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深淵の符呪師 ヨグソトースの落とし子  作者: ケロン藤野


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第23話 ジャイアントローチ討伐


廃墟でショゴススライムを討伐した二郎は、万能細胞片の入ったガラス瓶をリュックへしまった。


「まずは一匹。」


『順調な滑り出しじゃ。』


火かき棒を肩に担ぎ、廃墟を後にする。


割れたアスファルトの道路を歩いていくと、周囲は背丈ほどの雑草や低木が生い茂るエリアへ変わっていった。


ガサガサ……


突然、左手の茂みが大きく揺れる。


『止まれ。』


ダニッジの声に、二郎はその場で足を止めた。


「来るか。」


次の瞬間。


「キイイイイッ!」


甲高い威嚇音とともに、黒い影が茂みから飛び出してきた。


体長約五十センチ。


黒褐色の硬い外殻。


鋭い大顎。


六本の脚を忙しなく動かしながら二郎へ向かってくる。


「ジャイアントローチ!」


『別名、八王子肉食ゴキブリじゃ。』


『成体は五十センチから八十センチほどになる。』


『今回は小柄な個体じゃな。』


ジャイアントローチは羽を小刻みに震わせると、一気に高速移動で突撃してきた。


「速い!」


しかし、林との基礎訓練で鍛えられた二郎は慌てない。


半歩だけ右へ踏み込み、その突進を紙一重でかわす。


「そこだ!」


ブンッ!


勢いそのままに火かき棒を振り下ろした。


ベシャッ!!


鈍い音が響き、ジャイアントローチは地面へ叩きつけられる。


脚を数回痙攣させると、そのまま動かなくなった。


「一撃か。」


『勢いを利用した良い一撃じゃ。』


二郎は慎重に近づき、完全に絶命していることを確認する。


外殻へ突き刺さった火かき棒をゆっくり引き抜いた。


「さて、解体するか。」


投擲ナイフを取り出し、胸部を慎重に切り開く。


『魔石は胸の中央付近じゃ。』


しばらくすると、小指の先ほどの黒い魔石が姿を現した。


「これだな。」


火かき棒で魔石を砕く。


パリン。


魔石に宿っていた魔力が火かき棒へ吸い込まれ、捕縛符呪が淡く青白く輝いた。


二郎は火かき棒から魔力電池シリンダーNo.1へ魔力を移す。


腕輪型情報端末の表示が更新された。


魔力電池シリンダーNo.1


20% → 45%


「ショゴススライムより魔力が多いな。」


『ジャイアントローチは一匹で二十五%じゃ。』


『四匹倒せばシリンダー一本が満タンになる。』


「覚えやすいな。」


二郎は続けて素材を解体していく。


状態の良い外殻を一枚。


鋭い大顎を二本。


傷の少ない前脚を二本。


後脚を四本。


売却できる素材だけを丁寧に七十リットルのゴミ袋へ収納した。


「意外と取れる素材が多いな。」


『外殻は防具。』


『大顎は刃物の材料。』


『脚も加工すれば符呪の触媒になる。』


『初心者向け魔物とはいえ、捨てるところは少ないぞ。』


二郎は腕輪型情報端末を開き、今日の成果を記録した。


討伐数


・ショゴススライム 1匹


・ジャイアントローチ 1匹


戦利品


・万能細胞片×1


・ジャイアントローチ魔石×1


・外殻×1


・大顎×2


・前脚×2


・後脚×4


魔力電池シリンダー


・No.1 45%


・No.2 0%


・No.3 0%


「今日はまだ始まったばかりだ。」


『欲張らず、一匹ずつ確実に狩ることじゃ。』


火かき棒を握り直した二郎は、再び鑓水ダンジョンフィールドの奥へと歩き始めた。

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