第二話 美食家のご注文-②
俺が住んでいるこの街は、大陸の西方領域に位置する小都市のひとつ――『ノードゥカ』。
魔道具店を始めとした、様々な商業が盛んに行われているこの街は、穏やかな商店街だと称される他、西方領域の中で、"世界で最も安全な街"だとも言われている。
そして、その理由こそが、あの白亜の城にこそある。
最高峰の魔物討伐隊として世界に名を馳せる『王都守護隊』。
それらを擁する西方王城こそ、あの白亜の城――『ノンヴィリ城』なのだから。
当然、最高峰の魔物討伐隊が近くにいる街なんて、わざわざ魔物も襲わないし、っていうか襲えない。
勿論、わざわざこの街で盗賊や犯罪なんか行う人も居る訳もなく……結果的に最も安全な街だと言われているけれど……。
だとしても、だからって、街の内部が栄えてる理由は関係なくないか?
だって、別に魔物が襲って来ないなら外側に商店街があったって……って、いや、そうか!!
「もしかして、万が一に備えて商業区域は内側に隠してる、ってことですか!?」
俺がそう答えると、ベクターさんは目を見て優しく微笑み、「正解じゃ」と満足そうに呟いた。
彼が再び歩き出す中、俺は街をもう一度見渡して思う。
(そっか……魔道具だけじゃなくて、街の景観一つとっても、ちゃんとした製作者の意図があるんだな~!)
そうして俺たちは並んで歩きながら、街を見渡す……ってそういえば?
「そういえば、師匠? 仕入れが終わったって言ってましたけど……手に何も持ってないですよね? 何を買ったんですか?」
よくよく見れば、ベクターさんの手にはいつもの杖だけしか持っていないように見える。
何かを買ったようには見えないけれど、それならば、懐に収まるほどの小さい物……?
「……っ! もしかして……ここでは出せないやばい薬とかですか!? しっ、師匠に俺が話せる秘密はないですよ!?!?」
「な~~にを言っとるんじゃお主は……??? そんなもんもっとらんわっ! まったく……時折ワシはお主の思考回路が怖くてたまらんわい……」
「え、違うんですか? ……う~ん、シャルさんはいつも怖い薬を持ち歩いてたんだけどな……」
俺が納得いっていないかのように首を傾げると、ベクターさんはふんと鼻を鳴らして前を向いた。
「なに、買ったといっても、今回は結構な大きさの鉄の板じゃからな。ワシの体で持って帰るわけにもいかぬので、今回は運び屋に依頼したんじゃ。そうじゃな……恐らく日暮れ前には届くじゃろうな」
そっか、運び屋か!
いや~、冒険者だった頃は自力で運ぶのが当たり前だったから、そんな便利な職業があることをすっかり忘れてたよ。
「でも鉄の板なんて、なんでそんなものが必要なんですか?」
俺がそう問いかけると、彼は……なぜか、渋い顔をしながらこう語った。
「うぅむ……実は毎年この時期にだけ店に来るお客さんがおってのう。そいつ……いや、そのお客さんは少々……いや、結構特殊な人なんじゃが……。その人が店に来る日には、必ず大きな鉄の板を用意しないといかんのじゃ。……じゃが、ここ数日は色々なことがあってすっかり頭から抜け落ちておったわけで急遽、買い出しに来たというわけじゃ」
なるほど、そんな事情が……。
って、あれ? 今流れで変なこと言わなかったか?
「……特殊な人って……???」
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