第7話 日本解放と降魔戦争終結
しかし――。」
林の表情が曇る。
「世界は、日本だけに時間を与えてはくれませんでした。」
大阪決戦直後。
大西洋中央海域。
海底から巨大都市アトランティスが浮上する。
それと同時に、新たなディープワンの大侵攻が始まった。
北アメリカ 二千万。
南アメリカ 一千万。
アフリカ 一千万。
ヨーロッパ 一千万。
合計五千万を超える大軍勢だった。
本国防衛のため、アメリカ軍は日本から撤退。
弾薬や物資の支援も途絶える。
日本は再び孤立した。
その間、四国・九州に残ったディープワンは、捕らえた人間を酷使して巨大要塞を建設。
さらに新型部隊まで投入する。
生体装甲。
電気銃。
魔法兵器。
強化魔法
「以前のディープワンとは別物でした。」
林は静かに言う。
「数万規模とはいえ、その戦闘能力は極めて高く、自衛隊や防衛隊を何度も苦戦させました。」
弾薬不足。
補給不足。
敵戦力の強化。
日本は短期決戦を断念し、長期戦へ移行する。
四国解放まで二年。
九州解放までさらに三年。
大阪決戦から日本全土の解放まで、五年もの歳月が流れた。
九州解放をもって、日本本土は完全に奪還された。
しかし、戦争はまだ終わらない。
今度は日本が、世界を救う側となる。
最初に実施されたのは沖縄解放作戦。
基地へ立て籠もっていたアメリカ海兵隊、自衛隊、そして避難できなかった一般市民を救出し、沖縄全域を解放した。
続いて台湾支援作戦。
さらに東南アジア支援作戦。
日本は兵士だけでなく、工兵部隊、医療隊、派遣し、各国の復興を支援した。
一方、中国では内陸決戦に勝利した後、上海解放作戦、沿岸都市解放作戦が実施される。
最後に朝鮮半島支援作戦が行われ、日本、中国、アメリカを中心とした連合軍によって朝鮮半島も解放された。
これらの反攻を支えたのは、日本政府の外交努力だった。
日本はロシアから大量の銃器、戦車、砲弾、弾薬を購入し、各戦線へ投入する。
さらに購入したロシア製兵器の一部は、なお激戦が続くアメリカへも供与された。
北アメリカ。
ヨーロッパ。
南アメリカ。
アフリカ。
世界各地で戦いは続き、人類は二十年をかけて反攻を続けた。
そして終戦間際。
ルルイエとアトランティス、二つの海上都市に対し、各国連合は最終攻撃を決断する。
戦略核兵器による総攻撃。
海上都市は壊滅し、深い海の底へ沈んだと伝えられている。
こうして二十年に及ぶ降魔戦争は終結した。
終戦を記念し、新たな暦――零和暦が制定される。
林は静かに話を締めくくった。
「これが、この世界の日本と人類が歩んできた歴史です。」
二郎は長く息を吐く。
「……だから今の日本には、探索者協会や八王子軍警、そして符呪師が必要なんですね。」
林は静かに頷いた。
「はい。二度とあの戦争を繰り返さないためです。」
二郎は窓の外に広がる奥多摩の山々を見つめた。
この平和は、多くの命と二十年に及ぶ戦いの上に築かれたものなのだと、改めて胸に刻むのだった。




