第二話 美食家のご注文-⑨
「うんだぁ!? 興味もってぐれただか!? ほんだらずぐに何体かとってくるでよ! すこじまっででだよ!!!」
―――そう言い残すと、彼はその巨体からは想像だにしない速度で店を出るや、俺たちを置き去りにして宵闇の中に姿を消してしまった……。
え~……と。
……カチャリ。
「……お主……無言で店のカギを閉めるでないぞ? まぁ気持ちはわかるがのう……あやつも善意でやっとることじゃから、少しだけ付き合ってくれんかの……?」
くそぅっ……逃亡失敗、かっ……。
「まぁ、師匠がそう言うのなら……」
そうして俺は再びカギを回し……ふと思う。
あれ? 今しがた彼は魔物を取りに行くとは言ったけど……。
「あれ? そういえば師匠。あの人……一人で大丈夫なんですか?」
「む……?」
魔物食、とはそのまま魔物を食べるというものだけど……それはつまり、魔物と戦うことが大前提なのではなかろうか??
……まぁ実際、プニカスやヌメロウ程度ならば一般人でも倒せるから問題ないだろうけど。
……いや、なんですか???
いやいや、別に俺も倒せますけど???
魔法たくさん使えば勝てますけど????????
勝 て ま す け ど ???????
……ゴホンッ。
ともかく、だ。
魔物討伐とは本来、ただ何も考えずに、どんな手段であっても、とにかく魔物を殺せばいいだけ。
でも、彼が望む魔物食を食べるには……対象の魔物を殺さず、その上で持ち運ぶために気絶させる必要があるってこと。
普通に考えてわざわざそんな危険な真似をする必要もないから、それの難易度がどれほどのものかは分からないけど……少なくとも、単純に殺すよりかは難易度は高くなることには違いないだろう。
だからこそ、そんな芸当を一人でするなんて……可能なのだろうか……?
そう思った俺の疑問に、師匠はしかし驚いた顔を浮かべた。
「お主、冒険者じゃったのに知らんかったのか? って、そうじゃった……お主は魔物食も知らないのじゃから、あやつのことは知らんでも仕方なかろうな……」
「え、魔物食ってそんなに有名なんですか?」
俺が思わず聞き返すと、彼は小さく首を横に振る。
「いいや、有名なのは魔物食自体ではなく、あやつ本人のことじゃよ」
「あ~、確かに……。大分特殊な人ですもんね……」
彼のことを思い返すに、確かにアレならば有名になってもおかしくはないだろうと、そう苦笑を浮かべた俺だったが、しかし師匠は再び首を振って、驚くべきことを口にした。
「ううむ……それもあるがのう……? しかしあやつが有名なのはそうではなくてな。……ワシはあまり気に入った呼び名ではないが……、人呼んで『変食家』のホッグス。あやつは、元王都守護隊の一人なんじゃよ」
「え……??? っ、え、えぇ~~~~!?!?」
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