第27話 魚人街Bゾーンゲート前
二郎とダニッジは店主に礼を言うと、人混みを抜けて魚人街Bゾーンへ向かった。
Aゾーンを抜けると、幅二十メートルほどの幹線道路が東西に延びている。
道路を境に景色は一変した。
向こう側には高さ三メートルほどの金網フェンスが延々と続き、中央には頑丈な鉄製ゲートが設けられていた。
ゲートの前には、ライフルやショットガン、槍で武装した魚人の警備員が十名近く立ち、厳重な警戒態勢を敷いている。
フェンスには赤い文字で大きく書かれた看板が掲げられていた。
『ここより先 魚人自治領Bゾーン』
『許可なき人間の立ち入りを禁ず』
『違反者は自治警備隊が身柄を拘束します』
「完全に国境みたいだな……。」
二郎が思わず呟く。
『魚人にも自治権が与えられておる。』
『勝手に踏み込めば外交問題じゃ。』
ダニッジが感心したように言った。
その時だった。
道路脇に停車していた巨大な軍用車両が二郎の目に入る。
「でかい……。」
思わず息を呑む。
八王子軍警が運用する重装甲兵員輸送車だった。
ベースとなったのは旧式のM3ハーフトラック。
しかし車体は現代技術と魔導工学によって全面的に再設計され、「15年式装甲兵員輸送車」として生まれ変わっている。
厚い複合装甲に覆われた車体はまるで陸上戦艦のような迫力を放ち、全長は十メートル近くにも及ぶ。
車内には高さ二・五メートル級の小型装甲機動歩兵を三機搭載できる構造となっていた。
運転席には運転手、通信士、ナビゲーターの三名。
屋根には二十ミリ機関砲の旋回銃座があり、三名の砲手が周囲を警戒している。
さらに五・五六ミリミニガンを備えた銃座に一名。
車体左右の一二・七ミリ重機関銃座には、それぞれ一名ずつ配置されていた。
後方には整備兵二名と衛生兵一名。
そして兵員室には三機の小型装甲機動歩兵が静かに待機している。
彼らは全身を覆う電動重装甲鎧を装着し、背部には高出力の魔力シリンダーを搭載していた。
左腕には装甲と一体化した大型複合盾。
盾の中央には、八王子軍警備第一中隊――ヘルハウンド隊の紋章が輝いている。
鑓水ダンジョンフィールドのゲート警備隊とは異なる、対大型魔物戦を主任務とする精鋭部隊であることが一目で分かった。
背中には巨大なバトルアックス。
右腕にはSマイン投射機。
さらに一二・七ミリ重機関銃を携行している。
両脚には高機動ローラーユニットを装備。
最高速度は時速七十五キロ。
連続戦闘時間は約一時間。
重量級装備とは思えない機動力を誇り、大型魔物への突撃戦を想定した八王子軍警自慢の重装兵だった。
『ほう……。』
『あれがヘルハウンド隊か。』
『普通の軍警とは装備がまるで違うのう。』
ダニッジが低く唸る。
その装甲車の運転席には、一人の女性が座っていた。




