プロローグ 一般魔法使いの俺。パーティを追放されたので魔道具店員始めますー④
「っ、お前なぁ……そんな私利私欲であいつを振り回してんのか……? ……まぁなんでもいいけどよ、実際これからどうすんだ? ここは結構栄えた街だぜ? お前さんの言う、その大好きな彼を放り出して良かったのか?」
「だっ……っ、えへへ……そんな、好きとか、そういうんじゃ……」
「……で?」
「もうっ! ルークは馬鹿ね! ここまでアレクのことをお……お……想ってる……私が……? 何も考えていないと思う? そんなの全部手配済みに決まってるじゃない!!」
「「……は……? 手配ぃ……?」」
◆◇◆
「っ大丈夫ですか―――?」
「む? おやおや、これはこれは……少し本を落としてしまってのう……悪いんじゃが、拾ってはくれぬじゃろうか?」
俺が駆け寄りながらおじいさんに声をかけると、彼は地面に落ちたいくつかの本を指し示した。
そうして俺は本を拾おうとして……ふと気が付く。
「あの……これってもしかして、"魔導書"、ですか……?」
問いかけると、おじいさんは驚いた顔で俺の顔を覗き込む。
「おや!? 君、これが読めるのかね!?」
「あ、いや、まぁ少しだけ……って、あぁいや、すみません! 勝手に見てしまって……」
そう言いながら再び目線を本に向けると、いくつかの種類の魔導書が落ちていたことに気づいた。
火の魔導書、雷の魔導書、氷の魔導書まで……?
なんでこんなにいっぱいの魔導書なんかを運んで……?
「よいよい! しかし年々魔法使いの数は減っているというのに、こうして若い魔法使いに出会えるとはのう! ……なんたる偶然じゃ……!!」
「……え? あぁ、まぁそう、ですね???」
そうしていきなり握手を求められた俺は、彼の手を握って目を見開いた。
(――! この人も魔法使いだったのか……! それも、めちゃくちゃ熟練の……!)
―――彼の言う通り、この世界では魔物が凶暴化し始めた頃から、魔法使いの数はかなり減ってきていた。
かつては最高峰の討伐隊と称される《王都守護隊》と肩を並べる精鋭魔法使い集団《王都魔導士隊》が存在し、魔法の地位も今とは比較にならないほど高かったのだけど、時代の流れとともに魔導士隊は解体……。
今やわざわざ魔法使いを目指す者などおらず、必然的に魔導書を読める魔法使いもいないため、もはやただの古本と化している現状。
そんな状況では、こうした熟練の魔法使いから見れば、俺みたいな若い魔法使いは珍しいのだろう……ってあれ? この人、俺と握手する前から魔法使いだって言ってなかったか――――?
――そう、俺が疑問を感じるのと同時。
目の前のおじいさんはふと思い出したかのように両手を合わせると、俺に向かって問いかけてきた。
「―――そうじゃ! 実は、ちょうど助手が欲しいと考えていたんじゃが……どうじゃ? 君、ワシの魔道具店で働かんか?」
「……え? 魔道具店……って、あの?」
意外すぎる提案に、俺は先の疑問など忘れ、思わず問い返してしまう。
それを見たおじいさんは目を丸くしながら、ふっと微笑む。
「おや? その若さで魔道具店まで知っておるとは、いやはや見込みがあるのう? ……そうじゃ。お主が思っておるその魔道具店じゃ、ワシが込めた魔道具を売る場所なんじゃが……どうかね?」
「えっ……と……」
俺は彼の提案に、少し、迷う。
魔法は、実は誰にでも使えるわけじゃない。
剣を扱うのにも才能がいるように、魔法を扱うのにも才能が必要なんだけど、こと魔法に至っては、それが使えるだけで圧倒的に生活が便利になるという利点がある。
まぁ、一見何もないところから炎を出して肉を燃やしたり、喉が乾いたら水や氷が出せるなんて、そりゃ魔法が使えない人からしたら羨ましいことでしかないのだから当然だろう。
しかし当然というか、魔法使いが衰退した結果の行く末というべきか……。
魔法使いが魔物討伐に役立たなくなった現代において、いつしか彼らは便利屋のようなものを始めた。
例えば、家庭で出るゴミを燃やします! だとか、夜中の作業を照らします! だとか……。
彼らはそうすることでしか、生きる術がなかったのだ。
……ただ、彼らにとって幸運だったのは、王都の王が善良な心を持っていたことだろう。
王は、彼らのその生き様を見て、こう口にしたのだという。
『これじゃあまるで……人ではなく、道具ではないか……!』と。
それは、かつては誇りを持ち、共に王都を護った《人間》が、人々に《道具》のように扱われている現状に対して抱く、痛みと憤りのようなものだった……が、当時の魔法使いたちはこれをこう解釈してしまう。
『そうか! 俺たちが道具になるんじゃなくて、道具を作ればいいのか!』と。
そうして出来上がったのが、魔道具店。
彼らは魔法を道具に込めることで、誰にでも使える魔法の道具を発明し、それを販売。
まぁ結果から言えば、それは大好評だったわけで、王様もこれにはニッコリ。
夜道を照らしてくれる火魔法が詰まった透明な瓶の魔道具や、つまみをひねるだけで炎が飛び出て料理がしやすくなる調理魔道具など、いつしかそれらは人々の生活になくてはならないものになっていた。
確かに、魔法を使える俺は魔道具を作れるだろう。
そんな生き方もいいのかもしれない。
けれど……。
「働くって……。……あぁ、いや、すみません、実は俺、冒険者で―――」
そう、俺は今は冒険者だ。
当然、働くなんて出来ない……と、ここまで思ったところで、気づく。
……あれ? 俺ってば、先ほどその冒険者を追放された今、無職なのでは???? と。
しかもよく考えれば、ここは村からほど遠い街中だ。
村に帰ろうにも資金がない……!? と。
~~~~そうとなれば……! と。
「……あ、あの~……すみません。……良ければ、俺を働かせていただけないでしょうか……?」
一度断ろうとした手前、申し訳なさそうにおじいさんにそう告げると、彼は懐から取り出したいくつかの金貨を再び仕舞いながら……ってあれ、なんでこの人はいきなり金貨なんて出してるんだ……?
「おっと……! これは必要なかったか……ごほん!!! う、うむ! そうじゃろうて!? え~~~では、さっそくゆくぞい!」
「……? は、はい!」
……なんか小声で言っていたけれど、まぁ細かいことはいいだろう!!
なんにせよ、早速仕事が決まったのはとてもいいことだからね!!
――――こうして、俺はパーティを追放された結果……魔道具店で働くことになったのだった―――――。
1更新は"不定期"【AM1時】更新予定ですが、プロローグ、第一話終了までは"毎日"投稿いたしますので、ぜひ、気になった方は読んでみてください!




