14 愉悦、哄笑、快楽、悪意
「貴女が殺すのよ、弱い女の子」
背の高い男が耳元を震わせる。恐怖で背筋がぞくり、とした。残酷に甘い声色。真実が心に熔けて身体に毒を染み込ませる。
ぐちゃり、とフェルの背中から太い棒が抜けた。先端部に向かって尖っていく、槍だ。
「あ、かね……」
「フェル……?」
倒れ混むフェルを抱き抱えながら茜も後ろへよろけた。
「う、そ……よね? フェル、フェル起きて……?」
腹に空いた大穴から血が滴る。
「あは、はははははははははははははははは!!!!!!」
上を見上げ高らかに笑い出す男。恐る恐る茜はそれを見上げる。
「ねぇ、愚かなリトルガール。その顔すごく素敵よ」
笑いで声を震わせながら茜の顔を除き混む。
「ひっ…………」
思わず口から零れたそれすらも心地良いようで、目元を和らげながら茜の肌に手を伸ばす。
「……ぅ、あ」
抱き締めているフェルにすがり付く。
「可愛い顔。可哀想に震えているのねぇ? 嗚呼、骨の髄まで堕として罪悪感で壊してあげたいわ」
「自分でやったくせにどの口で可哀想なんて言うのよ」
隣の女の子が言った言葉なんて茜には聞こえていなかった。狂っている。歪んでいる。理解できない。この男が、理解できないこの男が恐い。
恐いこわいこわい恐い恐い恐いこわい恐い恐い恐い恐い恐いこわいこわいこわい恐い恐い恐いこわい恐いこわい恐いこわいこわいこわい恐い恐い恐いこわいこわいこわい恐いこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい恐いこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい恐い恐いこわいこわいこわいこわいこわいこわい恐いこわいこわいこわい恐いこわいこわいこわい恐いこわいこわいこわいこわいこわいこわい恐いこわいこわいこわいこわいこわいこわい恐いこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい恐いこわいこわいこわい恐い恐いこわいこわいこわい恐いこわいこわいこわい恐いこわ──!!
「がはっ!?」
「あは、もっと見せて?」
横腹を抉るように蹴りつけられ、地面に叩きつけられる。
また、私は何も救えないで、終わるの……? 離れたところに倒れるフェルが、霞んで見えなくなる……。
「なぁにぃ? もう、終わり?」
「ッ!!!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?!?」
手のひらに深くナイフが刺さる。落ちかけた意識が急速に現実に引き戻される。
「うぁッ!」
突き刺したナイフを引き抜き手で弄ぶ男の姿が目に入った。
「もしかしてもう死のうとしたぁ? そんなの許さないわよ? だって……地獄はこれからじゃない!」
嗤いを堪えることすらやめた男に、自分は惨めなのだと、思いしる。
「ど、して……そん、なにたのし、そ、なの……?」
涙と共に言葉が口から零れる。
「どうして!? 楽しいからに決まってるじゃなぁい! そうやって惨めになる奴を見るのがだぁい好きなのよアタシは!!」
「く、るってる……」
「ええ、そうね。アタシは狂ってる。……だからこんなことも出来ちゃうのよ?」
髪を無造作に掴まれて「みなさい」と言われる。目を開けた先には金髪の女の子と……磔にされたフェルが居た。
「フェルッ!!」
「やりなさい、レイム」
「何をッ!」
レイム、と呼ばれた子は手にしていた薄い刃をフェルの太股に向けて無造作に投げつけた。
「やめ、やめてッ!」
「いい悲鳴ねぇ……貴女素敵よ?」
髪を放され、地面に打ち付けられた。そして蹴られた脇腹を抉られる。
男は端整な顔を近づかせ上品に嗤う。
「アタシは李餓。このまま貴女の心をボキボキにぶっ壊してあげるわ」




