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深淵の符呪師 ヨグソトースの落とし子  作者: ケロン藤野


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第22話 初めての鑓水ダンジョンフィールド


翌朝。


二郎はパンと牛乳で簡単な朝食を済ませると、探索装備を身に着けた。


リュックの中には飲料水、エネルギーバー、チョコレート、七十リットルのゴミ袋、ガラス瓶、トングなど探索に必要な道具が入っている。


腰には魔力捕縛の符呪を施した火かき棒。


ベルトポーチには魔力電池シリンダー三本。


「忘れ物はないな。」


『うむ。今日は初めての本格探索じゃ。』


「まずは生きて帰ることを目標にするよ。」


『それで十分じゃ。』


二郎は三輪電動自転車にまたがり、JR八王子駅近くの駐輪場へ向かった。


自転車を停めると、北口から駅ビルを抜け、南口バスターミナルへ向かう。


そこには探索者らしい装備の男女が並んでいた。


「鑓水ダンジョンフィールド行きか。」


朝は十分おきに運行しているため、それほど待つことなくバスが到着する。


運良く窓側の席へ座れた二郎は、パーカーのフードを深くかぶり、外の景色を眺めた。


車内では立っていた探索者が話をしている。


「あれ、山羊獣人じゃないか?」


「珍しいな。」


「探索者だったのか。」


二郎は聞こえないふりをして、腕輪型情報端末を起動した。


検索するのは次に買う武器だ。


「片手斧……。」


「小型メイス。」


「フレイル、分銅鎖も悪くないな。」


ダニッジが苦笑する。


『今は片手斧が一番じゃ。』


『フレイルは慣れぬと自分に当てる。』


「それもそうだな。」


武器の情報を眺めているうちに、バスは目的地へ到着した。


『鑓水ダンジョンフィールド前です。』


探索者たちが次々と降りていく。


目の前には探索者協会の買取センター。


さらにその奥には、コンクリートの城壁とガンタワーが一体となった巨大なゲートがそびえ立っていた。


「本当に要塞だな。」


『八王子最大級のダンジョンじゃからの。』


ゲート前では八王子軍警の警備兵が警戒にあたっている。


探索者たちは自動改札へ協会カードや腕輪型情報端末をかざし、入場していく。


二郎も腕輪型情報端末を改札へかざした。


『ピッ』


「八木二郎様、入場を確認しました。」


ゲートを抜けると、大きな案内看板が立っていた。


『ようこそ 八王子ダンジョンフィールドへ』


初めて来た探索者らしく、何人かが記念写真を撮っている。


二郎は周囲を見回した。


広大な森林。


荒れた道路。


朽ちた駐車場。


遠くには大型店舗の廃墟も見える。


「ここ全部がダンジョンなのか。」


『建物の中はEランク講習を受けねば入れぬ。』


『今のお主はフィールドだけじゃ。』


「十分広いけどな。」


火かき棒を取り出し、慎重に歩き始める。


十五分ほど進むと、崩れた住宅や商店が並ぶ廃墟地帯へたどり着いた。


「まずはこの建物から調べよう。」


『足音を立てるでないぞ。』


二郎はゆっくり廃屋へ入る。


部屋の隅で黒いゼリー状の塊が蠢いた。


『ショゴススライムじゃ。』


二郎は火かき棒を構える。


「よし。」


一撃。


ベチャッ!


二撃。


グチャッ!


三撃目で中心の魔核が露出した。


火かき棒で魔核を砕く。


パキン。


ショゴススライムはズブズブと音を立てて崩れ落ちた。


残された万能細胞片をトングでつまみ、持参したガラス瓶へ入れる。


「これが万能細胞片か。」


『鮮度が命じゃ。』


『すぐに瓶へ入れるのが正解じゃな。』


火かき棒に蓄えられた魔力を、魔力電池シリンダーNo.1へ移す。


青白い光がゆっくりとシリンダーへ吸い込まれていく。


腕輪型情報端末の表示が切り替わった。


魔力電池シリンダーNo.1


充填率 20%


「一匹で二〇%か。」


『ショゴススライムは五匹でシリンダー一本が満タンになる計算じゃ。』


「なるほど。」


二郎は腕輪型端末へ戦利品を記録する。


討伐数


・ショゴススライム 1匹


戦利品


・万能細胞片×1


魔力電池シリンダー


・No.1 20%


・No.2 0%


・No.3 0%


「まずは順調なスタートだな。」


『焦る必要はない。』


『素材も魔力も少しずつ集めていけばよい。』


二郎は火かき棒を握り直し、次の獲物を探して廃墟の奥へ歩き始めた。

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