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バビロンの謎―七つの星門と失われた王国  作者: 虫松


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第1話 皇帝の密命

皇帝は報告書を何度も読み返した。


広間には、蝋燭の炎だけが揺れている。


やがて彼は、誰にも聞かれぬよう低く命じた。


「アントニウスを呼べ」


数日後。


ガイウス・アントニウスは、帝宮の地下へ通された。


元百人隊長。


挿絵(By みてみん)



現在は皇帝直属の密偵。


部屋には皇帝一人しかいなかった。


卓上には、第九軍団の鷲旗と、一枚の黒い粘土板が置かれている。


粘土板には、見たことのない文字が刻まれていた。


アントニウスは一目見た瞬間、表情を変えた。


それは彼が十二年前、東方遠征で見たものと同じ文字だった。


砂嵐の中。


全滅した部隊。


遠くに現れた巨大な青い門。


誰にも信じてもらえなかった記憶。


皇帝は静かに問う。


「知っているのか」


アントニウスは答えなかった。


皇帝は鷲旗へ視線を落とす。


「五千人が消えた」


「敵の姿も、死体もない」


「残されたのは、この文字と、一つの名だけだ」


皇帝は黒い粘土板を押し出した。


「バビロン」


その名を聞いた瞬間、アントニウスの脳裏に、青い門が蘇った。


門の向こうから、自分を見つめていた無数の目。


そして、誰かが囁いた声。


お前は、またここへ戻る。


皇帝は立ち上がった。


「失踪した軍団を捜せ」


「この国の正体を突き止めろ」


「復活したものが都市なのか、軍隊なのか、それとも神なのか」


「すべてを確かめて戻れ」


アントニウスは粘土板を手に取る。


冷たいはずの石が、わずかに脈打っていた。


まるで生きているように。


皇帝は、最後にこう告げた。


「敵が国ならば、軍を送れる」


「敵が人ならば、暗殺者を送れる」


「だが――」


蝋燭の炎が、一斉に消えた。


暗闇の中で、皇帝の声だけが響く。


「敵が神話ならば、誰を送ればよい?」


アントニウスは腰の剣へ手を置いた。


「神話を信じない男を」


その瞬間。


黒い粘土板の文字が、青く光った。


そして誰も触れていないのに、表面へ新たな一文が浮かび上がる。


「第九の軍団は、まだ生きている」


続いて、もう一文。


「バビロンで待つ」


アントニウスは黙って粘土板を見つめた。


十二年前に置き去りにした悪夢が、再び彼を呼んでいた。


こうして、ローマ帝国の歴史にも記録されない密命が始まった。


失われた軍団。


そして、世界の始まりに隠された秘密。


すべての謎は、砂漠の向こうにある

復活した古代都市バビロンに、

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