第14話 遠距離射撃、投擲武器訓練
近接戦闘訓練を終えた二郎は、新たな訓練へ移ることになった。
翌朝。
屋敷裏の訓練場。
林は射撃場の机へ様々な武器を並べていた。
長弓。
クロスボウ。
投擲槍。
スリングショット。
投げナイフ。
ボーラ。
どれも遠距離から敵を攻撃するための武器だった。
二郎は辺りを見回す。
「あれ?」
「銃はないんですか?」
林は静かに頷く。
「あります。」
「ですが、今の二郎様には使用できません。」
林は黒板へ文字を書き始めた。
探索者協会 銃器所持基準
・Dランク探索者……二連散弾銃まで所持許可
・Cランク探索者……拳銃の所持許可
・Bランク探索者以上……ライフルなど軍用銃器の使用許可
「もちろん八木家には、私が国防軍時代に使用していた装備や、戦時中に保管された銃器があります。」
「ですが、それを今教えても意味がありません。」
「探索者として活動する以上、探索者協会の規則に従うことが第一です。」
二郎は納得したように頷く。
「持てない武器を覚えても意味がありませんね。」
「その通りです。」
ダニッジも笑った。
『焦るな。』
『いずれ嫌でも銃を撃つ日が来る。』
『今は基礎を固める時じゃ。』
「嫌でもって……。」
『戦争というものは、そういうものだ。』
その一言に、二郎は小さく息を呑んだ。
林が手を叩く。
「では始めます。」
「まずは長弓。」
二郎は弓を引く。
ギリギリと弦を引き、矢を放つ。
ヒュッ――
矢は飛んだものの、大きく的を外れた。
「難しい……。」
「体全体で引く武器です。」
「二郎様の体格では少々不利でしょう。」
次は投擲槍。
勢いよく投げる。
槍は飛ぶが、飛距離が思うように伸びない。
「うーん。」
林は冷静に評価する。
「威力はあります。」
「しかし、継戦能力が低い。」
「一本失えば武器も減ります。」
続いてボーラ。
二つの重りが回転しながら飛んでいく。
木人の脚へ絡み付いた。
「当たれば強いですね。」
「ですが命中率に難があります。」
「練習が必要です。」
二郎は額の汗を拭った。
「どれも難しいな。」
「まだ始まったばかりです。」
林はそう言って、小型クロスボウを差し出した。
「こちらを。」
二郎は構える。
狙いを定める。
引き金を引く。
カシュッ!
矢が一直線に飛び、的の中心近くへ突き刺さった。
「あれ?」
「もう一射。」
カシュッ。
再び命中。
「さらに。」
三射目。
ほぼ同じ場所へ刺さる。
林は小さく頷いた。
「安定しています。」
「筋がいい。」
二郎は少し照れ臭そうに笑う。
「これは扱いやすいですね。」
続いて投げナイフ。
林が構えを教える。
「肘ではなく肩で投げます。」
「手首を使いすぎない。」
二郎は深呼吸し、一歩踏み込む。
シュッ。
銀色の刃が回転しながら飛び、木製の的へ深々と突き刺さる。
「おぉ!」
「初めてにしては上出来です。」
最後はスリングショット。
革へ鉄球を乗せる。
ゴムをゆっくり引く。
狙いを合わせる。
パチンッ!
鉄球は勢いよく飛び出し、的の中心を叩いた。
ダニッジが愉快そうに笑う。
『がっはっはっ!』
『面白い奴じゃ。』
『大きな武器は苦手なくせに、小さい武器になると急に当てる。』
「俺も不思議だ。」
それから三か月。
林の指導のもと、毎日同じ訓練が続いた。
クロスボウ。
投げナイフ。
スリングショット。
距離を変え。
風向きを読み。
移動しながら撃ち。
走りながら投げる。
時には山へ入り、小動物を想定した移動目標への射撃訓練も行われた。
三か月後。
林は一枚の評価表を二郎へ渡した。
「訓練結果です。」
二郎は紙を見る。
長弓 C
投擲槍 C
ボーラ B
クロスボウ A
投げナイフ A
スリングショット A
「適性がはっきり出ました。」
林は三つの武器を机へ並べる。
小型クロスボウ。
投げナイフ。
スリングショット。
「この三種類には非常に高い適性があります。」
「軽量で携帯しやすく、片手斧との相性も良好です。」
「現時点では、この組み合わせが二郎様に最も適した戦闘スタイルでしょう。」
二郎はクロスボウを手に取り、嬉しそうに眺めた。
「確かに持ちやすい。」
林は続ける。
「探索者は遠距離攻撃ができるだけで生存率が大きく向上します。」
「まず投げナイフで牽制。」
「中距離はクロスボウ。」
「静かに狩る場合はスリングショット。」
「そして接近されたら片手斧。」
「これが二郎様の基本戦術になります。」
ダニッジも満足そうに頷く。
『武器は数ではない。』
『自分に合う武器を極める者が最後まで生き残る。』
二郎は三つの武器を見比べながら笑った。
「なんだか忍者みたいな装備になってきたな。」
『派手な武器ほど目立つ。』
『目立つ者ほど先に死ぬ。』
「なるほど……。」
林も珍しく小さく笑った。
「地味ですが、それだけに実用的です。」
「生き残る探索者とは、そういうものですよ。」




