新は"不定期"【AM1時】更新予定ですが、プロローグ、第一話終了までは"毎日"投稿いたしますので、ぜひ、気になった方は読んでみてください!

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