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第8話 降魔戦争終戦 ダンジョン時代のはじまり

こうして最後の戦いが終わりました。」


林は静かに話を続けた。


「最後のディープワンは、アフリカ戦線で討伐されたと人類は思いました。」


「これにより、二十年に及ぶ降魔戦争は終結したのです。」


二郎は小さく息を吐く。


「やっと終わったんですね……。」


「ええ。しかし、平和は戻っても、多くの問題が残されました。」


林の表情が少し曇る。


「ディープワンは多くの人間を捕らえ、苗床として利用しました。」


「その結果、人間とディープワンの混血――ハーフが世界各地で生まれたのです。」


殺された者。


家族に匿われながら生き延びた者。


国に保護され、教育を受けた者。


軍へ志願し、人類のために戦う道を選んだ者。


様々な人生があった。


「日本でも、一定の条件を満たせば日本国民として認められています。」


「国へ忠誠を誓い、人類社会へ協力すること。」


「それが権利を得る条件となっています。」


二郎は静かに頷いた。


「簡単なことじゃありませんね。」


「はい。」


「ですが、彼らもまた戦争の被害者なのです。」


林は湯飲みを置く。


「そして、終戦から間もない二〇二一年。」


「世界中の人々が、人生で最も奇妙な体験をしました。」


突然。


世界中のすべての人間の頭の中へ、直接声が響いた。


『イヤー、おめでとう! 人類の皆さん!』


『ワールドイベントクリアです!』


世界中が騒然となる。


老人も。


子供も。


兵士も。


誰もが同じ声を聞いていた。


『先ほど、オーストラリアで最後のディープワンが、少年兵スコット君のライフルによって討伐されました!』


『これにより我々神々は、人類へプレゼントを贈ります!』


『ダンジョンです!』


一瞬の静寂。


そして、陽気な声は続く。


『たまにスタンピードでモンスターがあふれてくるから、よろしくね!』


『それじゃ!』


『ニャル様こと、ニャルラトテップでした!』


adieuアデュー!』


その瞬間、声は消えた。


「……なんだ、それ。」


思わず二郎が呟く。


林は苦笑する。


「世界中の人が、まったく同じ反応だったそうです。」


終戦の喜びも束の間。


世界各地で空間が歪み始める。


日本でも各地に巨大なダンジョンが出現した。


東京・八王子ダンジョン。


池袋ダンジョン。


大阪ダンジョン。


広島ダンジョン。


福岡ダンジョン。


高知ダンジョン。


世界中でも同様に数多くのダンジョンが出現し、人類は再び未知との戦いを強いられることとなった。


「こうして世界は、戦後復興の時代からダンジョン時代へと移り変わったのです。」


林の言葉に、二郎は静かに窓の外を見る。


戦争は終わった。


だが、新たな時代はすでに始まっていた。

ダンジョンが出現したことで、世界は再び大混乱に陥りました。」


林は地図を畳み、新しい資料を机へ置いた。


「政府はまず、自衛隊――後の国防軍と警察によって、全国のダンジョンを封鎖しました。」


「無闇に民間人が立ち入れば、被害が拡大すると考えられたからです。」


最初に行われたのは調査だった。


ダンジョン内部へ部隊を送り込み、未知の生物や環境を調査する。


そこには、これまで見たこともないモンスターが数多く生息していた。


「幸いだったのは、銃器が通用したことです。」


林は続ける。


「多くのモンスターは、小銃や機関銃でも十分に討伐できました。」


そのため国防軍は、安全を確保しながらダンジョン内部の調査を進めていく。


そこで、人類は数多くの新たな資源を発見した。


魔石。


符呪術式。


ミスリルやオリハルコンといった特殊金属。


魔物から採取できる生体資源。


未知の植物。


未知の薬草。


未知の鉱物。


それらは従来の科学では説明できない性質を持っていた。


研究が進むにつれ、人類はさらに驚くことになる。


魔石はエネルギー源として利用できる。


特殊金属は従来の鋼鉄を遥かに超える性能を持つ。


符呪術式は兵器や産業を大きく発展させる可能性を秘めていた。


ダンジョンは危険なだけではない。


人類の未来を変える宝庫だったのである。


しかし、新たな問題も生まれた。


降魔戦争が終わり、国内では治安回復が進められていた。


戦時中に市民へ配布された銃器は、政府によって回収が始まる。


一方で、自衛隊は国防軍へ再編されたものの、二十年戦争による損耗はあまりにも大きかった。


各地の防衛。


国境警備。


都市の治安維持。


さらに新たなダンジョンへの対応。


すべてを担うには人員が圧倒的に不足していた。


警察も同様だった。


戦後の混乱で犯罪は増加し、ダンジョン探索まで手が回らない。


そこで、一人の男が政府へ提案を行う。


元民間防衛隊指揮官。


三村師団長


「戦争の影響で平和な社会へ馴染めない者たちがいます。」


「会社勤めが難しい者も少なくありません。」


「彼らの力を無駄にするのではなく、新しい職業を作るべきです。」


「探索者協会を設立し、ダンジョン攻略と資源回収を任せてはどうでしょう。」


政府はこの提案を採用した。


こうして探索者協会が設立される。


探索者協会初代会長は三村師団長になった。


探索者にはランク制度が導入された。


最初は白兵武器のみ。


剣。


槍。


斧。


ハンマー。


ボウガン。


これらの携帯が許可される。


銃器については、一定以上のランクと政府・探索者協会からの信用を得た者だけが許可を受けられる制度となった。


同時に厳格な法律も制定される。


探索者は武装を許可される。


しかし、その力を市民へ向けた場合。


あるいは街中で無関係な人間を殺傷した場合は、極めて重い刑罰が科せられる。


探索者は力を持つ代わりに、大きな責任を負う職業となった。


そして、探索者たちが持ち帰る資源は、人類社会を大きく変えていく。


魔石。


特殊金属。


符呪素材。


未知の植物。


魔物素材。


それらには莫大な価値があり、世界中の企業や国家が競って買い求めた。


ダンジョンには夢があった。


一攫千金。


新技術。


未知の発見。


世界は戦後復興の時代から、ダンジョン開拓の時代へと歩み始める。


人々は後にこの時代をこう呼ぶ。


「探索者時代の幕開け」。


そして――


「黄金時代」。


世界中で新たな資源を巡る競争が始まり、人類は再び未来へ向かって歩き始めた。


その様子を、どこか遠い異界から愉快そうに眺める存在がいた。


『いやぁ、楽しんでくれているようで何より。』


『ご褒美は気に入ってくれたかな?』


誰にも聞こえないその声は、くすりと笑う。


『さあ、人類。』


『次はどんな物語を見せてくれるんだい?』


外なる神――ニャルラトテップは、ただ愉快そうに微笑んでいた。

1ヶ月考えて作成したストックほとんどなくなりました。

次の話は少しお時間も頂きます。

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