第六話 高校生鈴木の悪役令嬢物。『俺の青春どうなる?』
俺、鈴木悠斗は、ごく普通の高校二年生だ。
成績は普通。運動も普通。
ただ、中学から数えると三年間、一度もサボらず掃除委員をやっている。
別に好きでやっているわけではない。
誰もやりたがらないから続けていたら、三年経っただけだ。
「悠斗! またギリギリじゃない!」
朝、校門の前で幼馴染の佐倉美咲が待っていた。
「別に待ってたわけじゃないからね!」
「聞いてないけど」
「たまたま同じ時間だっただけ!」
そう言いながら、俺のネクタイを直してくる。
「ほら、曲がってる!」
「ありがとう」
「べ、別に……幼馴染として当然でしょ!」
こてこてのツンデレだった。
美咲とは小学生の頃からの付き合いだ。
俺のことを好きらしい。
たぶん、小学校六年の時、風邪で休んだ美咲の家まで給食袋を届けたからだと思う。
昼休み。
「鈴木君」
廊下で、生徒会長の白石玲奈先輩に呼び止められた。
成績優秀、容姿端麗。
いつも無表情で、必要なことしか喋らない。
「昨日も掃除していたわね」
「掃除委員なんで」
「三年間?」
「はい」
「そう」
玲奈先輩は少し黙った。
「そういうところ、私は好きよ」
「え?」
「掃除の話」
「あ、はい」
「……今のは忘れて」
クーデレだった。
玲奈先輩が俺を好きになったのは、一年生の頃、生徒会室前のゴミ箱が倒れていたのを俺が一人で片付けていたかららしい。
そんなことでいいのだろうか。
放課後。
本を返しに図書室へ行くと、図書委員の黒川詩織がカウンターにいた。
「鈴木君。今日は七分遅かったね」
「何が?」
「いつもは十五時五十二分に来るから」
「なんで覚えてるの?」
「好きだから」
「え?」
「鈴木君の行動を見るのが」
詩織は微笑んだ。
「先週火曜日、廊下に落ちてた私のプリント拾ってくれたよね」
「ああ」
「あれ、嬉しかった」
「それだけ?」
「うん」
「それで?」
「好きになった」
ヤンデレだった。
しかも机の下には、
《鈴木君が図書室に来た時刻》
と書かれたノートがあった。
俺は普通に学校生活を送っていただけだ。
掃除をして。
給食袋を届けて。
落ちていたプリントを拾った。
なのに。
ツンデレ幼馴染。
クーデレ生徒会長。
ヤンデレ図書委員。
俺の青春、どうなる?
☆☆
【kとの質疑応答】
『素晴らしい!』
『実に素晴らしい!』
Kは明らかに興奮していた。
『鈴木君! 一つ聞こう!』
「はい」
『なぜ悪役令嬢を書かなかった?』
鈴木は少し考えた。
「興味なかったんで」
『……何?』
「悪役令嬢とか、よく分かんないし」
「でも、せっかく小説書くなら」
鈴木は少し照れたように笑った。
「俺がモテてる話書きたかったんで」
Kが黙った。
『……なんという』
『なんという若さだ!』
『与えられた題材より、自分の願望を優先する!』
『ツンデレ幼馴染! クーデレ生徒会長! ヤンデレ図書委員! そしてその中心には自分!』
『素晴らしい! これこそ十代の創作だ!』
鈴木は少し嬉しそうだった。
「そんな良かったですか?」
『最高だ!』




