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第4話 これからの行動

夕食を終えた二郎は、猪俣に案内されて浴場へ向かった。


「こちらがお風呂でございます。」


「ごゆっくりお入りください。」


「ありがとうございます。」


猪俣が襖を閉めると、浴場は静寂に包まれた。


湯気が立ち上る大きな檜風呂。


木の香りが心を落ち着かせる。


「でかい風呂だな……。」


会社員時代、一人暮らしのアパートでは狭いユニットバスしか使ったことがなかった。


こんな立派な風呂は初めてだった。


着物を脱ぎ、ゆっくり湯船へ足を入れる。


「熱っ……いや、ちょうどいいか。」


肩まで浸かると、全身の力が抜けていく。


「ふぅ……。」


思わずため息が漏れた。


『生き返るようじゃな。』


尻尾からダニッジの声が聞こえる。


「お前も風呂に入ってる気分なのか?」


『ワシはお前と感覚を共有しておるからな。』


『なかなか良い湯じゃ。』


「便利なんだか、不便なんだか。」


二郎は苦笑した。


しばらく湯に浸かったあと、真面目な表情になる。


「なあ、ダニッジ。」


『何じゃ?』


「これから、俺はどうすればいい?」


『ようやくその話をする気になったか。』


ダニッジの口調も真剣になる。


『まず、お前は力を付けねばならん。』


「力?」


『体力じゃ。』


『戦う力じゃ。』


『そして知識じゃ。』


「いきなり戦えって言われてもな。」


『安心せい。』


『八木家では、お前のための訓練を用意しておる。』


「訓練?」


『国防軍基礎体力訓練。』


『格闘戦闘訓練。』


『投擲訓練。』


「軍隊じゃないか。」


『降魔戦争以降、この世界ではそれが常識じゃ。』


『生き残るには、自分の身は自分で守らねばならん。』


二郎は静かに頷いた。


「確かに。」


『それと同時に、お前には符呪術も学んでもらう。』


「符呪術。」


『お前には才能がある。』


『いや、才能だけではない。』


『ヨグ=ソトースの血が、お前の魔力制御能力を高めておる。』


「でも魔法は使うなって言ってたよな?」


『当然じゃ。』


ダニッジはきっぱりと言う。


『魔法は禁忌。』


『見られた瞬間、お前は軍も探索者協会も敵に回す。』


『だから人前では符呪だけを使う。』


「分かった。」


『それが、お前が生き残る条件じゃ。』


二郎は湯船の水面を見つめる。


「つまり。」


「まず訓練。」


「次に符呪術。」


「そのあと八王子で探索者になる。」


『その通りじゃ。』


「そして生活できるようになったら、一人暮らしか。」


『うむ。』


『八王子を拠点に活動することになるじゃろう。』


二郎は少し笑った。


「前世でも八王子に住んでたのに、転生しても八王子か。」


『縁というものじゃ。』


「妙な縁だな。」


しばらく二人は黙って湯に浸かる。


湯気の向こうに、小さな窓から奥多摩の山並みが見えた。


静かな夜だった。


「……ダニッジ。」


『何じゃ?』


「今はまだ信じられないことばかりだけどさ。」


「せっかく助かった命だ。」


「今度はちゃんと生きてみるよ。」


ダニッジは静かに笑った。


『その意気じゃ、二郎。』


『お前の物語は、ここから始まるのだからな。』

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