9:再会は意外な場所で
久しぶりの投稿です! これからもよろしくお願いいたします!!
「すまない、荷物をそんなに持たせてしまって……」
「いや、別に気にしなくて良いぞ」
中央都市神楽坂のとある通りに、自分よりも頭一つ分小さい女性に謝られている青年がいた。
実際にはまだ少年と呼ぶ方が適切な年齢ではあると思うのだが、その見た目からして休暇中の警邏隊員だと思われてもしょうがないはずだ。制服を着ていなければ。
真っ黒な髪を短く刈った16歳の平均身長を軽く越す青年は華ヶ舞学院の生徒である。隣にいる女性も、背を伸ばしながら似たデザインの制服を身につけていた。
二人は両手一杯の荷物を持っていて、道行く人の視線に晒されている。恐らく女性が謝っていたのはこの両手一杯の荷物のことだろう。
カートにでも入れて運ぶ方が良いに違いない。
「ところで吉城。これだけの荷物、置く場所はあるのか?」
「大丈夫じゃないか? 二人用の部屋だったし、それにいざとなればジュレのセカイに置いておけばいいだろう」
不安そうに聞いた女性――ジュレに軽く返す吉城という名の青年は、朔夜と茜の幼馴染みのあの少年だった。
「む、確かに言われてみればそうだな」
腰まで届く長い髪を揺らしながら、ぎゅうっと袋を抱き抱える様は子供らしく、とても可愛らしい。そんなジュレに見とれる者は多いだろう。身長が少し高いということを除けば、ジュレは男の理想といって間違いないだからだ。
ガリガリというわけでもポッチャリというわけでもなく、日頃の鍛練によって身に付いた程よい筋肉。服の上からでも目線が吸い寄せられるような形の良い胸は、その存在を強く主張する。
実際、ジュレを見かけた男性の多くは視線をその一点へと集めていた。
「ん?」
「どうかしたのか?」
「いや、一つ先の曲がり角から高速で霊力が近づいて来るんだが……」
桃色の髪を揺らしたジュレは怪訝な顔をして歩く速さを緩めた。
そしてその言葉を裏付けるかのように、曲がり角から足音が迫ってくる。ぶつからないよう、数歩手前で止まっていた二人の前に現れたのは。
「朔夜?」
「吉城?」
いなくなった聖霊を探している朔夜だった。
「おいおい、何で朔夜がここにいるんだ? 行方不明のはずじゃ……? というか汗すごいな」
「行方不明? 誰が? って俺か」
「それ以外に誰がいるんだよ」
知り合いを見つけたということで安堵したのか、体が限界だったのか、朔夜は肩で息をしながらその場に崩れ落ちた。
そんな朔夜の前にジュレが白いレースのハンカチを差し出す。一目見て「これ使って良いのか?」と思うような、きめ細かい刺繍がされた高価なハンカチだった。両手が荷物で塞がっているというのにいったいどこから出したのか。女性にはまだまだ謎が多い。
差し出されたハンカチを使わせてもらい汗を拭う。使いながら軟らかいこのハンカチはやはり汗を拭くのに向いていないと朔夜は考える。すぐに湿ってしまうためだ。
息がある程度整ってきたところで朔夜は先程からの疑問を吉城に投げかける。
「吉城はここでなにしてるのさ?」
ここ、とはつまりこの通りのことだ。明るい色の店がいくつも連なり、小物や雑貨など多くのものが置いてある。客として来店する生徒たちも多く、なかなかに人気の通りなのだろう。
そして一番重要な朔夜が気になった点は、生徒たちのほとんどが女子生徒というところである。
つまりこの通りは、女性向けの雑貨を売っている店が集まった場所なのだ。
「見ての通りだが?」
見ての通り。簡潔なその言葉に吉城を見ると、気になるところがひとつ。吉城が持っている袋から出るフワッとした何かの耳である。恐らく……ぬいぐるみだ。
硬派な吉城のイメージからは考えられない。吉城たちはこのぬいぐるみをもちろんこの通りにある店で買ったのだろう。吉城の言う「見ての通り」というのはきっとこの事だ。
ならばこれを欲しがったのは誰か。
朔夜は無言でジュレを見上げる。
「ち、違うんだっ! これは、その、だな……」
視線の意味を正しく理解したジュレは瞬く間に顔を赤く染め上げていく。あー、とかうー、とか唸りながら最終的にはぬいぐるみの入った袋をぎゅうっと抱き締め、顔を埋めてしまう。
そのお陰で袋から飛び出るぬいぐるみの耳がピコピコと左右に動いている。愛らしくてなによりだ。
「色々と聞きたいことがあるんだけど良い?」
「ああ、俺も聞きたいことがある。少し先に美味しいと評判のカフェがあるからそこに行くか」
立ち上がって訪ねる朔夜に吉城は休息を勧める。呼吸を整えたとはいえ、まだ冷静さを欠いているようだ。
「いや俺は急いでるから」
「闇雲に探したってすぐには見つからないだろ。なら休んだ方が良い」
反論の仕様がない正論である。朔夜も渋々といった体で大人しく従った。




