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深淵の符呪師 ヨグソトースの落とし子  作者: ケロン藤野


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第19話 基礎研修の講義


受講生たちは別室へ案内された。


教室の前には、


「探索者協会 G級基礎講習」


と書かれたプレートが掲げられている。


教壇へ立ったのは四十代ほどの男性教官だった。


「皆さん、ビデオ研修お疲れ様でした。」


「ここからは実際に探索者用腕輪型情報端末を操作しながら、基本機能を学んでもらいます。」


二郎は左腕の端末へ目を向けた。


海咲も真剣な表情で腕輪を見つめている。


教官はスクリーンへ端末の画面を映し出した。


「この端末は探索者の命綱です。」


「ダンジョンへ入る際は必ず携帯してください。」


受講生全員が画面を操作し始める。



「まずは救難信号です。」


教官が画面を操作する。


「この赤いアイコンを三秒長押ししてください。」


画面へ、


《緊急救難信号》


と表示される。


「救難信号を送ると、探索者協会と八王子軍警へ現在位置が送信されます。」


「ただし、救助が必ず間に合うとは限りません。」


「最後まで自力で生き残る努力をしてください。」


二郎は画面を見ながら頷いた。



続いて教官は説明を続ける。


「次はアプリです。」


画面にはいくつものアイコンが並んでいる。


探索者協会情報


「ダンジョンの閉鎖情報。」


「スタンピード警報。」


「イベント。」


「講習案内。」


「各種お知らせが届きます。」


受講生は一つずつ起動していく。



次は、


ゲート入室アプリ


「ダンジョンへ入る際は、このアプリで入場登録を行います。」


「誰が、いつ、どこのダンジョンへ入ったかを協会が管理します。」


「万が一帰還しなかった場合、この記録を基に救助隊が出動します。」


二郎は画面を操作しながら入力を覚えていく。



さらに、


買取アプリ


教官が説明する。


「討伐した魔物素材や採取品は、このアプリから買取予約ができます。」


「混雑時は予約者が優先されます。」


「査定完了後は登録口座へ自動入金されます。」


「現金受け取りも可能です。」


受講生たちはメモを取りながら入力していく。



他にも、


・地図アプリ


・探索者証表示


・パーティ登録


・短距離通信


・魔力電池残量表示


などの機能を一つずつ確認していった。



教官は真剣な表情になる。


「ここからは重要事項です。」


教室の空気が少し張り詰める。


「ダンジョンフィールドでは自己責任が原則です。」


「警察も軍警も常時巡回はできません。」


「法律が存在しないわけではありません。」


「しかし、現場で皆さんを守ってくれる者はいません。」


スクリーンには、


『自己防衛が基本』


と大きく表示された。


「そのため、この端末には自動撮影機能があります。」


教官が端末を掲げる。


「探索中は常時映像が記録されています。」


「事件・事故・PK発生時には重要な証拠となります。」


受講生たちがざわつく。


教官はさらに続けた。


「資金に余裕ができたら、撮影ドローンの導入を強く推奨します。」


スクリーンには小型飛行ドローンの映像が映る。


「頭上から常時撮影を行い、映像はクラウドへ保存されます。」


「PKは証拠を嫌います。」


「撮影されているだけで狙われにくくなる場合もあります。」


二郎は小さく頷いた。


(撮影されているだけで抑止力になるのか。)



教官は最後に言った。


「PKに遭遇した場合。」


「戦えるなら戦う。」


「しかし基本は――」


教官は受講生全員を見回す。


「逃げてください。」


「命より大切な素材はありません。」


「命より大切な魔石もありません。」


「生きて帰れば、また稼げます。」


教室は静まり返る。


「そしてG級、F級、E級探索者の皆さん。」


「必ずパーティを組んで行動してください。」


「初心者の単独行動は死亡率が非常に高くなります。」


海咲は小さく頷く。


二郎も真剣な表情で話を聞いていた。


ダニッジが静かに呟く。


『良い教官じゃ。』


『生き残る方法を教えておる。』


教官は最後に敬礼した。


「以上でG級基礎講習を終了します。」


「皆さんの無事な帰還を願っています。」


講義終了後に教室には拍手が響いた。

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