第一話 狩人のご注文-⑥
「おや!? こんにちは! いや~朝早くからお仕事お疲れ様です! あ、私も思わず今日の受渡日が楽しみすぎて早く来すぎてしまいましたよ~! 実はですね、今日までにも庭に骨がたくさん増えてしまったんですが……いやはや、今日からようやくあれを処理できると思うと嬉しくて嬉しくってぇ!! 思わず浮足立って来ちゃったんですよねぇ~!!!! まっ、実際には浮いてないんですがね! っていうか、なんですかコレは?? こんなに大きな物も魔道具なんですか!? いや~こっれはすごいですねぇ~! 運び入れるのも大変そうだぁ……。あっ、それはさておき、それで……私の依頼した魔道具はどこにあるんでしょうか?」
「「……」」
あまりにも気分が高まっているのか、満面の笑みを浮かべながら軽快な足取りで現れた狩人に、俺たちはただ、言葉を失って固まるしかない。
だって、彼はさておきとか言っているが、俺たちからすれば、全然さておいていないのだから!
「……? あ、あれ? 受渡日って、今日じゃなかったんでしたっけ? ……いや、今日であってますよね? え、っと……私の魔道具はどこに……? あっ、中にあるんですかね? そしたら早速―――」
確かに彼は、俺たちの変な空気感を感じていたことだろう。
だが、期待に満ちた心は、そう簡単に現実を直視させないのだ……。
今の俺のように……。
俺は、何度もベクターさんと視線を合わせていたが、しかしこのままでは何も進まないことはわかっていた。
……だからこそ、俺は重い口を開いた。
「……あの……これ、です……」
「……え?」
俺は冷や汗を拭いながら、震える指で目の前の巨大な鉄の塊を指し示す。
しかし、我が目を疑うとはまさにこのことで、狩人は目を見開いたまま固まった。
それを見届けた俺は、この勢いのままに説明を続けた。
「……これがお客様のご依頼の魔道具になります……」
「……っ、え????」
彼の喉から漏れ出た声を最後に、場には再び静寂が訪れる。
恐る恐る俺は彼の目を見ると、確かに目の前にある鉄の塊に視線はあるものの、まるでその先を見ているかのように遠い目をしていた。
そして、やがて狩人は一度自分でも持ってみようと思ったのか、その鉄塊に手をかけ……。
……。
……。
「……っ、おも……っ」
……。
……。
……離した。
すると今度は小さく手を震わせながら、はたと思い出したかのように再び自らの口を開く。
「……え~……とですね……? わ、私の森は……ここから結構遠くにありましてぇ……」
「……ハイ」
えぇ、依頼の時に聞いているので知っていますとも……。
「えーっと、これ……店員さんは運べたり……?」
「……え、と……」
……ベクターさんは言っていた。
これが、数十人の大人を総動員してもなお、二日もかかる重さだと……。
それはつまり……。
「……あ~……無理……かもしれない……です、かも……?」
申し訳なさからか、曖昧なままに俺がそう告げると、ようやく事態を吞み込むことができた狩人は絶望のあまり頭を抱え……一筋の涙が頬を伝った。
そしてその瞬間。
俺は喉の奥が、キュッと閉まる感覚を身に感じた
あぁ……一体何をしているんだ俺は……!!
魔道具店は信頼がすべて。
それなのに、俺が浮かれたせいでベクターさんの魔道具店に泥を塗ってしまうなんて……!
設計図を勝手に変えられたからこんなことになっていると、未だに思っているのか!?
違うだろう!!!
あの時、初めてお客さんに認められたからって浮かれ、その後に魔道具の製作者とは、一切の連絡を取らなかった俺自身の過ちだ……!
ちゃんと連絡を取っていれば、ここまで悲惨なことにはならなかっただろう……!
……全部、俺の責任だ……。
―――そう思ったとき、俺の喉から自然と声が漏れ出た。
「……いや、俺が、責任をもってこれを運びます……! どうか……それで受け取ってはいただけないでしょうか!?」
「「はぁっ!?!?」」
更新は"不定期"【AM1時】更新予定ですが、プロローグ、第一話終了までは"毎日"投稿いたしますので、ぜひ、気になった方は読んでみてください!




