第一話 狩人のご注文-⑦
「……いや、俺が、責任をもってこれを運びます……! どうか……それで受け取ってはいただけないでしょうか!?」
「「はぁっ!?!?」」
俺のその言葉に、ベクターさんと狩人のお客さんが同時に驚きの表情を浮かべる。
「い、やいや、どう考えても無理でしょうよ!? あなたのお気持ちもまぁ分かりますが……無謀なことをさせるほど、私も鬼ではありませんよ!? 魔道具の仕組み自体は今も気に入ってますので、また作り直してくだされば―――」
「―――いえ……ッ! 任せてください……ッ!!!! ……安心してください……村では使いっぱしり程度でしたが沢山荷物を運んでいたので、何とか俺が気合で運んで見せます……!!!」
「ばっ、馬鹿なことを言うんじゃないぞ!? お主、話を聞いておったのか!? これは、数十人の屈強な職人が、二日もかけて運ぶほどの魔道具じゃぞ!? お主一人でなんてあの森まで運ぶことはおろか、持ち上げられもせん!!! 気合でなんか運べるわけがなかろうて!!」
ベクターさんはそう言って、俺を宥めようとする。
……けど……!
「……俺の、初めてのお客さんなんです……! 初めての製作物……ちゃんと届けてあげたいんです!!!」
「いや無理じゃて!? 理想は立派じゃがな!? って、い、イカン! 目が逝っておる!!」
「……お客さん……! 俺に、任せてはくれませんか!?」
俺の必死の言葉。
覚悟、決意。
それらの詰まった瞳を見た狩人は……フッと笑った後……こう言った。
「いや、無理ですよ???? 清々しい顔して何言ってんですか???? その気持ちは嬉しいですが、店員さんが死ぬ責任までは負えませんって!? いいから作り直しを―――」
「っ……」
……そりゃそうだ。
ここから森までは魔物も、獣だってよく出ると聞いている。
あの森近辺ならばそこまで強い魔物はいないだろうが……さすがに俺としても、数十人の大人が運ぶほどの重さのものを運びながら戦うことは難しいし、死んでしまうかもしれない……。
それに、その状態で戦えば、大切な商品に傷をつけてしまう可能性だってある……!
でも……!!!!!!
初めて、俺を信頼してくれるお客さんに出会えたんだ!!!
それならば、俺もこの人のために、出来ることはしてあげたい!
そのためには申し訳ない、が……!
「分かりました……。では俺が運んでいる間の護衛は、申し訳ありませんがお客さんに一任してもよろしいでしょうか……?」
「な~にを言ってるんだね君は??? 何もわかってないよね!? よろしいでしょうかじゃないよ! そこじゃないよ!? 別に護衛はするけどさぁ!? まず、これを持ってここから一歩も動けないよねって話でしょう!?」
くっ、これでもダメか……!?
いや、しかしそれもそうだ……。
大人十人がかりもの鉄塊……俺になんて持てるわけが……。
―――そう思いながらも、俺は何とか持ち上げられないかと、ふっと……鉄塊に手をかけて――――。
「……えっ?」
思わず声が漏れる。
「……えっ??」
次いで、狩人の声が漏れる。
「「「えっ???」」」
遅れて師匠の声も重なる。
いや……え????
だってこれ……。
「……師匠……これ……軽くないですか……?」
「……えっ?????」
見た目は確かに鉄の塊だ。
重いと言われれば、思わず信じてしまうほどの存在感もある。
けれど……いや、軽い、軽すぎるぞ??? なんだこれ?
俺は、持ち上げた鉄塊を一度下ろして再度持つ……が、結果は変わらずひょいと持ち上がる。
……???
これなら村にあった剣のほうが重かったぞ???
あっもしかして!?
「なんですかもう師匠~! 俺のことからかったんすか~~? いや焦った~~~~!! 俺、本当に終わったと思いましたよ~~~~……うん、これなら全然運べます! うわぁ~~~~よかった~~~!」
「え????? あぁ……うん……え????」
俺は安堵のため息をつき、目を丸くする師匠を横目にお客さんに振り返って笑顔になる。
「お客さん! これ、見た目よりも軽いみたいなんで運べそうですよ! じゃあとりあえず森まで俺が運ぶので、道案内、お願いしてもいいですか?」
「え???? あぁ……え?? あぁ……はい……え?????」
いや~~~よかった~~~~!!
俺の初仕事、どうなることかと思ったけど、なんとかなりそうだ!!
……などと。
本人以外は未だに夢かと思う光景の中。
彼は、確かに一般人の大人数十名をしてようやく運べるほどの重さを誇る魔道具を一人で担ぎ、そのまま、もはや考えることを辞めた狩人とともに、森へと向かっていくのだった―――。
更新は"不定期"【AM1時】更新予定ですが、プロローグ、第一話終了までは"毎日"投稿いたしますので、ぜひ、気になった方は読んでみてください!




