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一般魔法使いの俺、悪役(風)令嬢にパーティを追放されたけど、その理由が正論過ぎたので大人しく魔道具店員に転職しました!  作者: 朝雨 さめ


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第一話 狩人のご注文-⑧



やがて、巨大な鉄塊を気軽に抱える少年、という異常な後ろ姿が遠くなり、見えなくなった頃。

一人の老人は呆けたままに店へと入り、すぐに一つの魔道具を手に取って耳に当てた。


部屋にはしばらく無言が続き、老人の背中に流れる汗が、ツーっと流れ落ちたその時―――やがてその魔道具から、一人の女性の声が響いた。


『……あら? 貴方から私に連絡してくるなんて……って!? まさか、彼に何かあったんじゃないでしょうね!? もしそうなら私はアンタを八つ裂きにして――――』


キーーーーーーンという耳鳴りがするほどの声量が埃の舞う一室に響き渡る中、老体はぐわっと顔をしかめ、慌てて魔道具を耳から大きく引き離しながらそれに答えた。


「~~~~~待て待て、ちゃんと話を聞くがよい!! もう!! なんじゃお主は! いきなりワシを脅して……老体には優しくせんか!!」


必死の叫び。

しかしその相手には響かず。


『はぁ!? アンタなんてどうでもいいわよ!! それより、何かあったのでしょう!? こっちは今忙しいのよ!! 手短に説明しなさい!!!!!』


「~~~~ぬぅ……一々騒がしい奴じゃ……しかし、説明してほしいのはワシの方じゃ!!!!!」


『……はぁ? 何を言っているの? 私からアンタに話すことなんて何もないわよ』


「ないわけあるかいっ!! ワシが聞きたいのは、先からお主が気にかけておる、ワシに預けにきたあの少年のことに決まっておろうが!!!!! なんじゃあ、あの少年は!!!!!」


『―――っえぇ? べ、別に気にかけてなんて―――』


「……? なんじゃ、その反応は……? まっ、まぁそれはよい!! にしてもアレは本当にワシと同じ人間なのか!?!? 擬態型の魔物の類ではないのか!?」


『はぁ? さっきから何を言ってるのよアンタ……。ボケてるのなら、私の大切な時間を邪魔しないで頂戴。じゃあ切るわ―――――』


「待てまてまて~~~~~~~い!!!! 勝手に切るんじゃない!!!! ワシがボケてるじゃと!? じゃったら、先ほど大人が数十名も必要なほどに重い魔道具を、いとも簡単に、それも一人で持ち上げたあやつの姿もワシの幻覚じゃというのか!?!? っていうかワシはまだ現役じゃ!!!!」


『えっ!? え~~~~~、なにそれかっこいい~~~~~~~!!? えっ、えっ、見たかったそれ~~~~~~~~~』


「……ゴホンッ!!!!!!」


『……チッ、何よ、本当ならそれは私が間近で見てるはずだったのよ? それを見れただけアンタは幸せ者……ていうか待ちなさい!? もしかしてだけど、その魔道具、他の家に受け渡しに行くとかじゃないでしょうね!?』


「……っ……い、や~~~~??? ど、どう、じゃった、かのぅ~~……???」


『ハァ~~~~~~!!!!!?????? こんの、クソ老人が!!!!!!!! 何のためにアンタに金出してまで私のアレクを預けたと思ってるのよッ!!!!!! まさかとは思うけど、女じゃないでしょうね!?!!?!?』


「っ……う、うむ……女ではないが……」


『はぁ~~~~~~~それならまだ少しだけよかったけど!!!! にしてもアレクはどこにいったの!? 一人で行かせないでって言ったわよね!?!!?』


「ム……じゃが……」


『じゃがも、いももないわよッ!!!!! もういいわ! とにかくアンタは早く私にアレクの場所を報せることっ!!!! いいわねッ!!!!?』


「う、うむ……分かっ――――」


『―――ルークッ! シャルッ!!! すぐにここから移動するわよ!!! そんな雑魚さっさと蹴散らしちゃいなさい―――!!!』


瞬時、二つの肉が断ち切られる音が響いた後、ツーッという音とともに彼女の声が切断される。

あとに残されたのは、静まり返った薄暗い一室と、一人きりで立つ老人のみ。


老人―――ベクターは一連の流れに小さく息をつくと、先ほどまでの荒々しい口調を引っ込め、呆れたように苦笑を漏らしながら、目の前の机に置かれた羊皮紙に彼女が求めていた少年の行先をサラサラと書き留めていく。


「……いやはや……結局あの少年について何もわからんかったわい……。……よもや、ワシは悪魔に身を売ってしまったのかもしれんのう……? これではもはや、彼女が魔王だと言われた方が納得できるというものじゃ……やれやれ……」


ぽつりと零した自嘲の言葉。

それと同時に彼の指先からは微弱な光が放たれ、羊皮紙が青白く発光した――次の瞬間、文字の書かれた紙はふわりと宙に溶けるようにしてその姿を消した。


数ある魔法の中でも習得が難しいとされる、雷魔法と火魔法を併用した転送魔法。

それをいとも容易く行える彼の名は、《しがない魔道具店店主》ベクター。


またの名を―――《元・王都魔導士隊隊長》ベクター=フォン=アインリッヒ。

かつて、王都守護隊長と肩を並べながら魔物を屠り続けた伝説級の魔法使いである。


だが、今やその栄光は鳴りを潜めており……。

悪魔に大量の金銭を半ば無理やり押し付けられた挙句、異質な少年の面倒を見続けることになってしまった、ただの老体。


そんな彼は、これを機に数々の苦難を抱え、それに伴い、彼自身の人生も大きく変わっていくことになるのだが……彼はまだ、そのことには気づいて――――。



「……ぬぅ……ワシの人生……これから大きく変わるやもしれんのう……」



―――いや、少しだけ、気づいているのかもしれない―――――。




ここまでご愛読ありがとうございました!


第一話はこれにて終わりで、次回以降は第二話となります!

お知らせしていた通り、次回から更新は"不定期"【AM1時】となっていますが、評価や皆様の感想次第では早めていきたいと考えていますので、次回以降も読みたい!と思ってくれたら、ぜひ、感想や評価のほど、よろしくお願いします!

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